2 / 2
運命は残酷だ
しおりを挟む
僕には、ずっと好きな人がいる。
けれど好きな人――真理亜が僕を異性として見ていないことは、小さい頃からわかっている。たぶん『可愛い妹分』、よくて仲がよくて何でも話すことのできる幼馴染みが関の山だ。なんでも、真理亜に言わせると僕は、同じ女の子よりも可愛い――らしい。
『ほんとに優が女の子だったらなぁ~、コイバナとかしようとしたって、やっぱりちょっとね~』
そんなこと言っといて、どうしてこの前知り合った男がどうだとかいう話をできるんだろう? それとも、あんな話ですら僕が(一応は)男だからって遠慮してる内容なんだろうか? だとしたら、女子同士で話してる内容なんてきっと聞けたものじゃない。
「僕がいるよ」
なんて言ったところで、たぶん「優~、ありがと~」と抱きつかれて、またお酒を飲みながら未練ばっかりの愚痴を聞かされることになる……そう思うと複雑な気持ちになってしまう。
だから、僕は今日も真理亜の愚痴を、相槌を打ちながら聞くだけに留めている。もっと言いたいこともあるけど、あぁ。
もしも口に出して真に受けてくれたとして。
はたして僕らは、今までのように近くでいられるのだろうか?
それが不安だから、今日も僕の胸には、燻った想いが澱のように積もっていくだけだった。
* * * * * * *
真理亜を自宅まで送り届けて、ベッドの上にごろん、と横になる様を見つめる――僕にできるのは、ここまでだ。
僕にだって人並みの欲はある。
けど、それをぶつけるような真似は、できない。
きっと真理亜を傷つけてしまうってことが、わかっていたから。
…………すぅ、
少しだけ息を吸い込んで。
帰宅した僕は、ウィッグを手に持った。
けれど好きな人――真理亜が僕を異性として見ていないことは、小さい頃からわかっている。たぶん『可愛い妹分』、よくて仲がよくて何でも話すことのできる幼馴染みが関の山だ。なんでも、真理亜に言わせると僕は、同じ女の子よりも可愛い――らしい。
『ほんとに優が女の子だったらなぁ~、コイバナとかしようとしたって、やっぱりちょっとね~』
そんなこと言っといて、どうしてこの前知り合った男がどうだとかいう話をできるんだろう? それとも、あんな話ですら僕が(一応は)男だからって遠慮してる内容なんだろうか? だとしたら、女子同士で話してる内容なんてきっと聞けたものじゃない。
「僕がいるよ」
なんて言ったところで、たぶん「優~、ありがと~」と抱きつかれて、またお酒を飲みながら未練ばっかりの愚痴を聞かされることになる……そう思うと複雑な気持ちになってしまう。
だから、僕は今日も真理亜の愚痴を、相槌を打ちながら聞くだけに留めている。もっと言いたいこともあるけど、あぁ。
もしも口に出して真に受けてくれたとして。
はたして僕らは、今までのように近くでいられるのだろうか?
それが不安だから、今日も僕の胸には、燻った想いが澱のように積もっていくだけだった。
* * * * * * *
真理亜を自宅まで送り届けて、ベッドの上にごろん、と横になる様を見つめる――僕にできるのは、ここまでだ。
僕にだって人並みの欲はある。
けど、それをぶつけるような真似は、できない。
きっと真理亜を傷つけてしまうってことが、わかっていたから。
…………すぅ、
少しだけ息を吸い込んで。
帰宅した僕は、ウィッグを手に持った。
0
お気に入りに追加
3
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…

冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる