ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いまから未来へ4

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 渡したいものがあるからと約束をしていた月曜日から、数週間後の月曜日、放課後のベランダ。そこへナツは、幽霊になってまで来てくれた。

 バッターボックスに立った俺がフォームをかまえた時、三年五組のベランダにナツの姿を発見したんだ。

 真剣な顔。校庭からだって、よく見えた。

 死んでしまったナツがこんなところにいるわけなんてない、でもまさかひょっとして。

 なんて思いながら勢いよくバッドを振った。

 カキーンといい音が鳴って飛んだボールがナツのいるベランダへと落ちた時、「ひゃっ!」と君は大声を出した。けれどその声に反応したのは俺だけで、他の部員たちは何も聞こえていないようだったから、ベランダにいる君の姿は他の誰にも見えないのだと感じたんだ。

 俺だけが見える、ナツ。

 ナツが星になったあとも、俺はそこに君を描く。
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