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十六・準の目的

準の目的(3)

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「おれは、妹を探しにこのゲームに参加さんかした。一か八かのけだった。昨日まであちこちを探ったが、手がかりはなかった。まさかこんなところに、あいつの名前があるなんて」
 見つけたよろこびか、それとも悲しんでいるのか。声がふるえているのがわかった。

「このパソコンには、過去かこ参加者さんかしゃが後の人に向けてアドバイスをのこしているみたいです。昨日きのうまで、一日ずつしか見られない言葉が出ていた」
 まるで、わたしたちのことを心配しんぱいするみたいに。
「そこに、他に円(まどか)に関することは出ていたか?」
「わからない。でも気になっている言葉ことばがあって。”ルール通りに勝ち残ってはいけない。それは悲劇ひげきの始まり”だと」
「勝ち残るな、と?」
「ええ。だから優勝ゆうしょうしても、のぞみはかなわないかもしれない」
「それで、ゲームをこわすことを提案ていあんしたのか?」
「そう。このままでは、だれが勝っても悲劇が起こる」わたしは息をめて言った。 

「……あのホログラムの円(えん)は、おれの妹の円(まどか)なのか?」
 自分を”ぼく”と名乗なのっていたし、声も女の子のものではなかった。姿すがただって一見いっけんかわいらしいぬいぐるみ。でも、元々もともとがホログラムなのだ。いくらでも変えられる。
 このパソコンの内容ないようが正しいとして、準の話をさらに総合そうごうすると……。
「そう、かも。妹さんは、優勝ゆうしょうしたのに帰れずに今もマスターをやらされている」 
 ルール通りに勝ち残っても、マスターにされて帰れない。
 それがかくされた真実しんじつなのか。
 わたしたちは、帰りたいがために相手の答えを当てるのに、必死ひっしだったのに。

「準。円がわたしに言っていた。あなたが人の答えを当てられるのは、答えのリストを持っているからだって。本当?」
「リスト?何の話だ?」目をまん丸にして、食い入るようにわたしを見た。
「円が、そう言っていた。でも、わたしはそう思えない」
「持っているわけがない。そんなことを、やつが言ってたのか?」
「そう。やっぱりそうだったの」まただまされそうになった。

 桜(さくら)たちのことを思い出すとまた泣きそうになる。
「準。図書館としょかんにいた人たちは、円がわざと答えのリストを落として島田圭吾(しまだ・けいご)にひろわせたの。それでみんな消されてしまった」
「……そんなことがあったのか?円が、そんなひどいことを」
 準は少し、感情かんじょうの高ぶりがぎて見えた。無理むりもない。
「気を悪くしたらごめんなさい。準はマスターの円のこと、妹さんだと思っているのにね」
「いや。すまん。まだそうかは決まってないのに」
 だけど、マスターは円さんそのものではない気はする。
 むしろ、催眠さいみんをかけられて自分をマスターだと信じ込んでいる口調くちょうだ。円をあやつっている別のだれかがいるなら、ひどいことをするものだ。

「おれがここへ来たのは、円をもどすためだ。勝つことなんてどうでもいい」
「それなら円さんも一緒いっしょに、みんなで帰れる方法を考えては?あと一日のうちに」
 円が、元は参加者さんかしゃの一人だったと言うなら。自分を思い出すようにできないだろうか?

 図書館から出て準とは別れた。
 時間は残り少ない。早く考えなくてはいけない。この先どうすればいいかを。
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