8 / 35
サクラからのご褒美
過去(2)
しおりを挟む
私は都倉 椿。家族は三人。父と兄。母は私が生まれてすぐに死んでしまった。でも、父も兄もすぐに死んでしまう。私一人がこの世界に残ってしまう。それは嫌だ。私は家族とずっと一緒にいたい。兄と、お父さんと一緒にいたいのに・・・・運命が許してくれない。
「お兄ちゃんと一緒にいたい。ねぇ、お兄ちゃん、目を開けてよ!お願い・・・私を一人にしないで・・・」
車に轢かれそうになった私を助けて兄は死んだ。私は何も出来なくてただ、倒れている兄の体を揺すっているだけ。「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と叫ぶ事しかできない。
その時だった。どこからか声が聞こえた。
「貴方は無事・・・・」
声はハッキリとは聞こえない。でも私は願った。
「お願いします。私もお兄ちゃんと一緒のところに連れて行ってッ。お願いします。」
私は兄の体に頭を乗っける。小さく掠れた声で「お兄ぃちゃん・・」と呟いた。そのあとはあまり覚えていない。転生の番人と名乗る・・・今はサクラさんと言っていた、その人が私の目の前にいる。彼女は言う。
「・・・私は禁忌を犯して貴方を連れて来ました。そのことを忘れないように・・・・十年!十年待っていて下さい。あっちの世界で十年。十年待っていなさい。そしたら、貴方のところに貴方が会いたい人を向かわせます。良いですね。」
「・・・・十年・・・・十年待てば会えるのですね?」
「そうです。貴方は、貴方で十年生きて下さい。あっちの世界では『殺し』は当たり前ですからね。人間なんか簡単に死んでしまいます。」
サクラさんは厳しめな口調で言う。
「・・・・では、貴方のご武運を祈っています。ツバキさん。」
お兄ちゃんが誰になるのかは聞かされていない。だから、あの時の私が暮らしている小屋に捕まっている男の子がお兄ちゃんだとは思わなかった。サクラさんの弟だと思っていた。サクラさんとは何回も交流があった。一ヶ月に一回は心配で見に来てくれていた。詳しく聞いていないがお兄ちゃんは十年経つまでの間眠っているらしい。その間は別人格がお兄ちゃんの代わりをしているみたい・・・・よく分からないけど・・お兄ちゃんにとって十年はあっという間って言うことらしい。
私はお兄ちゃんに会うのが今か今かととても楽しみだった。一日、一日をお兄ちゃんにあった時褒められるように努力した。魔法も使えるようにし、武術、剣術同様に稽古に励んだ。
「ツバキさん。なんだか嬉しそうですね。」
「え、顔に出てる?」
「えぇ、分かりやすいですね。」
「えへへ、今日はね。元の世界のお兄ちゃんの誕生日。元の世界ではお兄ちゃんにプレゼント出来なかったからお兄ちゃんに会えたらあげるんだ!」
「なるほどですね。早く十年後が来ると良いですね。」
「サクラさん、お兄ちゃんはまだ眠っているの?」
「・・・今はそうですね。ただ昨日、一瞬だけ起きましたよ。ですがすぐに寝てしまいました。」
「・・・・そっか。」
サクラさんをチラッと見た。どこを見ているのか分からない目をしていた。見られているのに気がついたのかサクラさんは私を見てニコッと微笑んだ。
この時はまだあんなことになるとは思っていなかった。お兄ちゃんが私を拒絶するなんって・・・・・
お兄ちゃんが抱いている思いに気づけなかった。
どうしてお父さんはお兄ちゃんに暴力を振るって私には振るわなかったのか
どうしてお母さんはお兄ちゃんを置いて・・・じ、自殺してしまったのか
どうしてお兄ちゃんに暴力振るった後お父さんは悲しそうな顔をしていたのだろうか
お父さんは私に何をして欲しかったの?お父さんはいつも私に言う
『椿・・・俺はダメなんだ。泉華を、泉華を見るとあの時の光景が・・・俺を見ているように思えてしまう。あの時の俺を・・・・親父に暴力を振るわれていた俺自身を見ている気がしてしまう。・・・・椿・・・泉華をお兄ちゃんを守ってやって・・・・お願いだ。』
まだ、小さかった私はこの意味をよくは理解していなかった。
お父さんは私の腕を握って、叫ぶように言う。
夜、お兄ちゃんが寝ている時、お父さんはお兄ちゃんの頭を撫でながら泣いていた「ごめん、ごめんな」って言いながら・・・・・
お兄ちゃん・・・・そんなこと言わないで・・・私はお兄ちゃんと一緒にいたいだけなんだよ。私はお兄ちゃんしかいらない。お兄ちゃん、私の前からいなくならないでよ・・・・
「お兄ちゃんと一緒にいたい。ねぇ、お兄ちゃん、目を開けてよ!お願い・・・私を一人にしないで・・・」
