鏡の中から覗くのは

５．activity

エイプリルフール

　今日は4月1日である。
　世間でいうエイプリルフール、嘘をついても許される日……というと語弊があるし、「四月馬鹿」という言葉に表されるように、馬鹿げていて笑って流せる程度の嘘という、一応の範囲設定はされているが、そういう日なのである。
　だからもいって、それを馬鹿正直に守ろうとする者もそう多くはあるまい。斯く言う私も少年時代には、「できるだけ現実じみていてショッキングな嘘をついてやろう」などと思っていたものだ（懐かしい）。

　だからこそ、大した嘘をつくことなく２日を迎えてしまったときなど年に１度のチャンスを逃したように悔しがったものだし、まだ寝るまでは１日だなどと言っていた。

　因みに由来としては中近世フランスでグレゴリオ暦が採用されたことに反発した者たちが言い始めただとか、仏教徒が修行中に迷いの境地に入るのがこの時期だと言われていただとか諸説あり、いずれにしてもこの愛すべき風習はそこそこの歴史を持っているらしい。
　何にせよ、嘘をつけるというのは楽しい？　かはともかく、常に肩肘張っている状態なのを緩めるのもいいな、と思える日である。私は大好きである。どうせなら新年度の会社・学校の初日にも採用してみれば適度に場の空気を解せるのでは？などとも思ってはいるが、まぁ度を越えてしまう者も現れそうなので敢えて公言はしない。

　そもそも、人は常に嘘をついているに近いのだから。
　……詩的に言おうとした者の末路はこちらである。

　とりあえず言うなら、今日はよく通かよっているコンビニで新しいコーヒーを見つけて、その程よい苦さに舌鼓を打った日、とでも言っておこうと思う。

　今日はむしろわりと正直に綴った日かもしれないな――などと思いながら、もう過ぎ去ってしまったエイプリルフールを偲ぼうと思う。