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第139話 ギルドマスター・アレン

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エル達がギルドに入ると貴族の若い冒険者達がミラドを見て息を飲む。

『か、帰って来たのか?!』
『無事だったんだな・・・ふん。』

ミラドが無事だった事を喜ぶ者はいなかった。

すると受け付け嬢がニッコリ笑う。
『セルナ様!ミラド様を無事に救出されたのですね!!
依頼達成です!お疲れ様でした!!
少々事情をお聞きしたいので奥へ来てください。』

『その必要は無い!!!』
突然ギルドに入ってきた男が叫ぶ。
『俺が直々に迎えに来てやったんだ帰るぞ!』

ズカズカとミラドに近づき腕を掴んで連れて行こうとする。
しかしミラドはびくともしない。

『兄様、僕は依頼の報告をしなければならないのです。邪魔をしないでください。』

ゾイルの手を振り払い歩き出す。
『き、貴様ぁぁぁぁ!!俺の言う事が聞けないのかぁぁぁぁ!!』

ゾイルが拳を振り上げ殴り掛かる!
ミラドは焦る事なく振り返りその拳を掴んだ。

ミラドはエルが〈精霊神〉に進化して〈タオス・キタヤツ〉を倒した時、エルから経験値をプレゼントされていたのだ。
ミラドは【育成・大】の影響を受けたレベル325になっていた。

『兄様・・・これでも僕は怒っているんです。』
ミラドは拳を掴んだ手に力を入れて行く。

みしっ!ぺきっ!びきっ!

『ぐがっ!があぁぁぁ!!!離せぇぇぇ!!
お、俺にこんな事してただで済むと思っているのかぁぁぁぁ!!!』
ゾイルはもがくが全く動かない。

ミラドはゾイルの自分勝手な言動に段々怒りが込み上げてくる。
『これはお前のせいで死んだギルザの分だぁぁぁぁぁぁ!!!!』

べきっ!!ばきばきばきっ!!!

『ぎやぁぁぁぁぁぁ!!!!』
ゾイルの右拳を完全に潰した。

『はぁ、はぁ・・・今なら分かる!!ミリアの気持ちが!!』
ミラドが鬼の形相になる!!

『これはミリアを傷つけた分だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

フルスイングのアッパーカットが綺麗に顎を捉える!!

ごきゃぁぁぁぁぁ!!!

『こぶあぁぁぁぁぁぁ!!!!』

ずばぁぁん!!

ゾイルが天井に激突して落ちてくる。

『そしてこれは!!実の兄に蔑まれ、殺されかけた俺の・・・俺の怒りだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

ミラドの渾身の右ストレートが落ちてきたゾイルの顔面を歪める!

ごきぃぃぃぃん!!!!

『ごがぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

どがしぁぁぁぁぁぁん!!!!

ギルドの椅子やテーブルを薙ぎ倒して転がって行く!

『あんたはこれで終わりだ!全て報告する!
身支度でもしておくんだな!!』
ミラドは踵を返して歩き出す。

『うふっ!ミラド様・・・カッコいいわ!』
ミリアが腕にしがみつく。

『なんだかんだ言ってたけど、吹っ切れたみたいね!お似合いのカップルじゃない!』
セルナが冷やかすとミラドが照れながら頭を掻く。

『僕もミリアを見ていたら我慢しているのが馬鹿らしくなって来たんです。
なんだかスッキリしました!』
ミラドの顔から付き物が落ちて清々しい表情へと変わっていた。

エルは微笑みながら声を掛ける。
『さあ!皆んな報告にいくよーー!』

報告内容から〈神様〉の事は伏せておく事にした。なぜかと言えば不確かな情報で混乱を避ける為だ。


ギルドマスターがため息をつく。
『俄には信じ難いダンジョンだな・・・。
それにそれ程の魔物をお前達が倒した?
証明は出来るのか?!』

エルから魔力が溢れる。
『へぇー、信じないんだ・・・命懸けで帰って来た私達を信じないんだ・・・。
セルナ!あれを見せてあげて!』

『了解!!』
セルナはアイテムボックスからミノタウロスの角をテーブルの上にぶち撒ける!!

ガラガラガラガラ!!!

『〈ミノタウロス〉35体分の角と〈ミノタウロスキング〉の角よ!!これでも信じないの?!』
セルナがドヤ顔で言い放つ。

ギルドマスターが口をあんぐりあげて目を泳がせる。
『こ、これは・・・ぜ、全部〈ミノタウロス〉の角・・・お、お前達は一体・・・』

エルがギルドマスターを睨む。
『どうなの?!私達の話を信じるの?信じないの?』

ギルドマスターは焦りながら
『わ、分かった!し、信じよう!
と、ところで・・・その・・・インゴットなんだが・・・ここにあるのか?』

(やっぱりそうなるよね・・・どうしようかな・・・)

『もちろんありますよ。ほら!』
エルはアイテムボックスから各種インゴットをテーブルの上に置いていく。

『金でしょ銀でしょ・・ミスリル、アダマンタイト、えっと・・・オリハルコン・・・ヒイロカネ・・まだまだあるの!』

エルが顔を上げるとギルドマスターはインゴットに釘付けになっていた。

『こ、これほどの物が部屋いっぱいにあるのか?!』

『そうなの!この部屋じゃあ入り切れないの!どうしようかなぁ・・・』
チラリとギルドマスターを見る。

ギルドマスターが期待の眼差しに変わる。
『あ、あの、そ、その・・・もし、手に余るようならギルドで少し引き取らせてもらえないか?』

エルがニヤリと悪い顔になる。
『そうだね・・・だけど・・1つ条件があるの!』

ギルドマスターが身を乗り出す。
『条件とは?』

『うん!ギルドの仕切りを取って入り口を1つにして欲しいの!!
冒険者に貧富の差なんて関係ないの!!冒険者は実力主義!!
こんな事をやっているのはここだけなの!
実力も無いのに地位だけでふんぞり返っている冒険者なんてなんの役にも立たないの!!
もし私がこの街にいる間に出来たなら格安で譲ってもいいんだけど・・・どうするの?』

ギルドマスターが葛藤し考え込む。
(そう言う事か・・・あれだけのインゴットが10本もあれば・・・凄まじい儲けになる。
冒険者は実力主義・・・貧富の差は関係ない・・か。
恐らくトラブルはあるだろうが・・・)

ギルドマスターは決意する。
『よし!その話乗った!!直ぐにでも始めよう!!
俺はギルドマスターのアランだ!よろしく頼む!!』

エルが笑顔を作る。
『さすがギルドマスターなの!じゃあ楽しみにしておくの!』

そしてエル達は部屋を出て行くのだった。
しかしエルの索敵に敵意のある反応が20程出ていたのであった。

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