99 / 120
いま55
しおりを挟む
「見てこれ。ここにつけてみた」
ある日。そう言ってハルくんが見せてきたのは、学生鞄の持ち手にくくられた星形のキーホルダー。
「ナツの遺品だし、どうしたらいいのかわからなくてずっとしまってたんだけど、やっぱキーホルダーはキーホルダーらしく、責務を全うしないとなっ」
ハルくんを想い、一生懸命作ったそれとの久しぶりの再会に、わたしの気分は上がった。
「わあっ、なんか懐かしいっ」
手にとって見せてもらえば、最後に入れたハートのビーズが目に入り、恥ずかしくなった。
「このハートね、最後の最後まで入れようかどうしようか迷ったんだ」
てへへと頭をかきながらそう言うと、ハルくんの目が丸くなる。
「え、これナツの手作りなの?」
「うん、そうだよ。キーホルダー自体の形も選べるし、中に入れるパーツもたくさんある中から自分で選ぶの」
「まじで?超上手じゃんっ!てっきり店に売ってるやつだと思ってた」
すごいすごいと何度も口にしながら、まじまじとキーホルダーを見つめるハルくんの嬉しそうな顔は、こんなものでよかったのだろうかと思い詰めていた二ヶ月前の自分に見せてあげたいと思った。
「ハルくん、誕生日おめでとう」
急にそう言いたくなったのは、言えなかったから。
「そのキーホルダー、ただのお土産に見えるけど、実は誕生日プレゼントなの。直接渡したかったけど、渡せなくてごめんね」
悲しくなるのはまだ早い。だから泣きたくなんかない。
だけどふたりの間には、しんみりとした空気が漂った。
「ありがとう、ナツ。なんだかこのキーホルダー、俺とナツみたいだねっ」
そんな空気を打破してくれたのは、ぐいんと口角を上げたハルくん。この場がしんみりとした雰囲気にのまれないよう、努めてくれているのが伝わった。
「星好きのナツと、海好きな俺。ふたりがひとつになってるみたい」
その言葉で、ザザンと鼓動が波を打つ。
わたしが感じていたことと、全く同じことを感じてくれた愛しい人。大袈裟だけど、運命に思えた。
「ハルくん好き」
早口でそう言うと、ハルくんが「え」と固まっていた。
「ハルくん好き、大好き」
「ちょ、ちょっと待てナツ、不意打ちすぎるっ」
「ハルくんがすっごく好き!」
「うわ、だからずるいってばっ」
も~と抱きついてきたハルくんは、赤面した顔を隠すようにわたしのうなじに埋めていた。
くすぐったくて、ドキドキして、また「好き」と言ってしまうのはわたし。すぐそこで、ハルくんのもどかしさが伝わってくる。
「ああ~、俺もナツに言いたいのに……」
ある日。そう言ってハルくんが見せてきたのは、学生鞄の持ち手にくくられた星形のキーホルダー。
「ナツの遺品だし、どうしたらいいのかわからなくてずっとしまってたんだけど、やっぱキーホルダーはキーホルダーらしく、責務を全うしないとなっ」
ハルくんを想い、一生懸命作ったそれとの久しぶりの再会に、わたしの気分は上がった。
「わあっ、なんか懐かしいっ」
手にとって見せてもらえば、最後に入れたハートのビーズが目に入り、恥ずかしくなった。
「このハートね、最後の最後まで入れようかどうしようか迷ったんだ」
てへへと頭をかきながらそう言うと、ハルくんの目が丸くなる。
「え、これナツの手作りなの?」
「うん、そうだよ。キーホルダー自体の形も選べるし、中に入れるパーツもたくさんある中から自分で選ぶの」
「まじで?超上手じゃんっ!てっきり店に売ってるやつだと思ってた」
すごいすごいと何度も口にしながら、まじまじとキーホルダーを見つめるハルくんの嬉しそうな顔は、こんなものでよかったのだろうかと思い詰めていた二ヶ月前の自分に見せてあげたいと思った。
「ハルくん、誕生日おめでとう」
急にそう言いたくなったのは、言えなかったから。
「そのキーホルダー、ただのお土産に見えるけど、実は誕生日プレゼントなの。直接渡したかったけど、渡せなくてごめんね」
悲しくなるのはまだ早い。だから泣きたくなんかない。
だけどふたりの間には、しんみりとした空気が漂った。
「ありがとう、ナツ。なんだかこのキーホルダー、俺とナツみたいだねっ」
そんな空気を打破してくれたのは、ぐいんと口角を上げたハルくん。この場がしんみりとした雰囲気にのまれないよう、努めてくれているのが伝わった。
「星好きのナツと、海好きな俺。ふたりがひとつになってるみたい」
その言葉で、ザザンと鼓動が波を打つ。
わたしが感じていたことと、全く同じことを感じてくれた愛しい人。大袈裟だけど、運命に思えた。
「ハルくん好き」
早口でそう言うと、ハルくんが「え」と固まっていた。
「ハルくん好き、大好き」
「ちょ、ちょっと待てナツ、不意打ちすぎるっ」
「ハルくんがすっごく好き!」
「うわ、だからずるいってばっ」
も~と抱きついてきたハルくんは、赤面した顔を隠すようにわたしのうなじに埋めていた。
くすぐったくて、ドキドキして、また「好き」と言ってしまうのはわたし。すぐそこで、ハルくんのもどかしさが伝わってくる。
「ああ~、俺もナツに言いたいのに……」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。


王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

妹を溺愛したい旦那様は婚約者の私に出ていってほしそうなので、本当に出ていってあげます
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族令嬢であったアリアに幸せにすると声をかけ、婚約関係を結んだグレゴリー第一王子。しかしその後、グレゴリーはアリアの妹との関係を深めていく…。ある日、彼はアリアに出ていってほしいと独り言をつぶやいてしまう。それを耳にしたアリアは、その言葉の通りに家出することを決意するのだった…。

彼と婚約破棄しろと言われましても困ります。なぜなら、彼は婚約者ではありませんから
水上
恋愛
「私は彼のことを心から愛しているの! 彼と婚約破棄して!」
「……はい?」
子爵令嬢である私、カトリー・ロンズデールは困惑していた。
だって、私と彼は婚約なんてしていないのだから。
「エリオット様と別れろって言っているの!」
彼女は下品に怒鳴りながら、ポケットから出したものを私に投げてきた。
そのせいで、私は怪我をしてしまった。
いきなり彼と別れろと言われても、それは無理な相談である。
だって、彼は──。
そして勘違いした彼女は、自身を破滅へと導く、とんでもない騒動を起こすのだった……。
※この作品は、旧作を加筆、修正して再掲載したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる