道理恋慕

懺悔と離別

懺悔と離別５

　シャープペンの音だけを暫し走らせて、勉強をする素振りをしながら芽衣を目に入れる時間はすぐに終わってしまった。
「コンビニに行く」と言った君は、帰りの身支度を整える俺の横で薄いパーカーを羽織っている。
　窓から見える空は天色あまいろだった。とうに鉄色くろがねいろだったならば、互いの表情が分からなくて良かったのに。

「芽衣、ちょっと神社寄ってこうよ」
「神社？」
「あるじゃん、5分くらい歩いたとこに」
「いいけど、夕方だし蚊がいないかなあ？」

　そう言って、芽衣はパーカーの袖を指の第2関節まで引っ張っていた。ハーフパンツからは、綺麗な白い足がふんだんに出ている。

「じゃあ、蚊に刺されたらすぐ帰ろ」

　君と手を繋ぎ、俺は神社の方へ向かって歩く。

　ぷにぷにぷにぷに

　この感触も、今日でお終い。もう2度と、俺が触れる事はないだろう。