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知らない世界、知らない国、知らない街

危険なバケモノ

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 「今日はやめておきますか?」
 部屋の外でサクラが扉に声をかけている。宿に帰ってから、ツバキは自室に閉じ籠ってしまった。鍵も閉められていてサクラは中に入れない。
 「・・・」
 ツバキの反応はない。もう一度ノックして「ツバキさん」と声をかける。
 「キクはきっと・・帰って・・」
 「こないと思う。」
 ツバキが発した言葉にサクラは手をぎゅっと握り締めた。
 「ツバキさ・・」
 「ダメそう?」 
 「アハマさん・・」
 奥からサクラの言葉を遮って出てきたのはアハマだった。アハマは「やっぱりな」と小さく呟いた。
 「やっぱり?ですか・・」
 「おっと・・ん?なんでもないよ。」
 ククっと口を押さえて笑う。ツバキの部屋の前に立ってノックをする。
 「ツバキちゃん~。お兄ちゃんがいなくなった理由知りたくない?」
 そうアハマが呟いた瞬間思いっきり扉が開いた。
 「やっほ~。」
 「ツバキさん・・。」
 「話して!」
 「その前にやるべき事があるんじゃない?」




 何回も攻撃はあっていた。でも、まだ体力はある。
 「はぁ、はぁ、」
 息が上がる。それでも簡単に死を選ぶほどキクは落ちてはいなかった。まだ生きていたい。
 「氷狐ひょうこ・・」
 名前を呼ぶ。だが、これは詠唱じゃない。だから一瞬で来てくれない。
 「うがぁ!あっ。」
 違うことを考えて逃げるのに遅れた。右肩に攻撃をくらった。右肩から血が出ている。左手で押さえながら立ち上がる。
 「スキル発動:『身体強化+武器強化』体力を回復して、走る力と跳び力を強化。忘れてた・・無力過ぎて僕にスキルがあること・・」
 腕をタラっと下ろす。
 「スキル発動:『創作自由』僕に扱いやすい武器を」
 そう言うと手には一本の短剣が握られていた。
 「スキル発動:『身体強化+武器強化』武器の攻撃力と、素早さを強化。」
 ぶつぶつ呟く。バケモノの攻撃は今のところない。雰囲気が変わったことで警戒しているみたいだ。必要なものは全て手に入れたキクはバケモノを見る。さっきまでは、逃げることに忙しくて
 バケモノの姿はどこかデカさは恐竜で見た目はライオンと言ったほうがわかりやすい見た目をしている。
 「・・猫だったら可愛いのに・・」
 キクは剣を下に振るう。剣を使うのは初めてなのにとても手に馴染んでいる。
 「なんだか、調子がいい。」
 素振りを何回かする。
 「・・・・」
 バケモノを見る。次の瞬間、キクは走り出した。バケモノとは反対の方向に。
 「いや・・普通に無理。剣があっても僕には無理。」
 走りながら詠唱を言葉にする。
 「我、トアキ・キクの名の下我の召喚に応じろ。我の精霊氷狐。」






 「やるべきこと・・アハマさん・・いやアハマ!私にお兄ちゃんを守れるほどの力を頂戴!これが・・私のやるべき事そうでしょう?アハマ、サクラさん。」
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