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十・勝つのはどっちか?
勝つのはどっちか?(1)
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ピンポンパンポーン。
構内放送がかかる。あと十分で九時だから、集まれという合図だ。
でも、準(じゅん)たちをこのままにしておけない。
わたしと紗英(さえ)が原因で、二人がバトルを始めてしまったんだから。
「あの。加川(かがわ)さんを信じたいのはわかるんですけど」と、紗英。
「あなたも一年でしょう?タメでいいよ」
「じゃあそうする。万一あいつが勝った場合を考えたら、わたしたちここにいない方がいいと思う。だって遠野(とおの)さんはともかく、わたしは間違いなくまた狙われる」
「そう、か」後のことも考えないといけないのか。
わたしは、準が勝つと信じたかった。そうじゃないとわたしはいやだから。
「あなたが加川さんを信じたいのならごめん。でもわたしは、あの人のことをよく知らないから」
紗英も紗英なりに不安なんだ。さっき、一紀(かずき)に襲われたから。
「……わかった。じゃあ、少し離れたところにいよう。だったらいい?」
「うん。わたしも、加川さんに会えるなら助けてもらったお礼を言いたい」
わたしたちは、別の階に移動してそこで待った。
階段を降りた踊り場に鏡があって、通る人の姿が映る。下からのぞいてもし残ったのが一紀(かずき)だったら、走って逃げればいい。
正直、そんな結果は考えたくないんだけど。
大丈夫、準はきっと勝つはず。わたしたちを助けに、今戦ってるはずなんだから。
妙な安心感がわたしの心に沸いた。本当におかしい。こんなバトルにさらされていれば、おかしくもなる。うん!
もう少しで九時だ。でもミーティングには行けない。
準を見守らなくては。
階段の上で、ぱあっとまばゆい光が現れた。
戦いが終わったのだ。十秒くらい沈黙があって、足音がし始めた。
「どっちだろう?加川さん?それとも……」
紗英と二人で、こわごわと階段の鏡をのぞく。降りてきたのは……!
「加川さんだ!」
準の姿をみたとたん、涙があふれた。
「良かった!良かったね!」二人でがしっと抱き合った。
準は手すりを伝って、少しふらつきながら降りてきた。
「加川さん。あの……」
わたしが呼びかけると、わずかにほほえんだ。
「勝ったんですよね?あの、三村一紀(みむら・かずき)に!」
「……ああ。そうらしい」
目を伏せて大きなため息をついた。
「バトルというのは、ひどいもんだな。あまりにも簡単に人が消える。最初からいなかったみたいに」
「ごめんなさい!わたしが、わたしのせいで」
思わずわたしはそう言った。
構内放送がかかる。あと十分で九時だから、集まれという合図だ。
でも、準(じゅん)たちをこのままにしておけない。
わたしと紗英(さえ)が原因で、二人がバトルを始めてしまったんだから。
「あの。加川(かがわ)さんを信じたいのはわかるんですけど」と、紗英。
「あなたも一年でしょう?タメでいいよ」
「じゃあそうする。万一あいつが勝った場合を考えたら、わたしたちここにいない方がいいと思う。だって遠野(とおの)さんはともかく、わたしは間違いなくまた狙われる」
「そう、か」後のことも考えないといけないのか。
わたしは、準が勝つと信じたかった。そうじゃないとわたしはいやだから。
「あなたが加川さんを信じたいのならごめん。でもわたしは、あの人のことをよく知らないから」
紗英も紗英なりに不安なんだ。さっき、一紀(かずき)に襲われたから。
「……わかった。じゃあ、少し離れたところにいよう。だったらいい?」
「うん。わたしも、加川さんに会えるなら助けてもらったお礼を言いたい」
わたしたちは、別の階に移動してそこで待った。
階段を降りた踊り場に鏡があって、通る人の姿が映る。下からのぞいてもし残ったのが一紀(かずき)だったら、走って逃げればいい。
正直、そんな結果は考えたくないんだけど。
大丈夫、準はきっと勝つはず。わたしたちを助けに、今戦ってるはずなんだから。
妙な安心感がわたしの心に沸いた。本当におかしい。こんなバトルにさらされていれば、おかしくもなる。うん!
もう少しで九時だ。でもミーティングには行けない。
準を見守らなくては。
階段の上で、ぱあっとまばゆい光が現れた。
戦いが終わったのだ。十秒くらい沈黙があって、足音がし始めた。
「どっちだろう?加川さん?それとも……」
紗英と二人で、こわごわと階段の鏡をのぞく。降りてきたのは……!
「加川さんだ!」
準の姿をみたとたん、涙があふれた。
「良かった!良かったね!」二人でがしっと抱き合った。
準は手すりを伝って、少しふらつきながら降りてきた。
「加川さん。あの……」
わたしが呼びかけると、わずかにほほえんだ。
「勝ったんですよね?あの、三村一紀(みむら・かずき)に!」
「……ああ。そうらしい」
目を伏せて大きなため息をついた。
「バトルというのは、ひどいもんだな。あまりにも簡単に人が消える。最初からいなかったみたいに」
「ごめんなさい!わたしが、わたしのせいで」
思わずわたしはそう言った。
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