49 / 61
十六・準の目的
準の目的(3)
しおりを挟む
「おれは、妹を探しにこのゲームに参加した。一か八かの賭けだった。昨日まであちこちを探ったが、手がかりはなかった。まさかこんなところに、あいつの名前があるなんて」
見つけた喜びか、それとも悲しんでいるのか。声が震えているのがわかった。
「このパソコンには、過去の参加者が後の人に向けてアドバイスを残しているみたいです。昨日まで、一日ずつしか見られない言葉が出ていた」
まるで、わたしたちのことを心配するみたいに。
「そこに、他に円(まどか)に関することは出ていたか?」
「わからない。でも気になっている言葉があって。”ルール通りに勝ち残ってはいけない。それは悲劇の始まり”だと」
「勝ち残るな、と?」
「ええ。だから優勝しても、望みはかなわないかもしれない」
「それで、ゲームを壊すことを提案したのか?」
「そう。このままでは、だれが勝っても悲劇が起こる」わたしは息を詰めて言った。
「……あのホログラムの円(えん)は、おれの妹の円(まどか)なのか?」
自分を”ぼく”と名乗っていたし、声も女の子のものではなかった。姿だって一見かわいらしいぬいぐるみ。でも、元々がホログラムなのだ。いくらでも変えられる。
このパソコンの内容が正しいとして、準の話をさらに総合すると……。
「そう、かも。妹さんは、優勝したのに帰れずに今もマスターをやらされている」
ルール通りに勝ち残っても、マスターにされて帰れない。
それが隠された真実なのか。
わたしたちは、帰りたいがために相手の答えを当てるのに、必死だったのに。
「準。円がわたしに言っていた。あなたが人の答えを当てられるのは、答えのリストを持っているからだって。本当?」
「リスト?何の話だ?」目をまん丸にして、食い入るようにわたしを見た。
「円が、そう言っていた。でも、わたしはそう思えない」
「持っているわけがない。そんなことを、やつが言ってたのか?」
「そう。やっぱりそうだったの」まただまされそうになった。
桜(さくら)たちのことを思い出すとまた泣きそうになる。
「準。図書館にいた人たちは、円がわざと答えのリストを落として島田圭吾(しまだ・けいご)に拾わせたの。それでみんな消されてしまった」
「……そんなことがあったのか?円が、そんなひどいことを」
準は少し、感情の高ぶりが過ぎて見えた。無理もない。
「気を悪くしたらごめんなさい。準はマスターの円のこと、妹さんだと思っているのにね」
「いや。すまん。まだそうかは決まってないのに」
だけど、マスターは円さんそのものではない気はする。
むしろ、催眠をかけられて自分をマスターだと信じ込んでいる口調だ。円を操っている別のだれかがいるなら、ひどいことをするものだ。
「おれがここへ来たのは、円を連れ戻すためだ。勝つことなんてどうでもいい」
「それなら円さんも一緒に、みんなで帰れる方法を考えては?あと一日のうちに」
円が、元は参加者の一人だったと言うなら。自分を思い出すようにできないだろうか?
図書館から出て準とは別れた。
時間は残り少ない。早く考えなくてはいけない。この先どうすればいいかを。
見つけた喜びか、それとも悲しんでいるのか。声が震えているのがわかった。
「このパソコンには、過去の参加者が後の人に向けてアドバイスを残しているみたいです。昨日まで、一日ずつしか見られない言葉が出ていた」
まるで、わたしたちのことを心配するみたいに。
「そこに、他に円(まどか)に関することは出ていたか?」
「わからない。でも気になっている言葉があって。”ルール通りに勝ち残ってはいけない。それは悲劇の始まり”だと」
「勝ち残るな、と?」
「ええ。だから優勝しても、望みはかなわないかもしれない」
「それで、ゲームを壊すことを提案したのか?」
「そう。このままでは、だれが勝っても悲劇が起こる」わたしは息を詰めて言った。
「……あのホログラムの円(えん)は、おれの妹の円(まどか)なのか?」
自分を”ぼく”と名乗っていたし、声も女の子のものではなかった。姿だって一見かわいらしいぬいぐるみ。でも、元々がホログラムなのだ。いくらでも変えられる。
このパソコンの内容が正しいとして、準の話をさらに総合すると……。
「そう、かも。妹さんは、優勝したのに帰れずに今もマスターをやらされている」
ルール通りに勝ち残っても、マスターにされて帰れない。
それが隠された真実なのか。
わたしたちは、帰りたいがために相手の答えを当てるのに、必死だったのに。
「準。円がわたしに言っていた。あなたが人の答えを当てられるのは、答えのリストを持っているからだって。本当?」
「リスト?何の話だ?」目をまん丸にして、食い入るようにわたしを見た。
「円が、そう言っていた。でも、わたしはそう思えない」
「持っているわけがない。そんなことを、やつが言ってたのか?」
「そう。やっぱりそうだったの」まただまされそうになった。
桜(さくら)たちのことを思い出すとまた泣きそうになる。
「準。図書館にいた人たちは、円がわざと答えのリストを落として島田圭吾(しまだ・けいご)に拾わせたの。それでみんな消されてしまった」
「……そんなことがあったのか?円が、そんなひどいことを」
準は少し、感情の高ぶりが過ぎて見えた。無理もない。
「気を悪くしたらごめんなさい。準はマスターの円のこと、妹さんだと思っているのにね」
「いや。すまん。まだそうかは決まってないのに」
だけど、マスターは円さんそのものではない気はする。
むしろ、催眠をかけられて自分をマスターだと信じ込んでいる口調だ。円を操っている別のだれかがいるなら、ひどいことをするものだ。
「おれがここへ来たのは、円を連れ戻すためだ。勝つことなんてどうでもいい」
「それなら円さんも一緒に、みんなで帰れる方法を考えては?あと一日のうちに」
円が、元は参加者の一人だったと言うなら。自分を思い出すようにできないだろうか?
