7 / 76
海神コンビ結成
海神コンビ結成07
しおりを挟む
喧嘩をするにあたって最も重要なのは、最初の一発だ。これが心底痛かったら相手は怯むし、逆にへなちょこだとナメられる。躱されたり拳ごと捕まった場合は、次の一手の動作へ移るよりも先に攻撃を受けてしまう可能性がある上、それで眩暈でも起こしてしまえばもう、その間本気は出せない。だから初めの一撃はすごく肝心だ。
普段の俺は、相手の鳩尾にメリケンを放つのが定番スタイル。けれど濱口とは二回目の対戦だ。この手は封じることにしよう。というかそもそも今日の俺は、187センチの肩に乗っかっているせいでビッグマンになりすぎているから、相手の鳩尾なぞ遠くて届く場所にない。それに加えて今気が付いたことだが、濱口の胸ぐらも俺の腕では掴める距離になければ、この体勢では足も上手く振りかぶれない。
ここで「ああ、やっちまった」などと思うのであれば、それは素人だ。何故ならすぐそこには、己の手刀がある。
「ジンジンじわじわチョーップ!!」
うねうねした濱口の髪の毛をむんずと掴み引き寄せると、俺は彼のてっぺんに向かって何度も何度もその刀を振り下ろした。
「ジンじわチョーップ!ジンじわチョーップ!」
ついでに髪の毛も幾らか引き抜いて円くハゲでも作ってやろうかと思ったけれど、彼のブレイズヘアは剛毛でしっかりしている。これは無理だと諦めた。
「カスてめえ!ふっざけ!」
俺を丸ごと落下させようと、濱口の両手は俺の手首を掴みにかかった。途端に開いた、彼の大きな上半身。
「今だ、退けっ」
その合図で動くは海。俺の股から後ろへ勢いよく首を抜いた彼は、俺のふたつの靴底をチアリーダーのように上へとダイナミックタップ。焦った濱口が一文字叫ぶ。
「な!」
この所作に慌てた彼は、俺の手首へ向かわせていた図太い腕をそのまま盾にしようと試みた様子だった。が、もう遅い。俺はすでに、右足を思い切り振りかぶっている。
「ポッセイ──」
後は、濱口の顔面目掛けて発射するだけ。
「ドォォオオン!!」
確かな手応えだか足応えと共に、彼は背から落ちていく。ドサンと舞う砂埃、グホッと吐かれる真紅の液体。スチャッと最後に聞こえた気持ちの良い音は、着地に成功した俺の足元から。
いつの間にやら集まっていた野次馬の溜め息には、悲嘆と感嘆の両方が入り混じっていた。
意識定かではない濱口を150センチの高さから見下ろして、俺は最後にこう言った。
「さっきも言ったが、あいつが名村海で、俺は青井神人だっ。べつに覚えとかなくてもいいけど、この界隈でしゃしゃりてえなら一応覚えとけっ。テストに出んぞっ」
返事は出来ないのかしないのか。三秒間待ったけれど無反応だったから、俺は海と目配せをしてその場を去った。
普段の俺は、相手の鳩尾にメリケンを放つのが定番スタイル。けれど濱口とは二回目の対戦だ。この手は封じることにしよう。というかそもそも今日の俺は、187センチの肩に乗っかっているせいでビッグマンになりすぎているから、相手の鳩尾なぞ遠くて届く場所にない。それに加えて今気が付いたことだが、濱口の胸ぐらも俺の腕では掴める距離になければ、この体勢では足も上手く振りかぶれない。
ここで「ああ、やっちまった」などと思うのであれば、それは素人だ。何故ならすぐそこには、己の手刀がある。
「ジンジンじわじわチョーップ!!」
うねうねした濱口の髪の毛をむんずと掴み引き寄せると、俺は彼のてっぺんに向かって何度も何度もその刀を振り下ろした。
「ジンじわチョーップ!ジンじわチョーップ!」
ついでに髪の毛も幾らか引き抜いて円くハゲでも作ってやろうかと思ったけれど、彼のブレイズヘアは剛毛でしっかりしている。これは無理だと諦めた。
「カスてめえ!ふっざけ!」
俺を丸ごと落下させようと、濱口の両手は俺の手首を掴みにかかった。途端に開いた、彼の大きな上半身。
「今だ、退けっ」
その合図で動くは海。俺の股から後ろへ勢いよく首を抜いた彼は、俺のふたつの靴底をチアリーダーのように上へとダイナミックタップ。焦った濱口が一文字叫ぶ。
「な!」
この所作に慌てた彼は、俺の手首へ向かわせていた図太い腕をそのまま盾にしようと試みた様子だった。が、もう遅い。俺はすでに、右足を思い切り振りかぶっている。
「ポッセイ──」
後は、濱口の顔面目掛けて発射するだけ。
「ドォォオオン!!」
確かな手応えだか足応えと共に、彼は背から落ちていく。ドサンと舞う砂埃、グホッと吐かれる真紅の液体。スチャッと最後に聞こえた気持ちの良い音は、着地に成功した俺の足元から。
いつの間にやら集まっていた野次馬の溜め息には、悲嘆と感嘆の両方が入り混じっていた。
意識定かではない濱口を150センチの高さから見下ろして、俺は最後にこう言った。
「さっきも言ったが、あいつが名村海で、俺は青井神人だっ。べつに覚えとかなくてもいいけど、この界隈でしゃしゃりてえなら一応覚えとけっ。テストに出んぞっ」
返事は出来ないのかしないのか。三秒間待ったけれど無反応だったから、俺は海と目配せをしてその場を去った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である


悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい
椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。
その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。
婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!!
婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。
攻めズ
ノーマルなクール王子
ドMぶりっ子
ドS従者
×
Sムーブに悩むツッコミぼっち受け
作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる