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<表紙絵追加>■RINK_012_ 最悪な密着■
しおりを挟む——からんからん・・・——
幼女ユイが舐める棒突きの飴の音が
滑走路に響く・・・
ユイは微笑みながら僕とアオイさんをキョロキョロと交互に見つめる。
そして、僕と目があったタイミングでニコっと微笑んだ。
僕はなぜ・・・幼女ユイが滑走路にいるのか?
僕とアオイさんだけだと思っていたけど
なぜチョキ・・・幼女ユイがここに。
——タタタ!———
幼女が僕に向かって猛ダッシュで走ってくる。
——!?——
——サッ・・・——
「ん?」
ユイが僕の横を駆け抜ける——
———バっ———
「ハヤブサー!!」
ユイの幼女独特の高い声が滑走路に響く。
僕はとっさに後ろを振りむくと、
アオイさんに飛びついてるユイ——
————ガッ——
ユイはアオイさんの首元を掴み、ブラ下がってる・・・
「・・・」
アオイさんは相変わらずの無表情でユイを見つめ、
ユイはその表情と対比的にニコニコ微笑んでいる・・・
「ハヤブサ!やっと会えた~」
ユイはアオイさんの胸に甘えるように顔をうずめた・・・
その光景を見つめる僕は心の中でつぶやいた。
——「羨ましい・・・」——
「邪魔」
「!?」
アオイさんは表情一つ変えず、ユイの目を見つめ冷たく言い放つ。
アオイさんを見つめるユイの表情は一気に曇った・・・。
僕は思わず、
「アオイさんその言い方は」
「邪魔なものに邪魔って言って何が悪いの?」
「いや 理屈ではそうでも チョキっ!ユイはRFでもアオイさんに」
「はぁ?だから何?」
「RFは・・・ただのゲームでしょ?」
——「ただのゲーム!」——
RFを生き甲斐の一つにしている僕にとって、
もう一つの生き甲斐のアオイさんが否定したこの現実に——
僕はスイッチが入ってしまった。
「その”ただのゲーム”に可能性を感じてるのはアオイさんですよね!?」
「”アオイさんのお姉さんがRFで生きてる”!」
「ユイを否定するって事は!その可能性も否定するのと同じです!!」
「!!」
——バチーーーン!!———
アオイさんの平手が僕の左のほっぺたにスマッシュヒット——
僕は避ける間なく、
気がついたら僕の左頬にアオイさんの右手が密着していた。
一瞬フラついた僕は、後方に一歩退いた。
・・・僕はアオイさんに視線を送った。
とてつもない鬼の形相を想像していたが、
「?」
僕を睨(にら)むアオイさんの表情は・・・
悲しくも寂しくも捉えられる表情を浮かべていた。
そして・・・
「ストーカー野郎が偉そうに私に指図をするな・・・」
「いやなら・・・帰れ」
と言い残しアオイさんは僕に背を向けてジャンボ機の方を向いた・・・。
怒号とは真逆の落ち着いた声量に僕は戸惑った。
だが一応この時の僕は思春期。
この生物学的な感情は抑えられなかった。
「わかりました・・・僕は飛行機には乗りません」
アオイさんの事はものすごく気がかりで仕方ない・・・。
だが、潜在的10%以下で生きてきた僕にとって、
求められていない事に尽力する事は
“とてつもないストレス”も感じていた。
確かにアオイさんは昨日自殺をしようとした。
しかし・・・
——今は生きる事を決心している——
部外者の僕にとってはそれだけ十分だとも感じた。
それに・・・
僕が行かないと言ったアオイさんに反応はない・・・
どこかで止めて欲しいと思う感情の反面、
——人間の意地は、とてもややこしい——
僕は鉄の扉に向かって歩みを進めた・・・
そして扉の取っ手を掴もうとした右手を掲げた瞬間
僕の左手に柔らかい感触を感じた・・・。
「ジンちゃんダメ」
ユイの小さな両手が、僕の左手をぎゅっと握りしめている・・・
「・・・」
僕はユイを見つめ優しく微笑んだ。
「僕がいなくてもシリコンバレーに行けるから安心していいよ」
ユイのほっぺたがプクっと膨らんだ。
「ダメ!!」
「ウィンクとハヤブサは仲良くしなきゃだめ!!」
「・・・?」
「トロイは”ハイクオリティ”のクルーなんだよ!?」
「ジンちゃんとアっちゃんがいたからユイは・・・」
「頑張って生きてこれたのだ!」
——生きてこれた!?——
僕とアオイさんはユイを見つめた。
そして僕は昨日の一件ですぐに察した。
——「ユイも死のうとしていた!?」——ー
「あっそれと!」
「ユイとアッちゃんとジンちゃん・・・」
「3人いないと、この飛行機には乗れないのだ!」
——!??——
僕はユイを見つめる視線をアオイさんに向けた・・・。
すでにアオイさんは僕を見つめていた・・・。
「はぁ?こんな奴いなくても」
ユイはアオイさんのワードに食い気味に反応する。
「ピーちゃんがそう言ってたのだ!」
僕とアオイさんの脳内には同じワードが羅列した。
——ピーちゃんって何?——
だがすぐにリンクした——
——「・・・ピエールだ!」——
ユイはアオイさんを見つめ、
ニコッと微笑んだ。
「アッちゃんのお姉ちゃんを助ける為には」
「ジンちゃんがいないとダメだって」
「・・・ピーちゃんが言ってたよ?」
—— Now Lording ——
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