道理恋慕

華子

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嫉妬と接近

嫉妬と接近7

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 家へ着く頃、空は俺の心と同じくネイビーブルー。

「おっかえりー!お兄ちゃん、今日どうだったの!?上手くいった!?」

 父親は不在。母親は寝室で、誰かと電話をしていた。恋の話に興味津々な桜子は、読書中だった恋愛漫画を閉じて聞いてきた。

「ちゃんとふたりっきりにしてあげた?その人達どうなったの?」

 俺の「ただいま」のトーンで見破れないところは、まだまだ小学生の証だ。

「失敗した」
「え。まじ?」

 失敗というか不慮の事故というか、アクシデントだ。

「もう、お兄ちゃんったらフェードアウトするタイミング逃したんでしょ」

 する前に、されたんだよ。

「……おう」
「ばかー」

 少し不愉快になる自分には、先ほどと同じ言葉を言い聞かせるが、あまり効果がない。

「桜子が思ってるよりよっぽどむずいんだよ、恋愛って」
「へぇー」
「彼氏のひとりでもできてから、俺に馬鹿って言え」
「はいはいはーいっ」

 スマートフォンは依然として、暗いまま。
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