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第29話 執事ロベルト

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メーランド伯爵が大きな窓の下を覗くとミハエルと目が合ってしまう!

『おい!!ロベルト!!あ、あのガキ共は何であんなに強いんだ?!
アイツ等ここに来るつもりだぞ!!おい!ロベルト!な、何とかしろ!!』

ロベルトは内心盛大なため息を付く。

はあ・・・本当に何も出来ない豚ですね・・。
しかし子供達を相手にするのは気が引けますが・・・仕方ないですね。

『はい。かしこまりました。行って参ります。』

ロベルトは渋々一礼して部屋を出て行った。


『皆んな!!ゴーレム君達の後ろに隠れて!手練れが来るよ!!』

すると屋敷の大きな扉が開き初老の紳士が執事服でゆっくりと近づいて来る。その足取りからは男の実力がひしひしと伝わってくるのであった。
そして腰には身体に似合わない大剣を携えていた。

ロベルト
Lv 723
【称号】戦士

攻撃力 146738
防御力 73167
素早さ 86935
魔力  7547
魔法力 15835

【加護】〈闘神の加護〉

【スキル】〈剣の極意〉
     〈斬撃・大〉
     〈攻撃力・大〉
     
・・・凄いね。こんな所で燻っているような人じゃないね。

ロベルトはミハエルに一礼する。

『お初にお目に掛かります。私はロベルトと申します。見ての通り、この屋敷の執事をしております。
不本意ながら主の命によりあなた達を無力化しなければなりません。
子供に剣を振るのは心が痛みます。出来れば降伏してくれませんか?』

やっぱり・・何か訳ありみたいだね・・・それなら・・・

『僕はミハエルと言います。ロベルトさん。僕達は降伏するつもりはありません。こんな理不尽を許す訳にはいなかいんです。
貴方は他の悪党とは違うようです。僕も貴方のような人を傷つけるのは心が痛みます。出来れば黙って見逃してくれませんか?』

『ふっ・・・』

ロベルトは俯き納得したように頷き腰の剣をゆっくりと抜いた。
大きな刀身は周りの景色が映る程に磨かれ剣の先端まで闘気を纏っていた。

『申し訳ありません。分かっていて聞いてしまいました。しかし君も他の子供達とは違うようですね。』


『ふふふっ・・・ロベルトさん。貴方と言う人は・・・』

ミハエルは静かに笑い4つ目の指輪を外すとアイテムボックスから巨大な剣を抜き放つ!

しゅらん・・・

その刀身はロベルトの剣の倍近くあり青白い光を放ちその存在感を遺憾なく発揮していた。

ミハエルが自分用に作り上げたお気に入りの一振りである。

【魔剛剣】
〈攻撃力〉 -     (魔力に比例)
〈効果〉 魔力吸収・極大
    

ロベルトは目を見開き、剣を構えたまま無意識に身体が震えるのを止められなかった。

『き、君は・・・そ、その歳で・・これ程の力を・・・一体どうやって・・・』

ロベルトは身体の震えを抑えようと努力したが既に身体が目の前の子供に恐怖している事に気付く。ミハエルの強さはロベルトの長年の努力で培った誇りでさえも吹き飛ばす程であった。

『駄目ぇぇぇぇ!!!!』

突然ゴーレム君の股の間から女の子が飛び出した!!

『あっ!駄目!危ない!!!!』

サーシャが手を伸ばすが、その手をするりと抜けて女の子がミハエルの前に両手を広げて立ちはだかった!

『違うの!違うの!ロベルトおじちゃんは違うの!!駄目なの!!だべなのぉぉぉっ!!!あーーーーん!!!』


女の子の必死の訴えにロベルトは肩を落とし剣を収める。

『こんな子供に守られてしまったか・・・』

ロベルトは女の子の側に行き頭を撫でる。
『ミーナ、ありがとう。こんな私を守ってくれて。』

ミーナは振り向きロベルトにしがみつく。

『おじちゃんは違うもん!!悪くないもん!!』

やっぱり・・ロベルトさんは僕が思っていた通りの人だったね・・・

ミハエルも頬を緩ませ剣を収めると他の子供達もロベルトの周りに集まって来た。

『事情は聞いたわ。あの人、夜中に子供達の為に毎日暖かいご飯やお菓子を持って来てくれたそうよ。
あの冷たい牢屋の中で子供達の唯一の心の支えだったのよ。
毎日子供達に”すまない”と言っていたそうよ。あの人も心を痛めていた1人だったのね。』

サーシャは涙を拭きながら子供達を見ていた。

『うん。分かっているよ。あの人は最初から悪意が無かったんだ。』

『えっ?じゃあなんで剣を・・・』

『ふふっ。ただ戦ってみたかったんだよ。強い人は強い人と戦ってみたくなるものなんだよ。』

『へー・・そうなんだ・・・』
サーシャが不思議そうな顔をする。

ロベルトはゆっくり立ち上がると額に手を当て天を仰ぐ!

『ふっ・・はーっはっはっはっは!!そこまで見抜かれていたとは!ふっ。完敗です。
私は君のような者が現れるのを待っていたのかもしれない。
もしかしたら君は〈神の使人〉の悪事を嘆いた神の化身なのかも知れないな・・・』

ロベルトは憑き物が落ちたように微笑みながらミハエルを見るのだった。


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