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中毒と未来
中毒と未来5
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芽衣。芽衣。芽衣ちゃーん。高校に行っても、あの信号機で待ち合わせしようよ。
「よしっ」
夕飯後、俺は勉強机に向かった。
「芽衣ちゃんかわいそー。ちゃんと謝りなよー」
さっきからチクチクと背部に突き刺さる言葉の槍は、芽衣の帰宅時にすれ違った桜子が投げてくるもの。芽衣の不機嫌に気付いた桜子は、理由を聞かずとも彼女の味方についていた。
「芽衣ちゃんに捨てられても知らないよー」
「なんも知らねえくせに、桜子が入ってくるなよ」
「どうせお兄ちゃんが悪いんでしょ」
それは否めないが、訳くらい聞いてから責めて欲しい。
「俺さ、こう見えても一応受験生だから静かにしててくんない?静かにできないなら、母さんと居間でテレビでも見ててくれよ」
「あ。急に受験勉強始めるなんてアレだ。勉強しなさすぎるとかで、芽衣ちゃんに怒られたんだ」
それも否めないが、とにかく静かにして欲しい。
キィーッと椅子を回して桜子と真正面で向き合った俺は、両手を巻き添えに猿の顔の物真似をした。これは幼少期の頃から桜子が必ず笑う、必勝法だ。
「きゃはは!なに、なんなのいきなりっ」
案の定、彼女は腹を抱えて笑い出す。
「シズカニシロ。ダマッテクレナイト、ワライコロスゾ」
「や、やめてってば。わかったからぁ!きゃははは!」
「シズカニシテロヨ」
蹲り、笑い悶える桜子を確認した俺は、再び机と向かい合う。
呼吸を整えた後に、彼女は言った。
「芽衣ちゃんと同じ高校行きたくて勉強し始めたんでしょ?頑張ってね、お兄ちゃん」
否めない。
「よしっ」
夕飯後、俺は勉強机に向かった。
「芽衣ちゃんかわいそー。ちゃんと謝りなよー」
さっきからチクチクと背部に突き刺さる言葉の槍は、芽衣の帰宅時にすれ違った桜子が投げてくるもの。芽衣の不機嫌に気付いた桜子は、理由を聞かずとも彼女の味方についていた。
「芽衣ちゃんに捨てられても知らないよー」
「なんも知らねえくせに、桜子が入ってくるなよ」
「どうせお兄ちゃんが悪いんでしょ」
それは否めないが、訳くらい聞いてから責めて欲しい。
「俺さ、こう見えても一応受験生だから静かにしててくんない?静かにできないなら、母さんと居間でテレビでも見ててくれよ」
「あ。急に受験勉強始めるなんてアレだ。勉強しなさすぎるとかで、芽衣ちゃんに怒られたんだ」
それも否めないが、とにかく静かにして欲しい。
キィーッと椅子を回して桜子と真正面で向き合った俺は、両手を巻き添えに猿の顔の物真似をした。これは幼少期の頃から桜子が必ず笑う、必勝法だ。
「きゃはは!なに、なんなのいきなりっ」
案の定、彼女は腹を抱えて笑い出す。
「シズカニシロ。ダマッテクレナイト、ワライコロスゾ」
「や、やめてってば。わかったからぁ!きゃははは!」
「シズカニシテロヨ」
蹲り、笑い悶える桜子を確認した俺は、再び机と向かい合う。
呼吸を整えた後に、彼女は言った。
「芽衣ちゃんと同じ高校行きたくて勉強し始めたんでしょ?頑張ってね、お兄ちゃん」
否めない。
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