上 下
93 / 183

第92話 トラブルの結末と始まり

しおりを挟む
『ハヤト様おはようございます。』
メルが頭を下げる。

『あぁ、おはよう。昨日は大変だったな!
今日はゆっくり休んだらどうだ?』

『ありがとうございます。
でも今は楽しいので行ってきます。』

『そうか、無理はするなよ。
あと、門の向こうに居る男達は何者だ?』

窓の外を見ると10人程の男達が門の近くでソワソワしている。
メルが窓の外を見ると男達が一斉に手を振り出した。

(あぁ、なるほどね・・・。彼女達のファンか・・・。
行き過ぎたファンが居なければいいが・・)

メルが俯きながら
『すいません・・・お店の常連の方達で・・
注意しておきます・・。』

『そ、そうだね。ここに来られても困るからね・・。
いろんな意味で気を付けてね・・・。』

『は、はい。ありがとうございます。それでは行ってきます。』
申し訳無さそうにして一礼して出て行った。

彼女達が馬車の乗り門を出るとなぜか歓声が上がる。

『メル様!おはようございます!!』
馬車の中から笑顔で手を振ると
『うぉぉぉぉぉぉ!!!笑顔で答えてくれたぞぉぉぉぉ!!もう死んでもいい!!!』

『馬鹿!俺に手を振ったんだよ!!あぁ、今日一日あの笑顔で乗り切れる!!!』

馬車は男達を振り切って走っていくが、男達は手を振りながら全力で走ってついて行く。

『はぁ、後で屋敷の外で待つのはやめるよに注意しないとね・・・』

マリも頷く。
『うん。そうだね。あまり見た目も良く無いしね・・・』

『そのうちやり過ぎる人達も出そうだしね。』
エリも心配そうだ。

店が近くまで来ると窓の外を見ていたマリの顔色が変わる。
『ね、ねえ、メル・・・あの行列は・・・もしかして・・・』
マリが指を刺す先には道幅の半分を占領して50メートル程の行列が出来ていた。

正に〈英雄の雑貨店〉から伸びる行列だった。
『何?!この行列は・・・まだ開店までは1時間以上あるのよ?!』
さすがのメルも動揺する。

行列を横目に道を進むと道端で、赤い服を着た女の子が男の子を踏み躙っている姿があった・・・。
『何とかいったらどう?』
『助けてぇぇぇーー!』

エリがなんとも言えない顔をする。
『メル・・・影響力が凄いよ・・・』
メルが窓の外を見て項垂れる。
(やってしまった・・・どうしよう・・・)

店の前に着くと男達の歓声が上がる!!
『英雄騎士バンザーイ!!!』
『リンド一家をぶっ飛ばしてくれてありがとう!!!!』
『英雄騎士バンザーイ!!!』
『かっこよかったぞ!!!』
『リンドを踏み躙るメルちゃん最高だったぜ!!!』
『俺も踏み躙ってくれぇぇぇ!!』

3人は圧倒されながら、愛想笑いを振り撒きながら店に入っていく。


『ねえ!英雄騎士ってなに?!』
『私達の事?!勝手に名前ついてるよ!?』
マリとエリのテンションが上がる。

メルは頭を抱えている。
『まあ、名前は良いとしてこの後どんな事になるのかが想像出来きないわ。
今日は早めにお店を開けましょう。』


その頃、城ではファイデル王の怒号が響き渡っていた。

『フレイドぉぉぉ!!貴様は何をやっておるのだぁぁぁぁ!!
伯爵の地位をやった、わしの顔に泥を塗りおってぇぇぇ!!!!
よりによってハヤト一派に手を出すとは大馬鹿者がぁぁぁぁ!!!』
こめかみに青筋を浮かせ激怒する。

フレイドは床に頭を擦り付け土下座状態である。

『ご、誤解でございm・・・・』
フレイドは言い訳を言いかけるが・・・

『黙れぇぇぇぇ!!貴様のして来た事は明白じゃぁぁぁぁ!!くだらん言い訳など聞くかぁぁぁ!!時間の無駄じゃぁぁ!!』

ファイデル王は一度深呼吸をして玉座に座る。

『フレイド!貴様は爵位剥奪!犯罪者収容所で10年間強制労働!!
お前に加担していた者達は5年の強制労働!!
今まで泣かして来た者達の苦労を少しでも味わえ!!!』

『そ、そんな・・・・』
フレイドは床に突っ伏してこうかいするのだった。

するとそこへ報告が入る。
『ハインド王国の使者が至急謁見を希望しております。』

ファイデル王は首を傾げる。
(確か馬車で3日ぐらいの距離だったな。
そこまでして来た理由が気になるな。)

『よし、通せ!』

『はっ!』

この謁見が更なるトラブルの始まりになるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

処理中です...