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一・落とされた仲間たち
落とされた仲間たち(1)
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木目ばりの床の上でわたしは目覚めた。
そこには温かな日だまりができていた。まるで、温室のように。だけど温室ではなかった。
きれいに作られた、広めの教室みたいだった。
周りを見ると、制服を着た生徒が何人も倒れていた。
何人いる?
一、二……男子と女子が全部で十五人。連れてこられたのはわたしだけじゃなかったみたいだ。
起き上がって前を見ると、黒板の横に時計があり、大きなデジタル表示がされていた。
現在は六月二十二日、朝九時ちょうど。
さっきまでいたわたしの世界は、そんな日付だったろうか?
「ようこそ、参加者のみなさん。歓迎するよ」
教室じゅうに大人とも子どもとも、男とも女ともつかない電子音声が響いた。
教卓の辺りに、小さなぬいぐるみが浮いている。ウサギのようなネズミのような。つぶらな瞳がキラッとこっちを見る。
ふわふわとした真っ白な毛並み。
子供だったら、一発で気に入るような愛くるしさがあった。
「何で、こんなぬいぐるみが」
教卓すぐそばの生徒が手を伸ばす。でも、さわることができずにすり抜けた。
「ああ、勝手に手を出さないでね?ルール違反になるよ?」と、ぬいぐるみ。
ホログラムだろうか。
実際にはいないのかもしれない。向こうの黒板が透けている。
「な、何だよお前!」
注意された生徒が大声をあげた。
「ぼくはゲームマスター・円(えん)。きみたちにルールと知恵を授ける役だ」
円?それは名前なの?何を言ってるんだろう?
みんな互いにおどろき合っている。
「ここ、どこ?」
「って、それよりもきみってだれ?」
「あなたこそ!」
わたしはぼうっと様子を眺めていた。まだ目覚めたばかりで、頭が回らない。
体がだるい。うまくうでも足も動かせない。
わたしは混乱している。まだこの場が何なのか飲み込めない。
「参加者って、何の話?」
「あれだろ。ゲームに参加しますかって、招待状。おれはメールだったけど」
「えっ?わたしは郵便だった。開いただけで、参加するなんて言ってない!」
「おれも。いいえ、を押したのに」
「うそ。そんな選ぶことなんてできなかった!」
ツインテールの女の子と、少し太めの男子が言い合い始める。
多少のちがいはあるみたいだけどみんなわたしと同じように、ここへ来てしまったらしい。
「みなさん、参加をOKしたからここにいるのです。つまり、参加しなくてはいけない」と円。
「何言ってんの。あんなの詐欺じゃない?わたし帰るわ」
ツインテールの子が、立ち上がってパンパン、とスカートのほこりを払う。
と、立ち上がって前のドアに手をかけるけど……。
「何これ?手が引っかからない」
「そう。ここは仮想空間。みなさんは現実とはかけ離れたここ、ゲーム会場に囚われているんだよ」
「は?意味わかんない。とにかく、ここから出して!」
手が何度も、ドアを開けようとして……すり抜ける。
「ぼくが許可しない限り、きみたちはどこへも行けない。まずはルールを聞くんだね」円がくっくっと嫌な笑い方をした。
そこには温かな日だまりができていた。まるで、温室のように。だけど温室ではなかった。
きれいに作られた、広めの教室みたいだった。
周りを見ると、制服を着た生徒が何人も倒れていた。
何人いる?
一、二……男子と女子が全部で十五人。連れてこられたのはわたしだけじゃなかったみたいだ。
起き上がって前を見ると、黒板の横に時計があり、大きなデジタル表示がされていた。
現在は六月二十二日、朝九時ちょうど。
さっきまでいたわたしの世界は、そんな日付だったろうか?
「ようこそ、参加者のみなさん。歓迎するよ」
教室じゅうに大人とも子どもとも、男とも女ともつかない電子音声が響いた。
教卓の辺りに、小さなぬいぐるみが浮いている。ウサギのようなネズミのような。つぶらな瞳がキラッとこっちを見る。
ふわふわとした真っ白な毛並み。
子供だったら、一発で気に入るような愛くるしさがあった。
「何で、こんなぬいぐるみが」
教卓すぐそばの生徒が手を伸ばす。でも、さわることができずにすり抜けた。
「ああ、勝手に手を出さないでね?ルール違反になるよ?」と、ぬいぐるみ。
ホログラムだろうか。
実際にはいないのかもしれない。向こうの黒板が透けている。
「な、何だよお前!」
注意された生徒が大声をあげた。
「ぼくはゲームマスター・円(えん)。きみたちにルールと知恵を授ける役だ」
円?それは名前なの?何を言ってるんだろう?
みんな互いにおどろき合っている。
「ここ、どこ?」
「って、それよりもきみってだれ?」
「あなたこそ!」
わたしはぼうっと様子を眺めていた。まだ目覚めたばかりで、頭が回らない。
体がだるい。うまくうでも足も動かせない。
わたしは混乱している。まだこの場が何なのか飲み込めない。
「参加者って、何の話?」
「あれだろ。ゲームに参加しますかって、招待状。おれはメールだったけど」
「えっ?わたしは郵便だった。開いただけで、参加するなんて言ってない!」
「おれも。いいえ、を押したのに」
「うそ。そんな選ぶことなんてできなかった!」
ツインテールの女の子と、少し太めの男子が言い合い始める。
多少のちがいはあるみたいだけどみんなわたしと同じように、ここへ来てしまったらしい。
「みなさん、参加をOKしたからここにいるのです。つまり、参加しなくてはいけない」と円。
「何言ってんの。あんなの詐欺じゃない?わたし帰るわ」
ツインテールの子が、立ち上がってパンパン、とスカートのほこりを払う。
と、立ち上がって前のドアに手をかけるけど……。
「何これ?手が引っかからない」
「そう。ここは仮想空間。みなさんは現実とはかけ離れたここ、ゲーム会場に囚われているんだよ」
「は?意味わかんない。とにかく、ここから出して!」
手が何度も、ドアを開けようとして……すり抜ける。
「ぼくが許可しない限り、きみたちはどこへも行けない。まずはルールを聞くんだね」円がくっくっと嫌な笑い方をした。
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