ねぇ、神様。わたしはあなたに復讐したい。

鏡上 怜

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第4章 わたしは誰?

3・指先に滲む

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 先輩が好きなことは、もう最初の何回かでわかっている。
 だから、わたしは先輩の前に屈み込んで、いつも通り丁寧に舐めていく。
「そーそ♪ 最初からそういう風にしてくれればいいわけよ……、――っっ」
 机に腰を乗せたまま、ビクビク震えてのけ反る先輩を、冷めた気持ちで見つめる。

 松永まつなが先輩に声をかけられたのは、補習に来た日のこと。蝉がうるさかった真夏の日、確か江崎えざきくんとも会ったっけ。そう、まだ教室に着いたばかりで、先生とか他の人が来るまで絵でも描いて時間を潰そうかな、とか思ってノートの隅に落書きをしてたときのこと。


『あっ、いたいた。ほんとにいるよ三好みよしちゃん』
 軽薄そうな声でヘラヘラ笑っている顔が印象に残っている。もちろん、嫌な印象。
 それに、そのときのわたしはまだ先輩のことを知らなかった。
『えっと、どなたですか?』
『えっ? あー、ごめんごめん。俺ね、松永 孝多こうたって言います。一応ここの2年やってるから、まぁ先輩だよね。通りすがりの上級生?』
 体つきは細めで、顔はそれなりにかっこいい感じ。背はちょっと高いし、ちょうどいい軽さが、いろんな人に好かれそうな人だった。
 親しげな雰囲気を演出しようとしてるのはわかったけど、どことなく絡みついてくるような視線が気持ち悪かった。

『それで、松永先輩はどうしてここにいるんですか?』
『んっとね、三好ちゃんに会いに』
『は?』
『ていうか、去年暮れに話題になった【少女A】さんに興味あってさ』
 それは、の別名だった……。


「ん、くっ……、ほんと、さっ、最初は信じらんなかったよねっ。まさか、三好ちゃんが、うっ、先生とヤッちゃうような娘だったなんて……、は――――」
 か細い声が上から聞こえてきて、先輩の身体がひと際強く震える。
 口の中に広がる、苦い味。熱くて、粘っこくて、喉が痛くなる。
 咳き込んでいるのにもかまわずに床に寝かせられて、まだ勃ちきらないアレを挿入れられる。わたしがどういう顔をしてるかも全然見ていない、ただ性欲を発散するだけのセックス。
 が会っている人たちみたいに支配しようとしているわけでもない、ただの性欲発散。それが松永先輩のセックスだった。
「はぁっ、はぁぁっ、――――っ!!」
 ただ動いて、すぐに余裕のない顔になって、よだれを垂らしながら勝手に射精する。
 わたしは何も得られずに、ただ膣内なかがジンジンと痛くなるだけ。
 そんな最悪の時間を、あの補習の日以来1ヶ月以上、わたしは続けている。


「かんぱーい!!」
 そんなわたしの身体の事情には関係なく、文化祭は無事に終わった。わたしのクラスで出したホラー演劇『白いリンゴの国』はその演出だったり演劇部のルーキーをしている委員長の名演技だったりのおかげで大評判になって、見事最優秀賞をもらうことができた。
 今は、その打ち上げ。
 学校の近くにある安めのお好み焼き屋さんで、みんなでわいわい騒いでいる。その話題の中心はもちろん、お姫様役で名演技をしていた委員長と、ホラー演出を考えたゆいちゃんだ。

「いいんちょすっげーな! 本物のお姫様みたいだった!」
「え~、それってあれだよ、智景ちかげさんの王子様がエスコートしてくれたからだよ。ね?」
「え、あっ、いや別にそんなことないって! それは委員長が……」
「あ、ちー照れてる~」
「ゆい! あ、そ、そうだよ! ゆいが考えた観客席が揺れる仕掛けとかよかったんじゃないの!? あとは、」
「あーも―恥ずかし―言わないで―」

 そんな盛り上がるみんなの脇では、文化祭の中で生まれた恋のお話が流れていたりして……。
 楽しいのに、ちょっとだけ居心地が悪かった。
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