道理恋慕

華子

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初犯と狼狽

初犯と狼狽1

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 芽衣が俺を好きだと発言した事はなかったが、中学に上がる頃には自然と彼女からも手を繋いでくれるようになった。

 俺等の小学校の児童ほとんどは横付けされているこの校舎に入学するから、勇吾も一緒だ。

 勇吾が芽衣に抱いた恋心は瞬間的なものだったようで、彼が彼女を追ったり好意を表に出す事は1度もなかった。けれどこれはもしかしたらただの憶測で、スマートに身を引いてくれただけなのかもしれないが。

「大和おはよ」
「うっす勇吾」

 そんな俺等は今、意外にもけっこう仲が良い。満開の桜がそよぐ中で見たクラス発表も、まぐれか神の気まぐれなのか、ふたり共にA組だった。

「あれ、今日は芽衣と来てないの?」
「芽衣は日直だっつって早めに家出た。もう学校着いてるんじゃね?」
「そっか。芽衣も真面目だな」
「俺と釣り合わねー」
「ははっ」

 家族旅行だとか言って全く芽衣と会えなかったゴールデンウィークがやっと終了したっていうのに、堅実な彼女のお陰で俺のお預けは数十分延びた。

 眩しく感じ始めた太陽は、夏に入る準備を進めている。

「勇吾はどっか行ったの?ゴールデンウィーク」
「俺?ハワイ行ったよ」
「なんだそれ、貴族か」
「大和は?家族でどっか行ってないの?」
「俺ん家は両親揃って仕事してたわ」
「え、祝日なのに?なにかお店でもやってるの?」
「いや。よく分かんね」
「は?なんだそれ」

 俺は強い陽射しに根負けし、袖を捲った。梅雨もまだ訪れていないのに、夏は地球が歳を重ねる毎に早まる。

「大和、自分の親がなんの仕事してるかも知らないの?」

 勇吾は鼻で笑っていた。少しカチンときた俺だったが、俺の小学校の成績を知っている彼には、本気でそう思えたのかもしれない。

「うん、知らね。興味ねえ」

 だから俺は嘘をつく。それ以上詮索されないのならば、見下されてその会話が終わるのならばそれでいい。

 俺が気付き始めてしまった両親の仕事なんか、誰にも言えない。
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