【完結】知られてはいけない

ひなこ

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三・運命の分岐点

運命の分岐点(1)

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 さっき簡単かんたん自己紹介じこしょうかいをしたけれど、十五人もいればまだ区別くべつなんてつかない。
 わたしは、おとなしそうな女子に声をかけた。
「あの、こんにちわ。わたし、遠野莉々亜(とおの・りりあ)です」胸の名札なふだを見せる。相手も見せ返す。
「わたしは庄司佳奈(しょうじ・かな)。番号ばんごうは十五番です。よろしく」
 今のわたしは、むしろ仲間を必要ひつようとしてる。だって、こんなところにいきなり連れられて(仮想空間だとしても)無理な戦いをしろなんて言われても……。
「本当に、こんなゲーム始めるのかな?」
「どうだろう。あの辺は、もしかしたらあやしいかも」
 佳奈は目で、向こうの机でたまっていた男子たちを指した。
 さっきイスをっ飛ばした、三村一紀を三人の男子がかこんでいる。
 机にみっともなく両足をかけた三村に、周りでぺこぺこしながら話している。
 さんづけで話しているってことは、周りは中一かな。
「早速、仲間を見つけたのかも」
「仲間って?」
 佳奈は口ごもる。たしかにわたしだって、たよれるなら仲間が欲しい。
 でも、別の意味で仲間になる人々も当然いる。
「ああ。そういう意味ね」
 でも、わたしとは別の目的もくてきで集まっているのなら……つまりはてき
 ううん、敵とか味方みかたとか……そういうこと考える自分がいやだ。
「どうしようか。わたしたちも、それなりに話しに行った方がいいかも。最初が肝心かんじんな気がする」わたしの手を引いて、窓側まどがわへとつれて行く。
「え?何。ちょっと」
 加川準(かがわ・じゅん)のところで止まる。
「あの。加川さんて中二ですよね?」佳奈はとなりの席に座る。
「……ああ。そうだけど」
「わたし、中一の庄司です。こっちはさっき友だちになった……」
「あ、遠野です。遠野莉々亜」
 佳奈の中では、わたしはもう友だちらしい。まあ、いいけど。
「で、何か用?」加川さんはそっけない。
一緒いっしょに行動しませんか?」
「ちょっ、それは!」わたしはとっさに佳奈を止めた。
「いいじゃない?だって、加川さん、たよれそうだし」
「でも。急にそんなの」わたしは佳奈の言い分におどろいた。
 おとなしそうだと思ってたけど、意外いがい行動的こうどうてきだな。実はいろいろ考えてる?
「いや、おれはひとりでいい。きみらも、他に行った方がいいよ」
「あ。待って下さい。あのー……」 
 佳奈に答えることなく、準は席を立って、廊下ろうかへ出て行った。
「ちょっと、何で止めるの!」すぐに佳奈はわたしに向き直る。
きゅうすぎだよ。加川さんだって、おどろいてたじゃない」
 
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