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守護と殺人
守護と殺人18
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銃が火を噴いたのか、それとも赤い雨でも降ったのか。はたまた大きな苺でも、巨人が握り潰したのか。
父親の頭は、粘土をくり抜いたように1箇所が窪んでいた。あと1歩のところだった。飛び散った血の中に混ざるぐにゃっとしたものは何だろうと、考えたくもない。
父親の尻はぺたんと落ち、張っていた肩もだらんと力を失う。
撃ち抜かれた頭の真下で、ゆっくりと染みていくマグマ。
魂が抜けていく、刹那を見た。
俺の服には大きな筆先を払ったように点々と、父親の血がついていた。左腕の龍の顔にもそれは付着した。けれど1番酷いのは、父親の死にざまを間近で見た蓮と桜子だ。
綺麗だと思えるのは、つい先ほどまで蓮に大事に抱えられていた桜子の首付近だけで、顔面いっぱいにかかった血は眼球までをも侵し、彼女は片目をグッと瞑る。
この場にいる、父親以外の全員の時が止まった気がした。ひょっとすると息絶えたのは俺等の方で、崩落しきった父親の方が動き出すのではないのかと、そう思うほどに。
「と、父さん……」
天災みたいなこのありさまを、どう言葉で説明しようか。
「父さん、父さっ……」
世界のどの言葉をチョイスしても、きっと俺は上手く言い表せないだろう。何故なら俺が今目の当たりにしているのは、『無』であり、『零』。培ってきたものは全て消え失せ、儚ささえ残さない。亡き骸の父親をすぐそこに、置いてけぼりを食ったような感覚に陥った。
父親の頭は、粘土をくり抜いたように1箇所が窪んでいた。あと1歩のところだった。飛び散った血の中に混ざるぐにゃっとしたものは何だろうと、考えたくもない。
父親の尻はぺたんと落ち、張っていた肩もだらんと力を失う。
撃ち抜かれた頭の真下で、ゆっくりと染みていくマグマ。
魂が抜けていく、刹那を見た。
俺の服には大きな筆先を払ったように点々と、父親の血がついていた。左腕の龍の顔にもそれは付着した。けれど1番酷いのは、父親の死にざまを間近で見た蓮と桜子だ。
綺麗だと思えるのは、つい先ほどまで蓮に大事に抱えられていた桜子の首付近だけで、顔面いっぱいにかかった血は眼球までをも侵し、彼女は片目をグッと瞑る。
この場にいる、父親以外の全員の時が止まった気がした。ひょっとすると息絶えたのは俺等の方で、崩落しきった父親の方が動き出すのではないのかと、そう思うほどに。
「と、父さん……」
天災みたいなこのありさまを、どう言葉で説明しようか。
「父さん、父さっ……」
世界のどの言葉をチョイスしても、きっと俺は上手く言い表せないだろう。何故なら俺が今目の当たりにしているのは、『無』であり、『零』。培ってきたものは全て消え失せ、儚ささえ残さない。亡き骸の父親をすぐそこに、置いてけぼりを食ったような感覚に陥った。
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