5 / 37
第1章 別れの時
5.出発の日
しおりを挟む
出発の日がやってきた。隼人は荷物をまとめると、挨拶のため青海の宿に赴いた。フロントには翔が立っており、いつもと変わらない表情で見送る準備をしている。その姿に隼人は心が締めつけられるような気持ちを感じたが、それを悟られないように深く息を吸い込んだ。
「じゃあ、行ってくるよ」
隼人がそう言うと、翔は微笑みながらうなずいた。その笑顔は、どこか寂しさを含んでいるようにも見えた。
「成長して戻ってくるよ。絶対に」
隼人は自分の中で決意を固めるように、しっかりとした声で言った。その言葉に込められた自信と期待は、翔に対してだけではなく、自分自身にも向けられていた。しかし、心の奥底にはどうしても拭い去れない寂しさが残っていた。
「うん、待ってるよ。隼人がどれだけ変わって帰ってくるのか、楽しみにしてるから」
翔は少し笑みを浮かべ、隼人の言葉を受け止めた。その瞬間、隼人は何かを言おうとしたが、言葉が喉の奥で引っかかり、結局何も伝えることができなかった。何かを伝えたい、何かを言わなければいけないという気持ちはあったが、それが何なのか、どう言えばいいのかがわからなかった。
「じゃあ……」
隼人は軽く手を振って、空港へと向かうために背を向けた。振り返ることはしなかった。もし振り返ってしまえば、何かが崩れてしまうような気がしたからだ。
空港に到着し、飛行機に乗り込むと、隼人は窓際の席に座った。離陸前の静かな機内に座っていると、翔との別れ際のシーンが何度も脳裏に浮かんでくる。これから始まる新しい生活への期待と、翔と離れる寂しさが入り混じった複雑な心境が、心を占めていた。
「成長して戻る」と約束したが、その言葉の裏には、翔がいない青海の宿をどのように受け止めるのかという不安もあった。だが同時に、フィレンツェでの研修が自分にとってどれだけの意味を持つのかを確かめる機会でもあると感じていた。
飛行機がゆっくりと滑走路を進み始めると、隼人は大きく息を吐き出した。これから始まる挑戦に胸を膨らませながらも、遠く離れる翔のことが頭から離れなかった。離陸する機体の振動が、隼人の心にも揺れを与えたかのように思えた。
「絶対に成長して、またあの場所に戻るんだ」
心の中でそう誓いながら、隼人は空の彼方へと飛び立っていった。
「じゃあ、行ってくるよ」
隼人がそう言うと、翔は微笑みながらうなずいた。その笑顔は、どこか寂しさを含んでいるようにも見えた。
「成長して戻ってくるよ。絶対に」
隼人は自分の中で決意を固めるように、しっかりとした声で言った。その言葉に込められた自信と期待は、翔に対してだけではなく、自分自身にも向けられていた。しかし、心の奥底にはどうしても拭い去れない寂しさが残っていた。
「うん、待ってるよ。隼人がどれだけ変わって帰ってくるのか、楽しみにしてるから」
翔は少し笑みを浮かべ、隼人の言葉を受け止めた。その瞬間、隼人は何かを言おうとしたが、言葉が喉の奥で引っかかり、結局何も伝えることができなかった。何かを伝えたい、何かを言わなければいけないという気持ちはあったが、それが何なのか、どう言えばいいのかがわからなかった。
「じゃあ……」
隼人は軽く手を振って、空港へと向かうために背を向けた。振り返ることはしなかった。もし振り返ってしまえば、何かが崩れてしまうような気がしたからだ。
空港に到着し、飛行機に乗り込むと、隼人は窓際の席に座った。離陸前の静かな機内に座っていると、翔との別れ際のシーンが何度も脳裏に浮かんでくる。これから始まる新しい生活への期待と、翔と離れる寂しさが入り混じった複雑な心境が、心を占めていた。
「成長して戻る」と約束したが、その言葉の裏には、翔がいない青海の宿をどのように受け止めるのかという不安もあった。だが同時に、フィレンツェでの研修が自分にとってどれだけの意味を持つのかを確かめる機会でもあると感じていた。
飛行機がゆっくりと滑走路を進み始めると、隼人は大きく息を吐き出した。これから始まる挑戦に胸を膨らませながらも、遠く離れる翔のことが頭から離れなかった。離陸する機体の振動が、隼人の心にも揺れを与えたかのように思えた。
「絶対に成長して、またあの場所に戻るんだ」
心の中でそう誓いながら、隼人は空の彼方へと飛び立っていった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
隼人と翔の休日
中岡 始
BL
三条美玲の炎上事件によって、隼人の心には深い傷が残った。恋愛に対する不安やためらいを抱き、穏やかな表情の裏には重苦しい影が漂っている。自信を失い、心を閉ざしつつあった隼人に、さりげなく支えの手を差し伸べたのは同期入社の翔だった。「いつでも話していいから」とかけられた一言が、彼の心を救うきっかけとなる。
そんな二人に、松永総支配人から3日間の休暇が与えられ、山間の秘湯「深緑の宿」で心を癒す旅が始まる。紅葉に包まれた静かな温泉旅館での時間が、隼人の心を少しずつ解きほぐし、彼の中に眠っていた翔への特別な感情を浮かび上がらせる。そして、女将・山崎美沙子との対話が、隼人をさらに自分の本当の気持ちへと導いていく。
旅の終わり、二人が展望台で見つめ合ったその瞬間――言葉にしなくても通じる想いが二人の間に流れ、彼らの関係は新たな段階に踏み出そうとしている。この旅が、隼人と翔をどこへ導くのか。心の傷が癒されるとともに、二人の絆が深まるストーリーが今、静かに幕を開ける。
※「三条美玲の炎上」のスピンオフ小説となります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/560205036/618916300
↑三条美玲の炎上

【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる