道理恋慕

華子

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道理と恋慕

道理と恋慕1

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 8256番になってからは、3年が経つ。いや、もしかしたらもうすぐ4年だろうか。最近は、数字も上手く数えられない。

 俺の罪は殺人罪。父親と蓮の計ふたりだ。
 18歳未満で犯した罪での死刑は国際法で禁止されているらしく、俺が首でも飛ばしてくれといくら懇願しようが、出来ないものは出来ないそうだ。命で償いたいが償えない、厄介な法律だ。

 自殺はいけないと教わり、人を殺めるのもだめだと教わる。生きていれば生きているほど死にたくなるのに、死にたくても死なずに生きろと言われる。
 こんな不条理な社会、誰が決めたのだろう。

 桜子は、俺との約束を守ってくれている。何も知りません、見てません、聞いてません。取り調べにはそう答えてくれているはずだ。

 弁護士は、芽衣を初めて連れてきたあの日から、何度も俺の元に彼女を寄越した。俺には拒む資格はない。

「うっちゃん、ちゃんとご飯食べてる?」

 話しかけないでよ、芽衣。

「昨日久しぶりに琴ちゃんの家でカレー食べたの。相変わらず、スパイスの調合上手だったよ」

 他愛ない話なんかして、俺の態度が昔のように変わるとでも思っているのだろうか。

「ここでも、カレーは出る?」

 そもそも昔の俺とはなんだ。産まれた時からずっと犯罪者の息子で、君と付き合っていた頃だって罪を犯していたのだから、今と全く同じじゃないか。だから喋りたくないんだ。

 君と俺は違う。人生の色が違う。

 しかし、これだけ頑なに毎回無視して目も合わせていないのに。

「うっちゃんとまた、一緒にご飯できたらいいなあっ」

 今日も君は諦めない。
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