ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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いま68

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「な、なんで知ってるの!?わたし、隠れて応援してたのにっ」

 こそこそし続けた二年間は一体なんだったのか。それならもっと堂々と、校庭に降りて見学すればよかったと思った。
 涙目で、ハルくんは笑う。

「ははっ。あれで隠れてたつもり?五組のベランダなんて、バッターボックスから一番見えやすい位置にあるじゃん」
「そ、そうだけどでもっ」
「俺はいつも校庭から、ベランダにいるナツを見てたよ。バッターボックスに立った瞬間、真剣な表情で応援してくれるナツが見えれば力がわいた」

 わたしがハルくんを見ていたのと同じように、ハルくんもわたしを見てくれていた。照れくさいけれど嬉しい真実に、顔がふにゃけていく。

「それならそうと早く言ってよお。なんでこそこそ見るのっ」
「そんなの言えるわけないよっ、恥ずかしいじゃんっ」
「なんでぇ」
「だってそんなこと言ったら、俺がナツのことを──」

 そう言いかけて、ハルくんは急いで口をつぐむ。
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