海神アオハル

華子

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すれ違うふたり

すれ違うふたり05

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 やるせない気分のまま家でだらだらと過ごしていても、昼を過ぎればテレビは特番ばかりだし、ネットの中はトップアイドルとプロ野球選手の『電撃クリスマス婚』で盛り上がっていて、もっと俺を甚振いたぶってくる。

「うしっ!気分転換でもしよっとっ!」

 だから俺は電車に乗った。行き先はどこでもよかった。下車する乗客が取り分け少なかった駅で、半分閉まりかけた扉から飛び降りた。
 閑静な住宅街ばかりが連なるこの街は、今日がクリスマスだということを忘れさせてくれた。

 コーヒーでも飲むかと思い、入ったコンビニで、たまたま目についてしまった真白な飲み物。

「杏仁豆腐ジュース……」

 俺からすればミステリアスでしかないそんなドリンクも、美咲とならば同じ気持ちで楽しめるのだろう。

 パンコーナー、見えたドーナツ。

「指輪、まじであげんのかな……」

 こんなものでもいちいち心がからびるのならば、コンビニと俺は、暫く距離を置いた方がいいと思う。

 店内をくまなく徘徊したくせに、結局購入したのはレジ横のカップコーヒー一杯だけ。コンビニに然り廊下に然り、ちょこちょことねずみのように駆けるから痛い目を見るのだと、執拗に自分へ言い聞かせた。

 そしてそれは、用もないのに電車へ乗り、見知らぬ街で下車した自分にも言えることだった。

「よう。あやとり坊主じゃねえか」

 誰もいない静かな小道でぼんやりしていると、突如目の前に現れた電球がピカンと輝いた。
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