道理恋慕

華子

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中毒と未来

中毒と未来2

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「大和はさ、高校どこいくか決めた?」

 蝉はまだ鳴かぬ、中学3年生の7月初旬。勇吾は珍しく、俺を放課後の公園へと誘った。

「決めてない。勇吾は?」

 ふたりして、ブラックの缶コーヒー片手にベンチへ腰掛けたりなんかして、随分と大人になったなあと思う。

「俺は決めたよ。去年に何校か目星はつけてたんだけどさ、やっと絞れた」
「うげ。中2から志望校選別してんの。さすがっす」
「大和も特に希望ないなら、俺と同じとこにすれば?」
「はあ?なに言っちゃってんの。赤点ばっかの俺が、勇吾と同じ高校とこなんて無理に決まってんだろ」
「今から本腰入れてさ」
「入れねえ。めんどい」

「そうかぁ?」と缶を口に運んだ彼のその中身は、夏だというのにもかかわらず、湯気立つホット。俺は冷たいコーヒーをひと口飲む。小学校が一緒だろうが仲が良かろうが、俺と勇吾は正反対だ。

 成績は説明するまでもないし、海外だって俺は未経験。鶏そぼろ丼が大好物な俺が食の話をした時には、「そこに乗ってる桜田麩さくらでんぶも美味しいよね」とか勇吾は言ってきたけれど、俺の家のそぼろ丼は茶と黄の2色が絶対だから、そこは曖昧な相槌を打った。

 彼といると、時折引け目を感じてしまう。こんなくだらない事で、とは思うけれど、でもそうなんだよ実際。
 人間はいつだって、己より優れている人物を羨み劣等感を抱く。それ等が意識とは関係のないところで霧となり靄となり、息がしづらくなる。

 中学生になってから、ずっとずっと俺は思っているんだ。

 なんで俺がこんな事しなきゃいけないんだ、どうして拒否すらできないんだ。やりたくない、やりたくない。薬も電話も徴収も、全部全部やりたくない。
 みんなはいいよな。俺がやりたくない事をやっている間、テレビでも観て笑っているんだろう?

 俺が「いやだ」ともし仕事を断れば、それが中学1年生になった桜子にでも可能な仕事だと両親が判断すれば、彼等は容赦なく桜子を使うかもしれない。それは、是が非でも避けたい。

 俺の人生へ、日に日に積み重ねられていく犯罪行為。それなのに未だ職種すら打ち明けてはくれない両親の気が知れない。
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