Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
上 下
36 / 84
第3幕

大谷からの投資話

しおりを挟む
数回のデートを重ね、すっかり距離が縮まったように見える二人の間には、自然な信頼関係が生まれつつあった。怜は、控えめで純粋な態度を崩さず、少しずつ彼に頼る様子を見せ続けた。そのたびに、大谷は彼女に対する保護欲と支配欲を深めていくようだった。

ある夜、食事を終えた二人がカフェでくつろいでいると、大谷は突然、神妙な面持ちで口を開いた。

「怜さん、ちょっと特別な話があるんだ。君にはきっと、こういう話をできると思ってたんだ。」

その言葉に、怜は大きな瞳で彼を見つめ、少し驚いた表情を見せた。「特別な話」という言葉の響きに、好奇心と少しの不安を感じさせるように反応を示す。大谷はそんな彼女の様子を見て、さらに興味を引きつけるように身を乗り出した。

「怜さん、君が真剣に将来を考えていることは僕もよくわかっているし、そんな君だからこそ、特別に話したいと思っている。これ、普通なら人には言わないんだけどね…。」

そう言って彼は少し言葉を区切り、彼女が自分の話に注目しているのを確認すると、満足そうに笑みを浮かべた。

「実は、短期間でかなり利益が得られる投資の話があるんだ。もちろんリスクもあるけれど、それ以上に将来的なリターンが見込める。君にとっても、将来のためにプラスになると思うんだけど…」

大谷の言葉を聞いて、怜は慎重に考えるような表情を浮かべ、「そんな、私が参加してもいいんでしょうか…?」と不安げに尋ねた。その表情には、彼の提案に対する一抹の疑念と、同時に興味が垣間見える。まるで、本当に自分が信頼されるべきかどうかを確かめたいような態度で、大谷に視線を向けた。

その様子に大谷は安心し、さらに彼女をリードするように話を続けた。

「怜さんがやってみようと思ってくれるなら、僕がしっかり教えるから心配はいらないよ。こういう話ができるのは、僕が怜さんを信頼しているからなんだ。」

彼はそう言いながらも、自分が怜を導き、支えてあげるという立場に立っていることに満足しているようだった。大谷にとって、怜の不安げな反応は、彼女が自分に完全に頼り、信頼している証拠であり、また自分が彼女を守り導く存在であることを感じさせるものだった。

怜はしばらく考え込むふりをしながら、「本当に私なんかが挑戦しても大丈夫ですか?」と、再び不安げな表情を浮かべた。

「もちろんさ。むしろ、怜さんみたいな真面目な人だからこそ、このチャンスを逃してほしくないんだ。大丈夫、最初は少額からでも始められるし、僕がきちんとサポートするから。」

大谷の言葉に怜は少し安心したように見え、ようやく微笑みを浮かべて、「大谷さんがそうおっしゃるなら、私も挑戦してみたいです」と前向きな姿勢を見せ始めた。この瞬間を待っていたかのように、大谷の表情には安堵と喜びが浮かんでいた。

「いいね!怜さんが一歩踏み出してくれることが、僕にとってもすごく嬉しいんだ。これから二人で、もっと将来について前向きに考えていけるよ。」

彼はまるで将来の共同生活を想像させるような口調で語り始め、怜に対する投資話を進める決意を固めた様子だった。そして、その場でいくつかの具体的な利益や投資の流れについて語り、怜にその計画の一部を話し始めた。

「この投資はね、普通の人にはちょっと難しいけれど、怜さんならきっとついてこられる。僕と一緒に成功を分かち合えるチャンスだと思ってくれるといいな。」

怜は、「二人で成功を分かち合う」という言葉に反応し、少し頬を赤らめてうつむき、彼に対して控えめな笑顔を見せた。その表情は、彼に完全に信頼を寄せ、彼の指導を受け入れる準備ができているように見える。

「私みたいなものが…でも、そういうお話をしてくださることが嬉しいです。大谷さんとなら、一緒に何かを頑張っていける気がします。」

彼女の言葉に大谷は満足そうにうなずき、彼女の信頼を手に入れたことを実感した。そして、彼女に対して更なる親近感を示すように、彼は少し声を低めて言った。

「怜さん、これからは僕が君を支えていくから、安心してついてきてほしい。僕と一緒なら、何も心配はいらないよ。」

こうして、怜は彼の計画に完全に「引き込まれた」ように見えた。怜の巧妙な反応と演技は、大谷に「彼女は絶好のターゲットであり、自分の支えを必要とする存在」と確信させるに十分だった。

大谷の目には、怜が完全に自分の影響下に入り、今や「支配された」状態であるかのように映っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

処理中です...