12 / 196
恋慕と成就
恋慕と成就8
しおりを挟む
「ここ、ここ」と俺が君を連れてきたのは、1本の木を囲う整備された茂みの中。
「ここぉ?」
首を傾げる君の前で俺がしゃがむと、君も真似するように座る。カチャカチャと、ふたりのランドセルに付けられていたキーホルダーは、少し揺れて止まった。
「ここなら、誰にも見つからないから」
しゃがみ込むことによって、回りの草々は俺等より上へ。『立入禁止』の看板も立っていたから、きっとここに入ってくる者はいないだろう。
突如として思い出したこの場所は、昔父親とかくれんぼをした時に、最後まで見つからなかった場所だ。立入禁止場所に立ち入った俺を叱らずに、彼は「さすが俺の子だ」と笑っていた。
「なんだか悪いことしてない?私達」
君は不安がった。俺は「大丈夫」と再び君の手をとった。
ただでさえ普段入らないこんな場所に連れて来られて、難色を示す芽衣。そんな彼女が、土に這う蟻にすら警戒をし眉を曲げるものだから、俺は思わず吹き出した。必死に笑いを堪える俺には、更に怪訝な顔が向けられた。
「なに。なんでうっちゃん笑ってるの」
「いや、ごめんなんでも、ないっ」
「笑ってるじゃん」
「ごめんごめんっ」
怒った顔も笑った顔も真顔も、全部全部こんなにも愛しかった。俺は大人になる半分の歳で、世界で1番慈しむ人を見つけてしまったよ。
「ここぉ?」
首を傾げる君の前で俺がしゃがむと、君も真似するように座る。カチャカチャと、ふたりのランドセルに付けられていたキーホルダーは、少し揺れて止まった。
「ここなら、誰にも見つからないから」
しゃがみ込むことによって、回りの草々は俺等より上へ。『立入禁止』の看板も立っていたから、きっとここに入ってくる者はいないだろう。
突如として思い出したこの場所は、昔父親とかくれんぼをした時に、最後まで見つからなかった場所だ。立入禁止場所に立ち入った俺を叱らずに、彼は「さすが俺の子だ」と笑っていた。
「なんだか悪いことしてない?私達」
君は不安がった。俺は「大丈夫」と再び君の手をとった。
ただでさえ普段入らないこんな場所に連れて来られて、難色を示す芽衣。そんな彼女が、土に這う蟻にすら警戒をし眉を曲げるものだから、俺は思わず吹き出した。必死に笑いを堪える俺には、更に怪訝な顔が向けられた。
「なに。なんでうっちゃん笑ってるの」
「いや、ごめんなんでも、ないっ」
「笑ってるじゃん」
「ごめんごめんっ」
怒った顔も笑った顔も真顔も、全部全部こんなにも愛しかった。俺は大人になる半分の歳で、世界で1番慈しむ人を見つけてしまったよ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる