道理恋慕

華子

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初犯と狼狽

初犯と狼狽10

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 冷凍庫に入っていた炒飯チャーハンのパッケージ裏面の日本語と格闘していると、桜子が「貸して」とフライパンに火をかけながら言った。

「できんの?」
「家庭科の授業より簡単だけど」
「……すまん」

 いつの間にやら追い越されていた炊事力。そこはさすが、女性だ。

 ジャアジャアと炒め出した桜子の横で、俺は皿をふたつ用意する。そんな俺に桜子は言う。

「お母さん達はいらないのかな」
「あー…っていうか今思ったけど、俺が母さんから今朝貰った金ってもしかしたら夕飯代だったかもしんねえ」
「え、そうなの?」
「俺の中学、今日給食ない日だったからてっきり昼飯代だと思ってたわ。母さんたぶん、給食ないこと自体把握してなかったんだろうな」

 炒飯の良い香りは、段々と俺の食欲をそそっていく。

「じゃあふたりで全部食べちゃう?」
「おう」

 桜子特製冷凍炒飯は食卓に2皿、向かい合って置かれた。

「いただきます」
「それで、どうしたの?」
「あ?」

 米をひと口運んでいると、桜子が俺に冷たい視線を向けてきた。

「なにが」
「お母さんから貰ったお金」
「あー、だからさ。俺昼飯代だと思ってたからさ……」
「え。使っちゃったの?いくら?全部?」
「千五百円、だったかな。使っちった」
「はーあ?贅沢しすぎっ」

 呆れた桜子は溜め息を吐くと、「なに買った」だの「特盛牛丼でもそんないかない」だのと、くどくど愚痴を並べてきた。
 俺は最初、両手で耳珠じじゅを耳穴に押し込む事でその問責から逃れていたが、これじゃあいつまで経っても炒飯にありつけない。証拠隠滅に勤しんだ己を哀れに思いながら、俺は桜子に真実を話した。

「彼女の昼飯分も買ってあげたの!だからべつに贅沢した訳じゃないけど金なくなったの!すんませんでした!」

 そうして俺は、温い米を口に掻き込んだ。
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