妹を助けたら異世界転生。現実世界でもう二度と味わえない幸せな生活を異世界で

風都 蒼

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サクラからのご褒美

過去(2)

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 私は都倉とくら 椿つばき。家族は三人。父と兄。母は私が生まれてすぐに死んでしまった。でも、父も兄もすぐに死んでしまう。私一人がこの世界に残ってしまう。それは嫌だ。私は家族とずっと一緒にいたい。兄と、お父さんと一緒にいたいのに・・・・運命が許してくれない。
 「お兄ちゃんと一緒にいたい。ねぇ、お兄ちゃん、目を開けてよ!お願い・・・私を一人にしないで・・・」
 車に轢かれそうになった私を助けて兄は死んだ。私は何も出来なくてただ、倒れている兄の体を揺すっているだけ。「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と叫ぶ事しかできない。
 その時だった。どこからか声が聞こえた。
 「貴方は無事・・・・」
 声はハッキリとは聞こえない。でも私は願った。
 「お願いします。私もお兄ちゃんと一緒のところに連れて行ってッ。お願いします。」
 私は兄の体に頭を乗っける。小さく掠れた声で「お兄ぃちゃん・・」と呟いた。そのあとはあまり覚えていない。転生の番人と名乗る・・・今はサクラさんと言っていた、その人が私の目の前にいる。彼女は言う。
 「・・・私は禁忌を犯して貴方を連れて来ました。そのことを忘れないように・・・・十年!十年待っていて下さい。あっちの世界で十年。十年待っていなさい。そしたら、貴方のところに貴方が会いたい人を向かわせます。良いですね。」
 「・・・・十年・・・・十年待てば会えるのですね?」
 「そうです。貴方は、貴方で十年生きて下さい。あっちの世界では『殺し』は当たり前ですからね。人間なんか簡単に死んでしまいます。」
 サクラさんは厳しめな口調で言う。
 「・・・・では、貴方のご武運を祈っています。ツバキさん。」
 お兄ちゃんが誰になるのかは聞かされていない。だから、あの時の私が暮らしている小屋に捕まっている男の子がお兄ちゃんだとは思わなかった。サクラさんの弟だと思っていた。サクラさんとは何回も交流があった。一ヶ月に一回は心配で見に来てくれていた。詳しく聞いていないがお兄ちゃんは十年経つまでの間眠っているらしい。その間は別人格がお兄ちゃんの代わりをしているみたい・・・・よく分からないけど・・お兄ちゃんにとって十年はあっという間って言うことらしい。
 私はお兄ちゃんに会うのが今か今かととても楽しみだった。一日、一日をお兄ちゃんにあった時褒められるように努力した。魔法も使えるようにし、武術、剣術同様に稽古に励んだ。
 「ツバキさん。なんだか嬉しそうですね。」
 「え、顔に出てる?」
 「えぇ、分かりやすいですね。」
 「えへへ、今日はね。元の世界のお兄ちゃんの誕生日。元の世界ではお兄ちゃんにプレゼント出来なかったからお兄ちゃんに会えたらあげるんだ!」
 「なるほどですね。早く十年後が来ると良いですね。」
 「サクラさん、お兄ちゃんはまだ眠っているの?」
 「・・・今はそうですね。ただ昨日、一瞬だけ起きましたよ。ですがすぐに寝てしまいました。」
 「・・・・そっか。」
 サクラさんをチラッと見た。どこを見ているのか分からない目をしていた。見られているのに気がついたのかサクラさんは私を見てニコッと微笑んだ。
 
 この時はまだあんなことになるとは思っていなかった。お兄ちゃんが私を拒絶するなんって・・・・・

 お兄ちゃんが抱いている思いに気づけなかった。
 どうしてお父さんはお兄ちゃんに暴力を振るって私には振るわなかったのか
 どうしてお母さんはお兄ちゃんを置いて・・・じ、自殺してしまったのか

 どうしてお兄ちゃんに暴力振るった後お父さんは悲しそうな顔をしていたのだろうか
 お父さんは私に何をして欲しかったの?お父さんはいつも私に言う
 『椿・・・俺はダメなんだ。泉華を、泉華を見るとあの時の光景が・・・俺を見ているように思えてしまう。あの時の俺を・・・・親父に暴力を振るわれていた俺自身を見ている気がしてしまう。・・・・椿・・・泉華をお兄ちゃんを守ってやって・・・・お願いだ。』
 まだ、小さかった私はこの意味をよくは理解していなかった。
 お父さんは私の腕を握って、叫ぶように言う。
 
 夜、お兄ちゃんが寝ている時、お父さんはお兄ちゃんの頭を撫でながら泣いていた「ごめん、ごめんな」って言いながら・・・・・


 お兄ちゃん・・・・そんなこと言わないで・・・私はお兄ちゃんと一緒にいたいだけなんだよ。私はお兄ちゃんしかいらない。お兄ちゃん、私の前からいなくならないでよ・・・・
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