ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いまから未来へ5

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「ハルくん頑張れー!」

 バッターボックスに立てばいつだって、ナツの声が聞こえてくる。
 コンコンとバッドで砂を二度打ってからフォームをかまえ、ボールが投げられる前に一度、ベランダに目を向けて。

「ハルくんいっけー!」

 君からエールをもらうんだ。

 今日は引退がかかった大事なトーナメントの初戦。会場はうちの中学。運悪く、俺たちが今まで一度も勝てたことのないチームが相手だった。

 三点ビハインドで迎えた九回裏、最後の攻撃。

 俺の振ったバッドがボールを遠くへ放ると同時に、ベース上にいた三人の仲間たちが一気に走り出す。

「わあ、すっごーい!」

 一塁、二塁、三塁を踏んでいた仲間が三点を稼ぎ、そして最後に俺がホームベースへと帰ればもう一点。逆転勝利へと繋がる大事な場面。

 はあっ、はあっ……

 けど、ぶっちゃけきついかも。

 俺がそう思ったのは、がむしゃらに走る俺なんかよりももっと速いスピードでホームベースへ向かってくる、相手チームの豪速球。

 俺が先か、ボールが先か。誰がどう見たってボールだった。

 でもね。

「ハルくん頑張れっ!ハルくんなら間に合う!」

 君がそう応援してくれたから、俺は自分が持っている以上のパワーが引き出せたんだ。

 バンッ!

 キャッチャーミットにボールがおさまったその時、スライディングをしていた俺の指先がベースへ届く。
 アウトかセーフか、みんなが固唾を飲んで見守る中、審判がしたのはセーフのポーズ。

「よっしゃあああ!!」

 その瞬間に、校庭がわき上がる。仲間たちに駆け寄られた俺は、がしがしと頭をかき撫でられた。

「ハルすげえ!最後超しびれたわあ!」
「いてててて!いてえよ辻本!」
「絶対間に合わないと思ったのに!どこにそんな余力隠してた!」
「いてえって!」

 ナツはまるで、魔法使いみたいな人。ナツを想えば、俺は強くなれる。
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