車に轢かれそうになった私を助けて兄は死んだ。私は何も出来なくてただ、倒れている兄の体を揺すっているだけ。「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と叫ぶ事しかできない。
その時だった。どこからか声が聞こえた。
「貴方は無事・・・・」
声はハッキリとは聞こえない。でも私は願った。
「お願いします。私もお兄ちゃんと一緒のところに連れて行ってッ。お願いします。」
私は兄の体に頭を乗っける。小さく掠れた声で「お兄ぃちゃん・・」と呟いた。そのあとはあまり覚えていない。転生の番人と名乗る・・・今はサクラさんと言っていた、その人が私の目の前にいる。彼女は言う。
「・・・私は禁忌を犯して貴方を連れて来ました。そのことを忘れないように・・・・十年!十年待っていて下さい。あっちの世界で十年。十年待っていなさい。そしたら、貴方のところに貴方が会いたい人を向かわせます。良いですね。」
「・・・・十年・・・・十年待てば会えるのですね?」
「そうです。貴方は、貴方で十年生きて下さい。あっちの世界では『殺し』は当たり前ですからね。人間なんか簡単に死んでしまいます。」
サクラさんは厳しめな口調で言う。
「・・・・では、貴方のご武運を祈っています。ツバキさん。」
お兄ちゃんが誰になるのかは聞かされていない。だから、あの時の私が暮らしている小屋に捕まっている男の子がお兄ちゃんだとは思わなかった。サクラさんの弟だと思っていた。サクラさんとは何回も交流があった。一ヶ月に一回は心配で見に来てくれていた。詳しく聞いていないがお兄ちゃんは十年経つまでの間眠っているらしい。その間は別人格がお兄ちゃんの代わりをしているみたい・・・・よく分からないけど・・お兄ちゃんにとって十年はあっという間って言うことらしい。
私はお兄ちゃんに会うのが今か今かととても楽しみだった。一日、一日をお兄ちゃんにあった時褒められるように努力した。魔法も使えるようにし、武術、剣術同様に稽古に励んだ。
「ツバキさん。なんだか嬉しそうですね。」
「え、顔に出てる?」
「えぇ、分かりやすいですね。」
「えへへ、今日はね。元の世界のお兄ちゃんの誕生日。元の世界ではお兄ちゃんにプレゼント出来なかったからお兄ちゃんに会えたらあげるんだ!」
「なるほどですね。早く十年後が来ると良いですね。」
「サクラさん、お兄ちゃんはまだ眠っているの?」
「・・・今はそうですね。ただ昨日、一瞬だけ起きましたよ。ですがすぐに寝てしまいました。」
「・・・・そっか。」
サクラさんをチラッと見た。どこを見ているのか分からない目をしていた。見られているのに気がついたのかサクラさんは私を見てニコッと微笑んだ。
この時はまだあんなことになるとは思っていなかった。お兄ちゃんが私を拒絶するなんって・・・・・
お兄ちゃんが抱いている思いに気づけなかった。
どうしてお父さんはお兄ちゃんに暴力を振るって私には振るわなかったのか
どうしてお母さんはお兄ちゃんを置いて・・・じ、自殺してしまったのか
どうしてお兄ちゃんに暴力振るった後お父さんは悲しそうな顔をしていたのだろうか
お父さんは私に何をして欲しかったの?お父さんはいつも私に言う
『椿・・・俺はダメなんだ。泉華を、泉華を見るとあの時の光景が・・・俺を見ているように思えてしまう。あの時の俺を・・・・親父に暴力を振るわれていた俺自身を見ている気がしてしまう。・・・・椿・・・泉華をお兄ちゃんを守ってやって・・・・お願いだ。』
まだ、小さかった私はこの意味をよくは理解していなかった。
お父さんは私の腕を握って、叫ぶように言う。
夜、お兄ちゃんが寝ている時、お父さんはお兄ちゃんの頭を撫でながら泣いていた「ごめん、ごめんな」って言いながら・・・・・
お兄ちゃん・・・・そんなこと言わないで・・・私はお兄ちゃんと一緒にいたいだけなんだよ。私はお兄ちゃんしかいらない。お兄ちゃん、私の前からいなくならないでよ・・・・
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。


隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
転生したらチートでした
ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシャリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる