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いま58
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最終日は、朝のさんかく公園で待ち合わせ。
チリン。そんな音が、ハルくんの手元で鳴る。
「乗ってよ、ナツ」
パンパンと自転車の荷台を叩いたハルくんに、そこへまたがるよう促されて、わたしはきょろきょろとあたりを見まわした。
「だ、大丈夫かな。ふたり乗りなんかして。おまわりさんに怒られない……?」
不安げにそう聞くと、ハルくんがぶっと吹き出していた。
「だからあ、これはナツだけの特権なんだから堂々としてなよ」
「で、でも」
「ほぉら、早くっ」
パンッともう一度大きく叩かれて、わたしはハルくんの後ろにしずしず座る。
「しっかり掴まっててね」
「え、どこに」
「俺の腰」
右手、左手。ハルくんが順番に運んだわたしの手は、彼の腰まわりにぴたりと密着。
「よし、じゃあ行くよーっ」
ハルくんがペダルを踏めば、自転車は夏の風を切っていく。
薄手のTシャツ越しに感じるハルくんの硬い腹筋に、わたしの鼓動も加速した。
チリン。そんな音が、ハルくんの手元で鳴る。
「乗ってよ、ナツ」
パンパンと自転車の荷台を叩いたハルくんに、そこへまたがるよう促されて、わたしはきょろきょろとあたりを見まわした。
「だ、大丈夫かな。ふたり乗りなんかして。おまわりさんに怒られない……?」
不安げにそう聞くと、ハルくんがぶっと吹き出していた。
「だからあ、これはナツだけの特権なんだから堂々としてなよ」
「で、でも」
「ほぉら、早くっ」
パンッともう一度大きく叩かれて、わたしはハルくんの後ろにしずしず座る。
「しっかり掴まっててね」
「え、どこに」
「俺の腰」
右手、左手。ハルくんが順番に運んだわたしの手は、彼の腰まわりにぴたりと密着。
「よし、じゃあ行くよーっ」
ハルくんがペダルを踏めば、自転車は夏の風を切っていく。
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