僕らの10パーセントは無限大

華子

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傘不要の降水確率と、チャップリンの名言と

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 ふと、そんなことを思い、ユーイチに送った熱視線。
 しかし彼の視線はいつの間にやらわたしではなく、窓の外へと向けられていたから、わたしもその視線を追うようにして空を見上げた。

 あ、飛行機だ。

 窓フレームに囲われた、四角い空。鮮やかなオレンジ色の、夕焼けの中。

 ピカ、ピカ、と自身の存在を示しながら、上へ上へと天高く上昇する旅客機が、右斜め下から左斜め上の方へと消えて行く。

 ピカ、ピカ、と光るそれが見えなくなってから、わたしもユーイチも、ゆっくりとその空から視線を外した。

 無表情のユーイチと、ばちっと目が合う。

 えーとえーっと。わたしなにか、ユーイチに聞きたいことがあったような……

 そう思ったけれど、それを思い出す前に彼から「和子の母さんに連絡入れた?」と聞かれてしまったので、思考はシフト。

 枕元に置いてあるスマホを手にとったわたしは、お母さんにメッセージを作成する。

『さっきはいきなり飛び出しちゃってごめんね。今、ユーイチの家にお邪魔してる。夕ご飯は、あとで家に帰ったら食べるから』

 作成し終わった文面の下、タンッと画面をタップし送信して、枕元へとそのスマホを戻した。

 次の瞬間。
 再びユーイチと目が合うと、なぜだか笑われた。

「ははっ。超崩れてんじゃん、入道雲」

 ユーイチの言う入道雲とは、わたしのおだんごヘアのことで間違いなし。

 頭の上に手を運ぶと、そこには原型を留めていないつぶれだんごが乗っかっていた。

「ほんとだあ、くっしゃくしゃ」
「あはははっ。それじゃあ入道雲じゃなくて、綿雲じゃん」
「綿雲?」
「ふわふわした、綿菓子みたいな雲のことだよ」
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