82 / 144
あり得ない今と、あり得ない未来と
6
しおりを挟む
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
「なんだよ君ら。超いいやつじゃんか」
救急箱を手に、橋の下を訪れたわたしたちを見るやいなや、テメさんはじーんと感動していた。
「こんな俺の怪我、心配してくれてたなんて。おじさん感激で泣いちゃうよ」
そう言って、えーんと泣き真似をするテメさんに、わたしもユーイチもくすくす笑った。
顔の腫れはひき、半袖から覗く腕の傷がよくなっていることにほっとした。どうやら救急箱の出番はなかったらしい。
朝早くにもかかわらず、テメさんは元気で、そして優しい。本当なら、六時をちょっと過ぎたこんな時間帯での訪問、鬱陶しく思われても仕方ないのに。
「どこがおじさんなんすか。テメさんはまだ、二十代くらいに見えますけど?」
半笑いで、「なあ?」とわたしに同調を求めてくるユーイチには、「今年で二十七らしいよ」と以前得たテメさんの情報を教える。「若っ」と目を丸くさせたユーイチがひとこと吐くと、テメさんは嬉しそうにウクレレの弦を撫でていた。
「君、名前なんだっけ」
「裕一っす」
「裕一くんか。裕一くんは、この前もおだんごちゃんと一緒にここへ来てたけど、彼女と付き合ってるの?」
「え!」
ポロンポロンとウクレレを奏でながら、歌うように聞くテメさんの前、ユーイチの顔が真っ赤に染まった。
東の空からさす太陽の光が、それを爛々と照らすから、一層と赤く見えた。
「な、なに言ってんすかテメさん!わ、和子と俺が、つ、付き合ってるわけないじゃないっすか!」
「ははーん。でも裕一くんのほうは、彼女を好いてるってわけか」
「ち、ちがいます!」
「あははっ。バレバレだって」
「なんだよ君ら。超いいやつじゃんか」
救急箱を手に、橋の下を訪れたわたしたちを見るやいなや、テメさんはじーんと感動していた。
「こんな俺の怪我、心配してくれてたなんて。おじさん感激で泣いちゃうよ」
そう言って、えーんと泣き真似をするテメさんに、わたしもユーイチもくすくす笑った。
顔の腫れはひき、半袖から覗く腕の傷がよくなっていることにほっとした。どうやら救急箱の出番はなかったらしい。
朝早くにもかかわらず、テメさんは元気で、そして優しい。本当なら、六時をちょっと過ぎたこんな時間帯での訪問、鬱陶しく思われても仕方ないのに。
「どこがおじさんなんすか。テメさんはまだ、二十代くらいに見えますけど?」
半笑いで、「なあ?」とわたしに同調を求めてくるユーイチには、「今年で二十七らしいよ」と以前得たテメさんの情報を教える。「若っ」と目を丸くさせたユーイチがひとこと吐くと、テメさんは嬉しそうにウクレレの弦を撫でていた。
「君、名前なんだっけ」
「裕一っす」
「裕一くんか。裕一くんは、この前もおだんごちゃんと一緒にここへ来てたけど、彼女と付き合ってるの?」
「え!」
ポロンポロンとウクレレを奏でながら、歌うように聞くテメさんの前、ユーイチの顔が真っ赤に染まった。
東の空からさす太陽の光が、それを爛々と照らすから、一層と赤く見えた。
「な、なに言ってんすかテメさん!わ、和子と俺が、つ、付き合ってるわけないじゃないっすか!」
「ははーん。でも裕一くんのほうは、彼女を好いてるってわけか」
「ち、ちがいます!」
「あははっ。バレバレだって」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
乙男女じぇねれーしょん
ムラハチ
青春
見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。
小説家になろうは現在休止中。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。


自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる