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第15話 襲撃

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「クソッ!!さっきのは何だったんだ?!急に身体が動かなくなっちまった!
お陰で逃げられちまったじゃねーか!!」

リーダーのジャンガは地団駄を踏む。

「恐らく魔法だ。既に俺達の事はバレていると思って良いだろう。
どんな魔法かは知らんが相当な手練れだ!女子供と侮ると足元を救われるぞ!」

バイザックは難しい顔をしながら男を見る。

「何を言ってやがる!女子供にビビってたらこの商売やってられるか!!
お前は〈神の使人〉なんだろ?!魔法使い如き何とかしろ!!いいな?!」

男は半ばやけくそで捲し立てるがバイザックの顔色は変わらず冷静を保っていた。

「お前は気付かないのか?十中八九相手も〈神の使人〉だ!
無闇に突っ込めばお前ら如き魔法一発でお陀仏だぞ!
長生きしたかったら慎重に行動する事だ!」

バイザックは今まで感じた事の無い力に警戒心を強める。
強いからこそ相手の力量を測る事が出来るのだ。

恐らく相手は待ち伏せしているに違いない。
今度はこっちが罠に嵌る番だ・・・ここは出直した良さそうだが・・・
バイザックはチラリとジャンガの顔を見る。

しかしジャンガは頭に血が昇ったままだ。

「けっ!!臆病風に吹かれやがって!俺達だって素人じゃねぇーんだよ!!
見てやがれ!!腰抜けめ!!オメェーは馬車の中で震えてな!!
行くぞ!奴等の屋敷に殴り込みだぁぁ!!」

ジャンガの号令で皆が死地に足を踏み入れる事になるのだった。


「来たね・・・ははっ!小細工をしようとしてるね。」

ミハエルは屋敷の入り口に居るアンリルに合図をするとアンリルは手を振って了解の合図をする。

さてと待つとしますか・・・。


偵察しに行った下っ端が報告する。
「ジャンガさん!門の近くに例のガキが居ますぜ!アンリルも見当たりません!」

「なんだと?ガキが一人で庭で遊んでるのか?
取り越し苦労だったか・・・よし!今のうちにガキを攫うぞ!!」

ジャンガ達は屋敷の門へと向かって行った。


・・・今そこに居るのが子供だと?!・・・そうか。〈神の使人〉は子供の方だったか・・・ならばこれは明らかに罠だ・・・しかしもう止められん・・・どうすれば・・・

バイザックが思い悩んでいると・・案の定ジャンガ達の悲鳴がこだまするのであった・・・。


「やっと来たか・・・。」

ミハエルが門を背にしゃがんでいると野太い声で気持ち悪い程の優しい声をかけられる。

「ぼく~こんにちは~♪」

なんかイラつくな・・
ミハエルは作り笑いをしながら振り向く。

「こんにちは!おじさんたち誰?」

「おじさんたちはね、君のお父さんのお使いで来たんだよ。
だからここを開けてくれないかな?」

ジャンガがゴツい顔を傾げてニッコリ笑う。

やっぱりイラつく・・・

「ふーん。そうなんだ。門は開いてるよ。」

「おっ!何だそうか!馬鹿なガキだな!」

ジャンガ達がニヤつきながら門を開けて雪崩れ込んで来た。

「お前はこれからどうなるか分かるか?ボロボロにされて奴隷商に叩き売られるんだ!!
さあ!来やがr・・・」

ジャンガがミハエルに手を伸ばした瞬間、アンリルが見覚えのある男2人を引きずって来る姿が目に入った。

「ミハエル君!裏のネズミを捕まえて来たよー!」
アンリルは男2人をジャンガの前に投げ捨てる。

どざぁぁぁーー!!
男達は白目をむいて気絶していた。

「げっ!アンリル!!・・・くそっ!バレていたのか・・・」

「アンリルさんありがとう!」

ミハエルがアンリルの方を見た瞬間、ジャンガは咄嗟にミハエルの首に腕を回して剣を向ける!

「おい!! 変な動きしてみろ!!このガキの命はないぜ!!」

アンリルは男の行動にキョトンとして半笑いになる。

ぷぷっ・・こいつ馬鹿なの?!とてつもない危険物を抱えて何を言っているのかしら?

アンリルは段々と笑いが込み上げて来た。

「ぷっ!!えっ?誰の命が無いって?!・・・ぷっ!!あーっはっはっはっはっはっはーーー!!!
お腹痛い!!お腹痛い!!!!笑わせないでぇぇぇぇぇ!!!」

「な、何だ!!何がおかしい?!ふざけるなよ!!脅しじゃねぇーぞ!!!・・んっ?!」

ジャンガはミハエルに向けている剣が動かない事に気付いて目線を落とすとミハエルが剣の先を指で摘んでいた。

「おっさん!子供にこんな物向けたら危ないだろ!
それにアンリルさん!笑い過ぎだよ!!気持ちは分かるけど・・・」

ミハエルは徐に自分の首に回された腕を軽く握りつぶす。

べきっ!ばきっ!ごきっ!

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!俺の腕がぁぁぁぁぁ!!!何しやがったぁぁぁぁ!!!」

ジャンガは激痛の余りミハエルを離して膝を付いて叫ぶ!

ミハエルはポンと地面に降りると、ざわつく男達に振り返り拳を構える。

・・・〈体術の極意〉ね・・・ご愁傷様・・・

アンリルが合掌して目を瞑るとミハエルの蹴りが叫んでいるジャンガの顎を跳ね上げる!

ばきゃ!!
「ぶげぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

顔面を歪にひしゃげながら綺麗な放物線を描き門の外へ吹っ飛んで行く!

・・・どさぁ・・・

男達が呆気に取られ吹っ飛んで行くジャンガを目で追って着地地点まで見送った。
男達は、はっ!と我に返って振り返ると既にそこにはミハエルはいなかった。

「何処へ行っt・・・とぶぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「くげぇぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ごはぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

次々と男達の身体に無数の窪みを残しながら
門の外へ叩き出されていく!

「ど、どうなっているんだ!何が起こっていr・・・ぶべばぁぁぁぁぁぁ!!!」

最後の男をぶっ飛ばすと元の位置に戻り肩の力を抜く。

「ふう、練習台にもならないね。さて強そうな最後の1人の所に行こうかな・・・」

ミハエルが門の外へ出て行くとバイザックが両手を挙げて待っていた。

「俺はあんたに喧嘩を売る気は無い!俺は一宿一飯の恩を返す為について来ただけだ。
俺に出来る事なら言ってくれ。」

ぐっ!改めて目の前で見ると凄まじい力だ・・・こんな奴に喧嘩を売るのは無謀の極みだな・・・

「そうなんだ。悪意も無いし本当みたいだね。じゃあ、あいつら邪魔だから馬車の中に放り込んで帰ってよ。
あと、僕の事は内緒だよ。会った時に驚かせたいからね!約束を破った時は分かってるよね!」

ミハエルは呻きなが転がる男達を指差す。

「わ、分かった。言う通りにしよう。」

バイザックは嫌な汗を掻きながら手際良く男達を馬車に押し込むと後ろを振り返るとなく一目散に去って行った。

「さて、アジトに案内してもらおうかな。」

ミハエルは馬車を〈索敵〉で追跡するのだった。
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