道理恋慕

華子

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絶望と憤慨

絶望と憤慨13

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 帰宅して、玄関を開けてすぐに香ったのは煙草の臭い。その瞬間に、俺の肺も煙を欲した。

「遅かったのね大和」
「うん。ちょっと友達と会ってた」

 母親にそう告げて、換気扇の下までの道すがら、ポケットから取り出した1本に火をつけると、桜子が出だしの煙に目くじらを立てた。

「くっさい!」
「ごめんっ」

 ダッシュで目的地へ着くと、素知らぬ顔の父親がリラックスモードで喫煙していた。

「た、ただいま」
「おう、おかえり大和」

 もしも今日命ひとつ奪っておいてこの顔ができるのならば、彼は正真正銘の気狂きちがいだ。

「けむーい」と桜子の声が居間から聞こえて、父親も俺もファンの真下で肩を寄せた。俺の左腕の龍と父親の右腕の龍が、バチバチ睨み合っていた。

 俺は、内田組の本部がどこにあるのか知らない。本当はそこへ行って、桜子のいないところで追及をしたいが、それは無理だ。そして割と夜遊びに暮れない妹を持った以上、彼女の不在を狙うのもけっこう難しい。

 俺の運命が親と同じ組織に入ることならば、桜子はこの一家に産まれたことが宿命。

 だからごめん、桜子。口喧嘩だけで済むようにするからこれだけは話させてくれ。
 今日の出来事は、黙ってなんかいられない。
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