「三条美玲の炎上」スピンオフ・田中翔の業務日誌

2024年5月12日

2024年5月12日

東京に戻った美玲様は、相変わらずラグジュアリーな生活をSNSで発信し続けている。高級レストランでのディナーやブランドショップでのショッピング、そして都会の夜景をバックにした華やかな写真。青海の宿での「特別な体験」から日常に戻った様子を、彼女は変わらず美しく切り取っている。フォロワーたちも変わらずその投稿に熱狂し、彼女の毎日は羨望の的だ。

彼女の投稿を見ていると、青海の宿で過ごした3日間は、結局、彼女の日常にとっては「特別のひととき」に過ぎなかったのかもしれないと思えてくる。もちろん、VIPゲストとして特別な対応を求めるのは珍しいことではない。しかし、彼女の中では「贅沢な体験」の一部に過ぎず、宿での日常が終わった途端に次の豪華な生活に切り替わる。それが自然であることも分かっているし、特に驚くことではないのだが、なんだか冷めた気持ちになってしまう。

彼女にとって隼人との時間も、一時的な「特別な存在」として消費されたのだろうか。それとも、どこかに本物の感謝の気持ちが含まれていたのだろうか。そんな疑問が浮かぶが、結局それは彼女の心の中にしか答えはない。

今日は隼人が休みで、フロントは私を含む他のスタッフで回している。連休明けからの業務がひと段落し、通常のペースに戻りつつあるが、隼人がいないフロントはどこか物足りない感じがする。もちろん、私たちは全員プロフェッショナルとしての自覚を持って仕事をしているが、隼人がいることで自然とまとまるチームの雰囲気が恋しくなるのも事実だ。

今日はチェックアウトや観光案内などの業務が中心で、大きなトラブルもなく進んでいる。宿の落ち着いた雰囲気が戻りつつあるのは良いことだが、どこか気持ちが引き締まらないのは、隼人の不在が原因なのかもしれない。彼も今回の件で疲れているはずだから、しっかり休んで英気を養ってほしいと心から思う。

休憩時間にふと、再び美玲様の最新投稿を見てしまった。特に変わらず、彼女の華やかな生活が続いている。しかし、私の中では、彼女が青海の宿で過ごしたあの3日間がどこか霞んで見えるように感じられた。フォロワーたちの羨望や称賛の声も、少しだけ虚しさを感じる。それでも、私たちはゲストに最高の体験を提供することが仕事だ。どんな形であれ、彼女が満足して帰っていったのは間違いないのだから。