図書館から出て準とは別れた。
時間は残り少ない。早く考えなくてはいけない。この先どうすればいいかを。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
オタわん〜オタクがわんこ系イケメンの恋愛レッスンをすることになりました〜
石丸明
児童書・童話
豊富な恋愛知識をもち、友人からアネゴと呼ばれる主人公、宮瀬恭子(みやせきょうこ)。けれどその知識は大好きな少女漫画から仕入れたもので、自身の恋愛経験はゼロ。
中二で同じクラスになった、みんなのアイドル的存在である安達唯斗(あだちゆいと)から、好きな人と仲良くなるための「恋愛レッスン」をして欲しいと頼まれ、断りきれず引き受ける。
唯斗はコミュニケーション能力が高く、また気遣いもできるため、恭子に教えられることは特になかった。それでも練習として一緒に下校などするうちに、二人は仲を深めていった。
恭子は、あどけない唯斗のことを「弟みたい」だと感じ、惹かれていくが……。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
カラダラッパー!
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
過去の経験から目立たないように生きていくことにした主人公・月野翔太のクラスに『カラダラッパー』を初手で名乗る・朝倉アタルという転校生がやって来た。
あんなヤツにはなりたくないと思いながらアタルのことを見ていた翔太だが、ひょんなことからアタルに「どこに何の教室があるか紹介してほしい」と頼まれて、まあ別にいいかと思い、学校の紹介をすることに。
そこで翔太のリアクションから察し、翔太が曲作りをしていることをアタルが言い当てる。
アタルはなんとか頼み込んで、曲を聞かせてもらい、アタルは「カラダラッパーのDJになって」と懇願する。
そこで翔太が過去に歌のコンテストで恥をかいて、目立つことをしたくなくなったと言う。
しかしアタルはめげず説得すると、クラスメイトたちには秘密で一緒に活動することに。
その付喪神、鑑定します!
陽炎氷柱
児童書・童話
『彼女の”みる目”に間違いはない』
七瀬雪乃は、骨董品が大好きな女の子。でも、生まれたときから”物”に宿る付喪神の存在を見ることができたせいで、小学校ではいじめられていた。付喪神は大好きだけど、普通の友達も欲しい雪乃は遠い私立中学校に入ることに。
今度こそ普通に生活をしようと決めたのに、入学目前でトラブルに巻き込まれて”力”を使ってしまった。しかもよりによって助けた男の子たちが御曹司で学校の有名人!
普通の生活を送りたい雪乃はこれ以上関わりたくなかったのに、彼らに学校で呼び出されてしまう。
「俺たちが信頼できるのは君しかいない」って、私の”力”で大切な物を探すの!?
魔法探偵の助手。
雪月海桜
児童書・童話
小日向みゆり、小学六年生。
友達の姫乃ちゃんみたく美人でもないし、委員長の若菜ちゃんみたく優等生でもない。勉強が苦手で、でも学校は好き。そんなどこにでも居る、普通の子。
これはそんなわたしが、ある魔法使いと出会って、『恋』と『魔法』を知った、あの特別な夏の日々の話。
☆表紙イラスト…神名雨様より。
猫のバブーシュカ~しましましっぽ彗星の夜に~
catpaw
児童書・童話
猫の女の子バブーシュカは自然豊かなセント・ポピー村にあるタンジェリン夫妻の家で幸せに暮らしていました。しかしある事から、自分は夫妻にもう必要とされてないのだと思い、家出を決意します。家に閉じ込められたバブーシュカは彗星に願いをかけて家から飛び出しましたが、思わぬ世界へと迷い込みます。服を着て後ろ足で立って歩き、まるで人間のように暮らす猫たち。人間は見当たりません。王族・貴族・平民。猫が身分階級を持つ社会に突然放り込まれ、『おまえは何者だ』と問われるバブーシュカ。--バブーシュカの波乱に満ちた物語が始まります。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる