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風の吹く夜に
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風が強く吹いている。
こういう夜には、どうしてだろう、敢えて外に飛び出してしまいたくなる。理由を問われても、それはわからない。もしかしたら、何もかも消し飛ばしてしまうような無秩序な奔流の中に身を投げ出してみたくなったのかもしれない。
そうすれば、この息の詰まるような不自由さもどこかに吹き飛んで行ってくれるのではないか――そんな淡い期待をも持ってしまう。
夜の無明の中に身をおいて、ふと考えたくなる。
その中で、自分の周りを囲むものの頼りなさを感じていたい――それは紛れもなく、自分のみによって立っているという実感に他ならないのではないかと思うから。
夜の闇のなかで、考える。
わたしとは何なのか?
普段、周りのものを見て、相対的な範囲で“わたし”を見ていることに気付けるのだと思う。だからこそものの本ではよく“自分探し”という言葉が流行したし、それまであったもの全てを失ったところからのスタートを描く物語がある。
日頃、わたしたちは色々なものに絡めとられている。
周りの評価、日々こなさなくてはならない日程、様々な付き合い、その他自分の思うままにならない物事に縛られている。そんな中では、まるで肺を持った魚のようなものだと言えるかも知れない。
そんなわたしたちが心地よくいるためには、きっと別のものに成り変わるしか術はないだろう。
それには、周りに何もない、何も見えない場所に身を置くしかないのではないだろうか。
――そんな益体のないことを、わたしは風から守られた壁のなかで考える。ただの妄想でしか、わたしは“わたし”を孤独の夜に置くことができない。
そんなわたしは、きっと一尾の、肺を持った魚なのだ。
こういう夜には、どうしてだろう、敢えて外に飛び出してしまいたくなる。理由を問われても、それはわからない。もしかしたら、何もかも消し飛ばしてしまうような無秩序な奔流の中に身を投げ出してみたくなったのかもしれない。
そうすれば、この息の詰まるような不自由さもどこかに吹き飛んで行ってくれるのではないか――そんな淡い期待をも持ってしまう。
夜の無明の中に身をおいて、ふと考えたくなる。
その中で、自分の周りを囲むものの頼りなさを感じていたい――それは紛れもなく、自分のみによって立っているという実感に他ならないのではないかと思うから。
夜の闇のなかで、考える。
わたしとは何なのか?
普段、周りのものを見て、相対的な範囲で“わたし”を見ていることに気付けるのだと思う。だからこそものの本ではよく“自分探し”という言葉が流行したし、それまであったもの全てを失ったところからのスタートを描く物語がある。
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そんなわたしたちが心地よくいるためには、きっと別のものに成り変わるしか術はないだろう。
それには、周りに何もない、何も見えない場所に身を置くしかないのではないだろうか。
――そんな益体のないことを、わたしは風から守られた壁のなかで考える。ただの妄想でしか、わたしは“わたし”を孤独の夜に置くことができない。
そんなわたしは、きっと一尾の、肺を持った魚なのだ。
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