それでも君といたいと願った

鏡上 怜

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運命は残酷だ

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 僕には、ずっと好きな人がいる。

 けれど好きな人――真理亜まりあが僕を異性として見ていないことは、小さい頃からわかっている。たぶん『可愛い』、よくて仲がよくて何でも話すことのできる幼馴染みが関の山だ。なんでも、真理亜に言わせると僕は、同じ女の子よりも可愛い――らしい。

『ほんとにゆうが女の子だったらなぁ~、コイバナとかしようとしたって、やっぱりちょっとね~』
 そんなこと言っといて、どうしてこの前知り合った男がどうだとかいう話をできるんだろう? それとも、あんな話ですら僕が(一応は)男だからって遠慮してる内容なんだろうか? だとしたら、女子同士で話してる内容なんてきっと聞けたものじゃない。

「僕がいるよ」
 なんて言ったところで、たぶん「優~、ありがと~」と抱きつかれて、またお酒を飲みながら未練ばっかりの愚痴を聞かされることになる……そう思うと複雑な気持ちになってしまう。
 だから、僕は今日も真理亜の愚痴を、相槌を打ちながら聞くだけに留めている。もっと言いたいこともあるけど、あぁ。

 もしも口に出して真に受けてくれたとして。
 はたして僕らは、今までのように近くでいられるのだろうか?
 それが不安だから、今日も僕の胸には、燻った想いが澱のように積もっていくだけだった。


   *   *   *   *   *   *   *

 真理亜を自宅まで送り届けて、ベッドの上にごろん、と横になる様を見つめる――僕にできるのは、ここまでだ。
 僕にだって人並みの欲はある。
 けど、それをぶつけるような真似は、できない。
 きっと真理亜を傷つけてしまうってことが、わかっていたから。

 …………すぅ、

 少しだけ息を吸い込んで。
 帰宅した僕は、ウィッグを手に持った。
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