【完結】知られてはいけない

八・告白はこわい

告白はこわい（2）

　
　べたべたしてる場合ばあい？わたしは二人にあきれて、腹はらが立ってきた。
　こんなところで恋愛れんあいとか！……いや、恋愛じたいは自由じゆうなんだけど。
　ここで、この場所でやること？？

　ライアンは、キラキラな笑顔えがおでまなみを見つめた。
「……ふうん、じゃあきみにとって大切なものって何？」
「何、知りたいの？ふふん。そう簡単には、教えなーい！」
「そんなこと言うなって」
　ぱっとはなれる木野まなみを、追いかける。
　二人とも、じゃれ合ってるみたいでほんとに楽しそう。
　すっかりラブラブじゃん。何これ？
　こっちは元の世界に帰るために真剣しんけんに行動してるのに、楽しく色恋いろこいざたですか！
　
　ふと、わたしの中に気づきが起こる。
　相手に明らかな危害きがいを加えずに、答えを知るとするなら。
　だれかを好きにさせることでだってできる。例えば、見かけのよいライアンなら。

　その瞬間しゅんかん、目の前で信じられないことが起きた。
　ライアンが、木野まなみに向け手をかざしたのだ。
「な、何よ？」
「わかったんだ。きみの答えがね」きれいな顔立ちが、いびつにゆがむ。
「や、やめてよ！ちょっ、と……何する気？」
「バトル！」
　ライアンの声とともに、白い糸のようなものがざあっと空中から沸いた。

　糸はぐるぐると、ライアンとまなみを取り巻きだした。
　あっと言う間に重なりは次々、増えていく。
　二人を巨大な繭まゆのように囲かこんで、わたしからは見えなくなった。

「何？どういうこと？？」
　わたしには、わからなかった。わからないなりに、この目で見て体験した。
　これが、バトルによって周りから見えなくなる。結界けっかいなのだと。　

「だれかあ！だれか、来て！」
　わたしは辺りに向けて叫さけぶ。でも、だれも来ない。
　落ち着いてたつもりが、ショックのあまり、かべに倒たおれ込むようにもたれた。
　結界の中で今、ライアンが木野まなみを攻撃こうげきしている。
　その様子ようすは外側そとがわのわたしにはわからない。でも、もしライアンが成功せいこうすれば、木野まなみは消える。

　足音を立てて、だれか階段かいだんを駆かけ上がってくる。
　わたしは音の方へ駆けよった。だれでもいい。この繭まゆの中のことを止めてほしい。
　恋愛なんてしてる場合か！と、わたしは怒った。
　でも、それが恋愛じゃなくバトルをするためだった、って方が何十倍もいやだ。
　吐はき気けがする。そしてとても悲しい。