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十五・みんないなくなった
みんないなくなった(1)
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繭の中で、恩田桜(おんだ・さくら)はわたしの答えを当てる気はなく……ただ、わたしに答えさせた。わたしはそれでも、わざとちがう答えを言って外すべきか最後まで迷った。
こんなやり方で、自分の勝ちにするなんてできない。どうするのが先輩のためなのか、わからないでいた。
なのに……迷いながら、結局わたしは先輩の答えをバトルで得た。
わたしは、もう十分人の道を外れている。
だって、島田圭吾(しまだ・けいご)の分を含めこんなに点数を集めてしまったんだから。
恩田桜の消えた後、地面の血も消えた。
図書館で集まった仲間をすべてなくし、その原因になった島田圭吾をも食って。
わたしは、それでもこのゲームを続けなければならないのか。
ぱたぱたと、だれかが駆けてきた。
でも、わたしは座りこんだまま動けない。
「あれ?遠野(とおの)さん。探してたんだよー?」
わたしの前にしゃがんで、のぞきこんできたのは宮内紗英(みやうち・さえ)だった。
「遠野さん?ねえ、大丈夫?何かあったの?」
「……宮、内さん」
人なつこい目を見て、知らずのうちに涙がぼろぼろ出た。
「えっ?大丈夫?ねえ、遠野さん?ねえ!」
背中をさすられて、桜のことを思い出す。
あの温かな手も、励ましてくれた声ももうない。
わたしがバトルで、消してしまったから。いくら頼まれたとは言っても、実行したのはわたし。もしケガで消えたとしても、手当をしたかった。本当は、一緒にいてほしかった。わたしを置いていなくならないでほしかった、のに。
涙がほおに流れていることに気づく。
何やってるの。わたしは泣く権利なんて、ない。先輩の答えを結局は奪った。
準(じゅん)は?準はどうしているだろう。
もし今、準の顔を見たら泣き崩れてしまう。
”あいつがあんなに勝てているのも、リストをあげたからだよ”
円の意地悪な声がよみがえる。そんなのきっとでたらめだ。
円がわたしたちをはめるための、ウソ。
準は、もっといろんなことを考えて動いているはずだ。
黒情報でみんなをかき回す、円のことばを信じてはいけないんだ。そう思うのに。
「ねえ遠野さん?しっかりして。何か辛いことがあったの?良かったら話して?」
答える気力はなかった。でも背中をなでられていると、妙に安心した。
教室に戻ると、中はがらんとしていた。わたしはぼうぜんと部屋を見回す。
「他の人はどこに?」
「みんな、いなくなった。残っているのは、ここにいる三人だけ」
そう言って、わたしに近づいてきた加川準(かがわ・じゅん)。
「そ、そんな」
「昼食の後に、また表が更新された。見てないか?」
「……はい」
こんなやり方で、自分の勝ちにするなんてできない。どうするのが先輩のためなのか、わからないでいた。
なのに……迷いながら、結局わたしは先輩の答えをバトルで得た。
わたしは、もう十分人の道を外れている。
だって、島田圭吾(しまだ・けいご)の分を含めこんなに点数を集めてしまったんだから。
恩田桜の消えた後、地面の血も消えた。
図書館で集まった仲間をすべてなくし、その原因になった島田圭吾をも食って。
わたしは、それでもこのゲームを続けなければならないのか。
ぱたぱたと、だれかが駆けてきた。
でも、わたしは座りこんだまま動けない。
「あれ?遠野(とおの)さん。探してたんだよー?」
わたしの前にしゃがんで、のぞきこんできたのは宮内紗英(みやうち・さえ)だった。
「遠野さん?ねえ、大丈夫?何かあったの?」
「……宮、内さん」
人なつこい目を見て、知らずのうちに涙がぼろぼろ出た。
「えっ?大丈夫?ねえ、遠野さん?ねえ!」
背中をさすられて、桜のことを思い出す。
あの温かな手も、励ましてくれた声ももうない。
わたしがバトルで、消してしまったから。いくら頼まれたとは言っても、実行したのはわたし。もしケガで消えたとしても、手当をしたかった。本当は、一緒にいてほしかった。わたしを置いていなくならないでほしかった、のに。
涙がほおに流れていることに気づく。
何やってるの。わたしは泣く権利なんて、ない。先輩の答えを結局は奪った。
準(じゅん)は?準はどうしているだろう。
もし今、準の顔を見たら泣き崩れてしまう。
”あいつがあんなに勝てているのも、リストをあげたからだよ”
円の意地悪な声がよみがえる。そんなのきっとでたらめだ。
円がわたしたちをはめるための、ウソ。
準は、もっといろんなことを考えて動いているはずだ。
黒情報でみんなをかき回す、円のことばを信じてはいけないんだ。そう思うのに。
「ねえ遠野さん?しっかりして。何か辛いことがあったの?良かったら話して?」
答える気力はなかった。でも背中をなでられていると、妙に安心した。
教室に戻ると、中はがらんとしていた。わたしはぼうぜんと部屋を見回す。
「他の人はどこに?」
「みんな、いなくなった。残っているのは、ここにいる三人だけ」
そう言って、わたしに近づいてきた加川準(かがわ・じゅん)。
「そ、そんな」
「昼食の後に、また表が更新された。見てないか?」
「……はい」
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