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第3章 再会、苦悩。

9・瑞雲が見えても、尚。

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「マイちゃんってさ、あれでしょ。でしょ? うちの妹から聞いてんのとそっくりなんだよねぇ~」
 シンヤさんはにこやかに――そしていたずらっぽく微笑みながら、わたしをベッドに横たえる。

 ……わたしを「みよ」って呼ぶのは、きっとちーちゃんだけだ。どうしよう、どうしよう、わたしこれから友達のお兄ちゃんとセックスするの? いや、そんなの普通じゃない。おかしいよね、そんなの。そんなことを思って頭がぐるぐる回っているのに、ベッドの上で仰向けになって人を見上げると、あぁ、もうだめだ。
 期待してしまう。
 さっきまでお風呂に入る前とかお風呂の中とかでされてきた愛撫を思い出してしまう。
 思い出してしまうと、身体が止まらなくなる。

 でも、だめだ。
 この人は、ちーちゃんのお兄さんなんだから。
 だから、こんなことしちゃだめなんだ。

「大丈夫だよ、俺だって現役の女子高生とこんなことしてたなんて知られたらやべぇし。誰にも言わないからさ」

 そんなことじゃない、わたしが嫌なのはそんな理由じゃなくて……。
 言おうとしても口が動いてくれない。開いた口から出るのは、シンヤさんのキスを求める息だけで、こんなのすぐにやめなきゃいけないってわかってるのに。シンヤさんがいやらしく微笑みながら舌を出したのを真似するみたいにわたしもまた舌を出してて。
 絡まった舌と舌。混ざり合って1つになる体温と唾と、くっついた体を伝う汗。
 それだけで、身体の奥がじゅん、ってなってしまう。
 自然に吐息が熱くなる。
 シンヤさんは、もちろんそんなことにはすぐに気付いてしまう。隠そうとしてそっぽを向いた顔も、優しく触れた手でそっと戻されてしまう。

「ていうか、我慢できないのマイちゃんだけじゃないから。俺も、もう無理かも」
 荒くなった息に、切なそうな声。

 ずるい。
 あなたは大人なんだから、わたしを押し戻してくれなきゃいけないのに。それなのにそんな余裕なさそうな目で見られたら、断る言葉なんてもう探したりできなくなってしまう。
「だから、悪いのはマイちゃんじゃなくて俺だから」
「え、――――」
 返事をする間もなく、すぐ重ねられた唇。
 溶けてしまいそうな頭の中で思ったのは。

 あぁ、今日ってちょっと危ない日なんだよな――そんなことだった。
 そのキスが始まりで、わたしたちは時間も忘れてセックスした。舐めるのも、舐められるのも、いつもお父さんとしてることと同じはずなのに何か違うことみたいに思えて、どこか特別な気持ちのまま、侵入はいってくるシンヤさんを膣内だけじゃなくて全身で感じて。
 全身が性感帯になったみたいな気持ちになって。
「ふふっ」
「――ぁ、ん、なに?」
 シンヤさんがわたしを抱えながら笑う。尋ねた言葉への返事は、汗ばんだ胸と胸がくっ付いた温もりと、お父さんとかいつものおじさんとはしたことがない、ハグした体勢で下から突き上げられる感覚。

「ううん? 可愛いね、は」
 ――みよ

 心臓が止まりそうになった。でも、どうして?
 ちーちゃんの顔と声が思い浮かんだ瞬間に、悪い気がして仕方ないのに、シンヤさんをより強く感じてしまう。
「ぁ、あっ、――――っ」
「ほら、やっぱりもっと感じてくれたね」
 いたずらっぽく笑うシンヤさんの言葉に、わたしはもう何も返せなかった。


 次の日。
「みよ、おはよー!」
「あ、うん。おはよう」
 いつも通り声をかけてきたちーちゃんを、わたしはいつも通り見ていたかな。
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