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第3章 再会、苦悩。
5・月に叢雲
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「三好さん、お昼だよ! おべんとおべんと!」
「うん、今日どこで食べる?」
「えっとね、ちーは中庭で待ってるって、行く?」
「行こ行こ」
入学してから、そろそろ1ヶ月。
高校での生活はそれなりに充実している気がする。新しい環境、新しい空気、新しい人間関係。何もかも新しくして、わたしはリセットしてやり直している。
「あー、みよとゆい来た! 遅い遅~い」
「ちーが早すぎるんじゃないの~? まだ授業終わってすぐなのに」
「たぶんウチの体内時計は、ゆいのより数段速いのだよ」
「それいいのか悪いのかわかんないやつだよ~」
今のところわたしが特に仲良くできているのは、これから一緒にお昼をとる予定の都築 唯衣さんと、智景 早百合さん。都築さんは同じクラスで、江崎くんの次に――新しく知った人では1番最初に話した人で、そのまま意気投合して友達になった。明るくていつも笑顔で、裏表のなさそうな雰囲気が好き。小動物みたいなところも可愛いから好き。
智景さんは都築さんの幼馴染で、つい最近知り合って一緒に過ごすようになった。都築さんと比べるとちょっと大人っぽくて、一言でいうとかっこいい雰囲気の人。それで、わたしのことは「みよ」って呼んでいる。スラっとした長身が目を引く。
でも、最近知り合ったばかりだからこういうときにちょっと距離感がわかりにくいけど。
たぶん、わたしだとまだ都築さんみたいな返し方はできなさそうだな、なんて思ったりして。
それもこれから埋まっていくかな、なんて思ったりしながら、お待ちかねのお昼の時間。
わたしは自分で簡単なのを詰めてきただけ。都築さんは購買で買って来たパンを片手に、わたしと智景さんのおかずを食べていっていて、智景さんはすごく凝ったキャラ弁を作ってきている。
うん、何回見ても可愛いなぁ、智景さんのキャラ弁。意外過ぎる。
「あ、そういえばさ。みよって江崎と付き合ってんの?」
「え~、智景さんいっつもそれ訊くー。違うよ? ただ昔の同級生ってだけ」
「三好さん三好さん、ちーあれだから。江崎のこと……」
「あー、そっか~」
内面も可愛かったんだね、智景さん。
「いや、別に? ちがう、けど~」
あからさまに狼狽えてしまった智景さん。そっか、江崎くんのことを……? 青春だなぁ、なんて笑っているときに、ふと。
「――――」
ちょっとだけ胸が痛んだような気がした。
たぶん、わたしにはまだ恋愛っていう言葉は辛いものなのかもな……と思ったら、ちょっと寂しくなったりした。
それで、夜が来る。
お父さんが、お酒臭い息をわたしに吹きかけながら必死にわたしの服を脱がしてくる。途中からそれも面倒くさいとばかりに服の上から胸とかお尻とか、あそこにも膝を擦りつけられたりする。首筋にびちゃ、と付くよだれも臭う。
その間、ずっとお父さんはうわ言みたいに言い続けている。
「お前は、汚いな。今日は何人とヤッてきた? 何人の男としてきたんだ? 麻衣、どうしてこんな子に育っちゃったんだ……っ」
泣きながら、怒りながら、でも口元は笑ってる。
そんな言葉をずっと聞いてるとおかしくなるから。
わたしは学校のことを考える。
智景さん、今日は可愛かったなぁ。でも都築さんも、クラスの子のことじっと見てるし……。たぶん、2人とも恋する乙女なのかも? 明日はどんなこと話そうかな……、あぁ、視界が揺れてうまくまとまらないけど、明日も楽しみだな。
そっか、江崎くんか。
「うん、今日どこで食べる?」
「えっとね、ちーは中庭で待ってるって、行く?」
「行こ行こ」
入学してから、そろそろ1ヶ月。
高校での生活はそれなりに充実している気がする。新しい環境、新しい空気、新しい人間関係。何もかも新しくして、わたしはリセットしてやり直している。
「あー、みよとゆい来た! 遅い遅~い」
「ちーが早すぎるんじゃないの~? まだ授業終わってすぐなのに」
「たぶんウチの体内時計は、ゆいのより数段速いのだよ」
「それいいのか悪いのかわかんないやつだよ~」
今のところわたしが特に仲良くできているのは、これから一緒にお昼をとる予定の都築 唯衣さんと、智景 早百合さん。都築さんは同じクラスで、江崎くんの次に――新しく知った人では1番最初に話した人で、そのまま意気投合して友達になった。明るくていつも笑顔で、裏表のなさそうな雰囲気が好き。小動物みたいなところも可愛いから好き。
智景さんは都築さんの幼馴染で、つい最近知り合って一緒に過ごすようになった。都築さんと比べるとちょっと大人っぽくて、一言でいうとかっこいい雰囲気の人。それで、わたしのことは「みよ」って呼んでいる。スラっとした長身が目を引く。
でも、最近知り合ったばかりだからこういうときにちょっと距離感がわかりにくいけど。
たぶん、わたしだとまだ都築さんみたいな返し方はできなさそうだな、なんて思ったりして。
それもこれから埋まっていくかな、なんて思ったりしながら、お待ちかねのお昼の時間。
わたしは自分で簡単なのを詰めてきただけ。都築さんは購買で買って来たパンを片手に、わたしと智景さんのおかずを食べていっていて、智景さんはすごく凝ったキャラ弁を作ってきている。
うん、何回見ても可愛いなぁ、智景さんのキャラ弁。意外過ぎる。
「あ、そういえばさ。みよって江崎と付き合ってんの?」
「え~、智景さんいっつもそれ訊くー。違うよ? ただ昔の同級生ってだけ」
「三好さん三好さん、ちーあれだから。江崎のこと……」
「あー、そっか~」
内面も可愛かったんだね、智景さん。
「いや、別に? ちがう、けど~」
あからさまに狼狽えてしまった智景さん。そっか、江崎くんのことを……? 青春だなぁ、なんて笑っているときに、ふと。
「――――」
ちょっとだけ胸が痛んだような気がした。
たぶん、わたしにはまだ恋愛っていう言葉は辛いものなのかもな……と思ったら、ちょっと寂しくなったりした。
それで、夜が来る。
お父さんが、お酒臭い息をわたしに吹きかけながら必死にわたしの服を脱がしてくる。途中からそれも面倒くさいとばかりに服の上から胸とかお尻とか、あそこにも膝を擦りつけられたりする。首筋にびちゃ、と付くよだれも臭う。
その間、ずっとお父さんはうわ言みたいに言い続けている。
「お前は、汚いな。今日は何人とヤッてきた? 何人の男としてきたんだ? 麻衣、どうしてこんな子に育っちゃったんだ……っ」
泣きながら、怒りながら、でも口元は笑ってる。
そんな言葉をずっと聞いてるとおかしくなるから。
わたしは学校のことを考える。
智景さん、今日は可愛かったなぁ。でも都築さんも、クラスの子のことじっと見てるし……。たぶん、2人とも恋する乙女なのかも? 明日はどんなこと話そうかな……、あぁ、視界が揺れてうまくまとまらないけど、明日も楽しみだな。
そっか、江崎くんか。
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