【完結】知られてはいけない

ひなこ

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十一・紙切れの主はだれ?

紙切れの主はだれ?(1)

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 朝になった。
 夜中に考えすぎて、やはりあんまりねむれなかった。

 図書館での予言よげん、”マスターはルールを追加ついかする”は、結局当たっていたのだ。
 それも、日ごとにめられる方向へ。
 昨日わかった新しい、いやなこと。それは、一番点数が高い人がよりねらわれるってこと。
 下克上げこくじょう、と言ってた人がいた。
 準(じゅん)は、紗英(さえ)を助けるためにバトルしたのに。
 自分が勝つためじゃないのに。

 わたしたちは何となく気づいている。白情報しろじょうほう黒情報くろじょうほうが何をしているのかを。
 もちろん、パソコンを完全かんぜんに信じるのもまだ危険きけんだとは思ってる。
 白情報とはパソコンがげる内容だろう。そして黒情報とは、円が言う本当ほんとうかどうかわからない内容ないよう
 円のお気に入りがいる、とか……そんな話もだれかしていた。
 他の子たちから流れてくるうわさ。それは一体どっちなんだろう。

 朝ミーティング後。
 わたしは図書館へ入ると、パソコンの部屋に向かった。
 恩田桜(おんだ・さくら)と、今日は中村えりもそばにいた。
「おはよう。今日のお告げは何?」とわたしはきいた。
「うん、その前に……これを見て」桜が差し出したのは、別の紙切かみきれ。
「中村さんが見つけたの。本当はもっとあちこちをさがせば出てくるのかもしれないわ」

 ”わたしは過去かこ参加者さんかしゃ。これを見ているあらたなプレイヤーへ。ルール通りに勝ちのこってはいけない。それは悲劇ひげきの始まり。”
 
 前の紙切れともちがう字。だから、別のだれかが書いたのだろう。
「悲劇の始まり、って?今だって十分悲劇だよ」
 わたしはつい、ひとりごちた。
「この文章、どういう意味かしら?」
 他の人たちはどうしたのだろう……と、入り口の方を見る。
「ああ、一応何か他にも見つからないか、書庫しょこを探してるわ」
「パソコンの方は?」
 画面を見ると、今日も一行”新参者しんざんものには気をつけること”。
「何?新参者って」
 ここにいるのは、一日目に集まった人たちだけ。そして協定きょうていを結んでいる。
 お互いの答えを探らない。共に助け合うと。
「だれかが入ってくる、ってこと?」中村えりが口を開く。
「昨日名簿めいぼ更新こうしんされたよね。何人かがけて消えて、点数持てんすうもちの人も出てきて。そろそろ新しい動きを始める人がいても不思議ふしぎじゃない」桜が答えた。
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