口づけは1度だけ…

鏡上 怜

文字の大きさ
上 下
11 / 17
2.After

巡る鐘の音

しおりを挟む
 エヴァーリヴは、本人が先ほど言っていたように、2人の住む家に着くなりティルの引いた椅子に座ることすらなく、まるで幼子のようにその興味の赴くままに家のなかを歩き回る。
 寝室にも、その幼い足取りで侵入してきた。

「へぇ! ここがあなたたちのねやね! ふぅん、そもそもさっきの客間もそうだけど、あなたたちはわりと場所の境なくまぐわっているようね、私の栄養源としては申し分ないかも」

 いたずらっぽく笑う顔は、何度見てもフィーナそのもので、その姿形で淫猥な雰囲気をまとわせてなどほしくはないのだが、本人の意思ではなくティルの記憶によってエヴァーリヴがこの姿に見えているというなら、仕方のないことと思うしかない。
 アメリアは、ティルが自分よりもエヴァーリヴの要望を叶えてしまったことですっかりへそを曲げてしまっている。今も、エヴァーリヴについているティルには一切構わずに客間の椅子に座ったままだ。
 後で、何事か要求されるだろうが、そちらは応じなくてはいけないだろう。思わず苦笑したティルに、周縁の魔女エヴァーリヴは興味深げな態度で近寄った。
「? いかがなさいましたか?」
 思わず尋ねたティルに、エヴァーリヴは一瞬含みのある微笑を浮かべてから、「いいえ、あぁ、この子もこんな風に笑うようになったんだな、って思っただけよ?」と答えた。そこで、いよいよティルも声を上げる。

「エヴァーリヴ様。ひとつお伺いしたいことがあるのです」
「えぇ、何か訊きたそうにしていたものね。何かしら?」

 やはり見透かされていた。そんな感想と共に、ティルは彼女に問うた。
 なるべく簡潔に、単刀直入に。でなければ、魔女の弄する言霊に知りたい物事を容易く紛れ込まされてしまうから。それを、十数年の日々で知っているから。

「私たちは、以前にどこかでお会いしているのでしょうか? いや、私たちだけでなく、私とアメリアも。私と貴女方との間に記憶の齟齬があるように思います。それについてお答えがほしいのです」

 ティルの問いに、彼女はやはりフィーナそのものである幼い顔で可笑しそうに笑ってから、「えぇ、構わないわよ」と面白がるように答えたあと。

「その代わり」

 ゆったりと、まるで蛇の舌のように滑らかにその小さな手を蠢かせ。

「あなたの精気を私に捧げなさい?」

 ティルに答える間など与えずに、その逞しく育っている体に指を這わせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

冷徹&ドSの公爵令息様の性処理メイドをヤらせてもらいます!

天災
恋愛
 冷徹&ドSの公爵令息さまぁ!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

おっさんとLJKの飼育恋愛

なつのもうふ
恋愛
ちょいS アラフォー男が 裏垢SNSで巡り合った 処女のLJK(ラストジェーケー)と恋に落ちた そんなLJKを 心を通わせながら飼育していくのちょっとエッチな物語 えっちな描写…たくさんあります 女性にも想像しながら読みやすく書いていくつもりですがどうでしょう。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

【R18】朝から逆ご奉仕されるメイドさん

ねんごろ
恋愛
朝日の気持ちいい、そんな朝に。 私のご主人様がたっぷりと愛してくれるのです。

処理中です...