上 下
29 / 198

第29話 執事ロベルト

しおりを挟む
メーランド伯爵が大きな窓の下を覗くとミハエルと目が合ってしまう!

『おい!!ロベルト!!あ、あのガキ共は何であんなに強いんだ?!
アイツ等ここに来るつもりだぞ!!おい!ロベルト!な、何とかしろ!!』

ロベルトは内心盛大なため息を付く。

はあ・・・本当に何も出来ない豚ですね・・。
しかし子供達を相手にするのは気が引けますが・・・仕方ないですね。

『はい。かしこまりました。行って参ります。』

ロベルトは渋々一礼して部屋を出て行った。


『皆んな!!ゴーレム君達の後ろに隠れて!手練れが来るよ!!』

すると屋敷の大きな扉が開き初老の紳士が執事服でゆっくりと近づいて来る。その足取りからは男の実力がひしひしと伝わってくるのであった。
そして腰には身体に似合わない大剣を携えていた。

ロベルト
Lv 723
【称号】戦士

攻撃力 146738
防御力 73167
素早さ 86935
魔力  7547
魔法力 15835

【加護】〈闘神の加護〉

【スキル】〈剣の極意〉
     〈斬撃・大〉
     〈攻撃力・大〉
     
・・・凄いね。こんな所で燻っているような人じゃないね。

ロベルトはミハエルに一礼する。

『お初にお目に掛かります。私はロベルトと申します。見ての通り、この屋敷の執事をしております。
不本意ながら主の命によりあなた達を無力化しなければなりません。
子供に剣を振るのは心が痛みます。出来れば降伏してくれませんか?』

やっぱり・・何か訳ありみたいだね・・・それなら・・・

『僕はミハエルと言います。ロベルトさん。僕達は降伏するつもりはありません。こんな理不尽を許す訳にはいなかいんです。
貴方は他の悪党とは違うようです。僕も貴方のような人を傷つけるのは心が痛みます。出来れば黙って見逃してくれませんか?』

『ふっ・・・』

ロベルトは俯き納得したように頷き腰の剣をゆっくりと抜いた。
大きな刀身は周りの景色が映る程に磨かれ剣の先端まで闘気を纏っていた。

『申し訳ありません。分かっていて聞いてしまいました。しかし君も他の子供達とは違うようですね。』


『ふふふっ・・・ロベルトさん。貴方と言う人は・・・』

ミハエルは静かに笑い4つ目の指輪を外すとアイテムボックスから巨大な剣を抜き放つ!

しゅらん・・・

その刀身はロベルトの剣の倍近くあり青白い光を放ちその存在感を遺憾なく発揮していた。

ミハエルが自分用に作り上げたお気に入りの一振りである。

【魔剛剣】
〈攻撃力〉 -     (魔力に比例)
〈効果〉 魔力吸収・極大
    

ロベルトは目を見開き、剣を構えたまま無意識に身体が震えるのを止められなかった。

『き、君は・・・そ、その歳で・・これ程の力を・・・一体どうやって・・・』

ロベルトは身体の震えを抑えようと努力したが既に身体が目の前の子供に恐怖している事に気付く。ミハエルの強さはロベルトの長年の努力で培った誇りでさえも吹き飛ばす程であった。

『駄目ぇぇぇぇ!!!!』

突然ゴーレム君の股の間から女の子が飛び出した!!

『あっ!駄目!危ない!!!!』

サーシャが手を伸ばすが、その手をするりと抜けて女の子がミハエルの前に両手を広げて立ちはだかった!

『違うの!違うの!ロベルトおじちゃんは違うの!!駄目なの!!だべなのぉぉぉっ!!!あーーーーん!!!』


女の子の必死の訴えにロベルトは肩を落とし剣を収める。

『こんな子供に守られてしまったか・・・』

ロベルトは女の子の側に行き頭を撫でる。
『ミーナ、ありがとう。こんな私を守ってくれて。』

ミーナは振り向きロベルトにしがみつく。

『おじちゃんは違うもん!!悪くないもん!!』

やっぱり・・ロベルトさんは僕が思っていた通りの人だったね・・・

ミハエルも頬を緩ませ剣を収めると他の子供達もロベルトの周りに集まって来た。

『事情は聞いたわ。あの人、夜中に子供達の為に毎日暖かいご飯やお菓子を持って来てくれたそうよ。
あの冷たい牢屋の中で子供達の唯一の心の支えだったのよ。
毎日子供達に”すまない”と言っていたそうよ。あの人も心を痛めていた1人だったのね。』

サーシャは涙を拭きながら子供達を見ていた。

『うん。分かっているよ。あの人は最初から悪意が無かったんだ。』

『えっ?じゃあなんで剣を・・・』

『ふふっ。ただ戦ってみたかったんだよ。強い人は強い人と戦ってみたくなるものなんだよ。』

『へー・・そうなんだ・・・』
サーシャが不思議そうな顔をする。

ロベルトはゆっくり立ち上がると額に手を当て天を仰ぐ!

『ふっ・・はーっはっはっはっは!!そこまで見抜かれていたとは!ふっ。完敗です。
私は君のような者が現れるのを待っていたのかもしれない。
もしかしたら君は〈神の使人〉の悪事を嘆いた神の化身なのかも知れないな・・・』

ロベルトは憑き物が落ちたように微笑みながらミハエルを見るのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。 女神の話によれば、異世界に転生できるという。 ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。 父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。 その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。 食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。 そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ
ファンタジー
独身生活を謳歌していた井手口孝介は異世界の主神リュシーファの出来心で個人的に恥ずかしい死を遂げた。 全面的な非を認めて謝罪するリュシーファによって異世界転生したエルロンド(井手口孝介)は伯爵家の五男として生まれ変わる。 もちろん負い目を感じるリュシーファに様々な要求を通した上で。 貴族に転生した井手口孝介はエルロンドとして新たな人生を歩み、現代の知識を用いて異世界に様々な改革をもたらす!かもしれない。 思いつきで適当に書いてます。 不定期更新です。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

死に戻り勇者は二度目の人生を穏やかに暮らしたい ~殺されたら過去に戻ったので、今度こそ失敗しない勇者の冒険~

白い彗星
ファンタジー
世界を救った勇者、彼はその力を危険視され、仲間に殺されてしまう。無念のうちに命を散らした男ロア、彼が目を覚ますと、なんと過去に戻っていた! もうあんなヘマはしない、そう誓ったロアは、二度目の人生を穏やかに過ごすことを決意する! とはいえ世界を救う使命からは逃れられないので、世界を救った後にひっそりと暮らすことにします。勇者としてとんでもない力を手に入れた男が、死の原因を回避するために苦心する! ロアが死に戻りしたのは、いったいなぜなのか……一度目の人生との分岐点、その先でロアは果たして、穏やかに過ごすことが出来るのだろうか? 過去へ戻った勇者の、ひっそり冒険談 小説家になろうでも連載しています!

処理中です...