【テスターリンクーTester Rinkー世界に二つだけの花】

＜表紙絵追加＞■RINK_013_主人公は誰？■

◆2017/7/22 PM13:35◆

「僕がいないとダメ？」

何回も首を”こくこくこく”と縦に振るユイ

「そだよ！」
「ジンちゃんがいないとユイとアッちゃんは飛行機に乗れないのだ！」

「・・・いや」
「ピエールはそんな事を言ってなかった！」
「第一　部外者の僕から”CN.incに行く”事を提案したんだ！」

「違うよ・・・」
ユイは真顔で僕の目をじっと見つめた。

「ジンちゃんはもう当事者なのだ」

「はぁ！？僕が当事者なわけないだろ！？」
こんな幼い子が当事者と言う単語をチョイスした事に少し戸惑ったが、
僕はアオイさんを尾行した結果、現在に至る・・・
当事者なわけがない！

「僕はただ普通に生きたいだけだ」
「当たり障りなく人生を生きる！それ以上もそれ以下もない！」

「潜在能力」

——・・・！？——
ユイの幼い声が静寂を生む。

「ジンちゃんは潜在能力をわざと制御してる！」
「・・・ってピーちゃんが言ってたよ？」

「！」
図星の僕は、ユイから視線を外した。
「・・・」

「どういう事？」

僕の方を見向きもしなかったアオイさんがユイを見つめるために振り向いた。
ユイは再び微笑みながらアオイさんに視線を移す。

「ジンちゃんはわざと自分の力を抑えてるんだって！」

「・・・わざと抑えている？」

「うん 制御っていうんだよ！」

「そこはいいからどういう事？」
アオイは食い気味にユイに問いかける。

ユイは少し間をおきチラッとジンギを見つめた・・・
「本当はジンちゃん・・・勉強も運動も全部100点満点取れるんだって！」

「？」

「体育の授業の時　国体100メートルの選手に勝てるのにわざと負けたり」
「テストも全部答えがわかってるのにわざと平均点を取ったり」
「人間関係も程よい距離感でわざと目立たない友達と付き合ってたり」
「全部計算で潜在能力を抑えてるって」
「ピーちゃんが言ってた」

僕は呆然とユイを見つめた・・・

——全問正解！なっなぜ知ってるんだ！？——
ジンギの右手が毎秒13回、小刻みに震えている・・・

僕は誰にも気づかれることなく潜在を制御して、
この7年間を生きて来た・・・。
もちろん必要以上に詮索されないように目立つことなく——

だが、今、確実にバレてる。
どうして？

・・・CN.incがユイに情報を伝えた。

アオイさん・・・ユイ・・・
全て僕が築きあげた”トロイクルー”のメンバー・・・

「！！」
——偶然なわけがない！

各国の諜報機関のエージェントを
ヘッドハンティングしてきたCN.inc。

10億のユーザーがログインするRF（リアルフィールド）のサーバーやシステムは
一度も通信障害もバグも起っていない。
優秀なSE(ｼｽﾃﾑｴﾝｼﾞﾆｱ)、PG(ﾌﾟﾛｸﾞﾗﾏ)を雇用しているからこそなせる技だ。

都内には300万台以上の監視カメラ。
スマホへのペアリング。
そのSE達なら僕を遠隔で調査、監視する事なんて容易い——
元公安のエージェントをアサインすれば、
日本での諜報活動も可能だ・・・

そして
“アオイさんとユイが自殺するタイミングでピエールは接触してきた”
しかも

——僕がアオイさんを尾行しているタイミングで！——

なぜ？・・・いや理由はどうでもいい。
今は情報が断片的(だんぺんてき)過ぎて、CN.incの計画や意図を考えるだけの情報がない。
無駄だ——。

だが、一つだけ明確な事は・・・
CN.inc・・・いやピエールは・・・

——あえて僕をこの計画のクルーに選発した——

「・・・」

僕は戸惑った。
毎秒何百回かもわからない程、右手が震えていた。

「あんたもベンチマークされてたのよ」

——！？——

僕の思考がリンクしたタイミングで
アオイさんの声が聞こえた。

僕は無意識にアオイさんに視線を送った。
僕の目を見つめるアオイさんは

——自分と同じ思考にたどり着いた——
その事を直感した表情で僕とアオイさんの空間4メートルには、
同じ空気が3秒ほど流れた・・・

「・・・」

——ピ～ンポ～ンパ～ポ～ン——

「！？？」
全員が飛行機を見上げた——！？

「飛行機が・・・喋ったよ？」

ユイは純粋な眼差(まなざ)しでジャンボ機を見えげている。
僕とアオイさんはチラッとユイに視線を送ったが
すぐに再びジャンボ機を見上げた。

“離陸3分前です”


「？！」
“指紋.虹彩認識(こうさいにんしき)を行ってください”

無機質なヴォイス音が滑走路に響く。

僕はジャンボ機の素っ気ない尖った表情・・・？
を見つめて
そして、
ここまでの経緯を予測変換した・・・

——「もしかして・・・この計画の主人公は・・・」——

——「僕！？」——


——　Now Lording　——