アリスは眠らないで

鏡上 怜

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3、あまくて、からい。

砂糖のように、柔らかい

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「はぁ、あっ――――、かきもとくん……っ!」
「ん、有栖ありす……、その顔、すっげぇエロい」
「やぁ、言わないでよそんなこと、うぁぁっ♪」

 今日も、柿本かきもとくんの家にいる。
 柿本くんの匂いがするベッドの上で、柿本くんの汗とわたしの汗を繋ぎながら、唇から唾液を交換しながら、どろどろに溶け合うようなセックスをしている。愛してるって言葉を耳に受けながら、愛してるって気持ちを全身に浴びながら、愛してるって視線を真正面から受け止めながら、愛してるってほしがる欲望を膣内なかが破裂してしまいそうなほど突き刺されながら。

 もう、何度頭が真っ白になったか、わからない。
 今までこんなことがなかったから怖いのに、これをやめようなんて思えなくなる。前のときは、こんなに満たされることもなかったのに。すっかり汚れきったわたしの身体を「綺麗だ」と言ってくれて、ひねくれきった性格も「可愛い」と言ってくれる人。
 こんな人に出会えたのは、なんの償いなんだろう?
 それとも、これからわたしが何かの償いをするの?
 最近、ちょっとした不安に襲われてしまうくらい。

「有栖、すっごい気持ちよかった」
「わたしも……、んっ、」
 全身に走った電気みたいな甘い痺れに酔いながら、わたしはもう1度キスをしてきた柿本くんの求めに応じることになった――――。

  *  *  *  *  *  *  *

「それじゃ、またね」
「うんっ!」
 柿本くんには、前にあった色々を話してはいない。そんなことを話してしまったら、軽蔑されてしまうかも知れない。もう全部を柿本くんにはあげたつもりでいるけど、それでも昔のことだけはどうしても言えない。嫌われたりしたら、怖いから。
 けれど、柿本くんはちょっと察しているみたい。
 彼の家に行った帰りは、いつもわたしの家の近くまで送ってくれる。わたしを護るように、ずっと傍でくっ付きながら。もうだいぶ暗いし寒いはずなのに、いつもいつも、嫌な顔なんてしないで送ってくれる柿本くんのことを改めて「好きだな」って思いながら、わたしたちは最後に軽いキスをして別れる。

「気を付けて帰ってね。また明日!」
「うん、柿本くんもね!」

 手を振って遠ざかっていく彼の背中を見送ってから、自宅に向かって歩く。
 まだ親が帰ってない、真っ暗な家に。
 帰ったってひとりきりの寂しくて暗い我が家。前はそんな場所が大嫌いで、誰かと繋がっていたくて外に行ったり、SNSで募集した通話相手といろんな話をしたりしていた。何人かの人とはそれがエスカレートして、そのうちのひとりには、ひどいことをされ続けて。
 それでも、やめられなかったのに。

 もう、今は家に誰もいないことなんて気にならなかった。
 だって、ひとりでも柿本くんの温もりが残ってるから。身体の中にまだ残っている感触も、唇に残っているリップクリームの匂いも、その全部がわたしを守ってくれるような気がしたから。
 だから、もう平気だよ?
 ありがとう、柿本くん。

 おやすみ、大好きだよ。
 帰ってからの通話で何度も言い合ったことを、もう一度心の中で唱えた。


 次の日。
 学校に行くと、いつもと違う光景が待っていた。
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