ビストロ・ルナとねこ又亭〜月下の洋食店と、路地裏の居酒屋〜

中岡 始

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第9話:ビストロ・ルナ × ねこ又亭 コラボ企画!

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ある日のねこ又亭——。
 いつものように常連猫たちがマタタビ酒を楽しむ中、カウンターに座っていたルナが静かに口を開いた。

 「……一つ、提案がある」

 店の猫たちが、ルナに視線を向ける。
 黒猫の又五郎は、盃を静かに置きながら言った。

 「ほう」

 ルナは腕を組み、真剣な眼差しで続ける。

 「ビストロ・ルナとねこ又亭で、一夜限りのコラボ企画をやらないか?」

 「コラボ?」

 キジトラのトラ吉が盃を片手に眉をひそめる。

 「お前の店とねこ又亭じゃ、料理の系統が全然違うだろ?」

 「だからこそ、面白いんじゃないか?」

 ルナは静かに微笑んだ。

 「俺のビストロではワインが基本だが、ねこ又亭のマタタビ酒の良さも知った。
 そして、お前たちの居酒屋料理には、洋食の技術を加えることで新たな魅力が生まれるはずだ」

 ミケが興味津々に尻尾を揺らす。

 「面白そうじゃない! それに、ねこ又亭にワインって新鮮かも!」

 「おう、それならビストロにマタタビ酒も置くってのはどうだ?」

 ゴンがニヤリと笑う。

 「フレンチとマタタビ酒……意外と合うかもしれねぇな」

 クロが静かに頷いた。

 「ルナ、具体的にどんなことを考えてる?」

 ルナは自信満々に答えた。

 「ねこ又亭では、和食×ワインのペアリングコース。
 ビストロ・ルナでは、洋食×マタタビ酒の特別メニューを提供する。
 お互いの料理の良さを引き立てる組み合わせを考えるんだ。」

 翌日、ねこ又亭とビストロ・ルナの厨房は、いつも以上に活気づいていた。

 「こっちはワインに合う和食を試作するぞ!」

 ゴンが包丁を握りしめる。

 「だったら、カツオのたたきにバルサミコソースをかけるのはどう? さっぱりしてワインに合うと思う!」

 ミケが提案する。

 「お、いいな! それと、白ワインにはホタテのバター焼きも合いそうだ」

 「じゃあ、俺のビストロでは、洋風の煮込み料理にマタタビ酒を加えてみるか……」

 ルナが腕を組むと、トラ吉が驚いた顔で言った。

 「おいおい、そりゃ危険じゃねぇか? 飯食っただけで酔っちまうぞ」

 「いや、加熱すればアルコールは飛ぶ。
 マタタビの香りだけがほんのり残るから、食欲をそそる味になるはずだ」

 クロが静かに言葉を添える。

 「なるほど……それはありかもしれねぇな」

 ついに、ビストロ・ルナ × ねこ又亭のコラボイベントが始まった。

 ねこ又亭では——

 「カツオのたたき・バルサミコソースがけ」
 「ホタテのバター焼き」
 「焼き鳥の赤ワインソース」

 普段マタタビ酒しか飲まない常連たちが、初めてワインに挑戦する姿が見られた。

 「ワインってやつも、なかなかイケるな!」
 「ミケ、ワインもう一杯!」

 ねこ又亭のカウンターには、いつもと違う光景が広がっていた。

 ビストロ・ルナでは——

 「牛肉のマタタビ酒煮込み」
 「チーズとマタタビのタルティーヌ」
 「サーモンのカルパッチョ・マタタビ風味」

 いつもは静かなビストロが、ねこ又亭の常連たちの笑い声で満ちていた。

 「おい、これマタタビ酒の香りがほんのりして食いやすいぞ!」
 「フレンチってもっと気取った料理かと思ったけど、これなら馴染むな」

 ルナは、そんな猫たちの様子を静かに見つめていた。

 (……こういうのも、悪くないな)

 コラボイベントは大成功に終わった。

 ねこ又亭の猫たちは、「ワインも意外といいな」と言い、
 ビストロ・ルナの客たちは、「マタタビ酒も面白い」と驚いていた。

 イベント終了後、ルナはねこ又亭のカウンターに座り、又五郎と向かい合った。

 「……面白い夜だったな」

 又五郎が静かに言う。

 ルナは盃を傾け、小さく笑った。

 「料理に“正解”はないんだな」

 ねこ又亭の猫たちと触れ合い、マタタビ酒の可能性を知り、
 ワインと和食の相性を試しながら——

 ルナは、料理の楽しさを改めて実感していた。

 「……また何かやるか?」

 又五郎の問いに、ルナは盃を置き、静かに微笑んだ。

 「気が向いたらな」
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