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すれ違うふたり
すれ違うふたり03
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海との関係を友達に言いたい。外でキスがしたい。口がだめなら頬でいい、頬がだめなら手でもいい。そんな願いは全部全部、海が断ってきた。
「おかしいだろ……」
そんなお前がどうして、偽物の恋人である美咲の願いをすんなり叶えてあげちゃうの?
嫌でも思い起こされてしまう、あの記憶。
もう俺、お前と今まで通りできねえわ。だってお前、変だもん。
中一のバレンタイン。心を込めて作ったチョコレート、勇気を出して告げた愛。
甘酸っぱい思い出どころか、ほろ苦い思い出も飛び越えて、この日の記憶は毒しか発さない。毒素たっぷり含んだそれは、未だに俺の身体で充満していて、もう排出されただろうかと思えば時折俺に支障をきたす。海への恋心に気付いた時、その気持ちに蓋をしようと決めたのもこれが原因だ。
だって俺は変だから。男が男を好きになるなんて、変だから。
「帰る」
まだ八割は残っている牛丼を前に席を立つ俺を、海は俺より分厚い胸板で止めた。
「ごめんって、神っ」
歯を食い縛る。手の平に、己の爪が突き刺さる。
「でもっ、俺の親に紹介するまでは、ぜってえ美咲のこと繋いでおかないとだめじゃんっ。だからしょうがなくっ」
「しょうがなくでも、俺にはキスできねえだろ」
こんなことを言ってしまえば立ち直れなくなるって、自分でもわかっているのに。
「男の俺とは、しょうがなかろうがなんだろうが、人前でキスなんかできねえんだろ!?」
こんなの、自分で自分を谷底に落とすだけなのだと、知っているのに。
「だって俺は変だからなあ!お前みたいに理性ねえんだよ!道理とか世間体とか気にせず、ただお前とキスしてえんだよ!だってこれが俺なんだよ自分なんだよ!生まれた時からそうなんだよ!」
少数派。どうしてこの類に入ってしまっただけで、こんなにもたくさんの困難があるのだろう。どうしてそれが普通なのだと、言ってもらえないのだろう。
奇抜な絵を描く画家は個性的だと讃えられ、世界に一握りしかいない億万長者は成功者だと拍手を貰えるのに。
どうして俺は、どうして俺は。
「もう海なんか知らねえっ……クリスマスも一日中、美咲と過ごしてろっ……」
どうして俺は、こんなにも身近にいる人間からさえ、拒否されてしまうの?
「おかしいだろ……」
そんなお前がどうして、偽物の恋人である美咲の願いをすんなり叶えてあげちゃうの?
嫌でも思い起こされてしまう、あの記憶。
もう俺、お前と今まで通りできねえわ。だってお前、変だもん。
中一のバレンタイン。心を込めて作ったチョコレート、勇気を出して告げた愛。
甘酸っぱい思い出どころか、ほろ苦い思い出も飛び越えて、この日の記憶は毒しか発さない。毒素たっぷり含んだそれは、未だに俺の身体で充満していて、もう排出されただろうかと思えば時折俺に支障をきたす。海への恋心に気付いた時、その気持ちに蓋をしようと決めたのもこれが原因だ。
だって俺は変だから。男が男を好きになるなんて、変だから。
「帰る」
まだ八割は残っている牛丼を前に席を立つ俺を、海は俺より分厚い胸板で止めた。
「ごめんって、神っ」
歯を食い縛る。手の平に、己の爪が突き刺さる。
「でもっ、俺の親に紹介するまでは、ぜってえ美咲のこと繋いでおかないとだめじゃんっ。だからしょうがなくっ」
「しょうがなくでも、俺にはキスできねえだろ」
こんなことを言ってしまえば立ち直れなくなるって、自分でもわかっているのに。
「男の俺とは、しょうがなかろうがなんだろうが、人前でキスなんかできねえんだろ!?」
こんなの、自分で自分を谷底に落とすだけなのだと、知っているのに。
「だって俺は変だからなあ!お前みたいに理性ねえんだよ!道理とか世間体とか気にせず、ただお前とキスしてえんだよ!だってこれが俺なんだよ自分なんだよ!生まれた時からそうなんだよ!」
少数派。どうしてこの類に入ってしまっただけで、こんなにもたくさんの困難があるのだろう。どうしてそれが普通なのだと、言ってもらえないのだろう。
奇抜な絵を描く画家は個性的だと讃えられ、世界に一握りしかいない億万長者は成功者だと拍手を貰えるのに。
どうして俺は、どうして俺は。
「もう海なんか知らねえっ……クリスマスも一日中、美咲と過ごしてろっ……」
どうして俺は、こんなにも身近にいる人間からさえ、拒否されてしまうの?
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