95 / 120
いま51
しおりを挟む
ぐしゃっと歪んだハルくんの顔。そんな風に、自分を責めないでほしいと思った。
「違うよ、ハルくんのせいじゃないっ。わたしがわがままなのっ。未練を晴らしに幽霊になってるくせに、このままハルくんの側にいたいとか、でもやっぱり親にも会いたいとか思っちゃってる、わたしが勝手すぎるのっ」
まるで出口のないトンネルにでも迷いこんだ気分になった。ああでもないこうでもないと考えたって、答えなんか見つけられない。
話の途中、ハルくんがぱっとわたしの頬から手を離したのは、通りの向こうから歩いてきた人たちがいたから。
ふたりの小さな子供を連れた四人家族。彼らがわたしたちの真横を通り過ぎ、数メートル遠ざかるのを待ってから、ハルくんの口が再び開く。
「あと一ヶ月だけ、一緒に過ごせないかな……?」
一ヶ月。それはどこから出てきた数字なのかと思ったら。
「一ヶ月後の七夕は、ナツの誕生日でしょ?毎年その日は家族で祝ってるって前に教えてくれたよね。だから、七月六日の夜までには絶対に俺、その二文字を言うから。ちゃんと俺の気持ちをナツに伝えるから。どうかそれまで待ってほしい」
頭を下げたハルくんは、申し訳なさそうだった。お母さんたちにすぐ会わせてあげられなくてごめんねって、きっとそう思っている。
こういう彼の優しいところが、本当に好きなんだ。
「違うよ、ハルくんのせいじゃないっ。わたしがわがままなのっ。未練を晴らしに幽霊になってるくせに、このままハルくんの側にいたいとか、でもやっぱり親にも会いたいとか思っちゃってる、わたしが勝手すぎるのっ」
まるで出口のないトンネルにでも迷いこんだ気分になった。ああでもないこうでもないと考えたって、答えなんか見つけられない。
話の途中、ハルくんがぱっとわたしの頬から手を離したのは、通りの向こうから歩いてきた人たちがいたから。
ふたりの小さな子供を連れた四人家族。彼らがわたしたちの真横を通り過ぎ、数メートル遠ざかるのを待ってから、ハルくんの口が再び開く。
「あと一ヶ月だけ、一緒に過ごせないかな……?」
一ヶ月。それはどこから出てきた数字なのかと思ったら。
「一ヶ月後の七夕は、ナツの誕生日でしょ?毎年その日は家族で祝ってるって前に教えてくれたよね。だから、七月六日の夜までには絶対に俺、その二文字を言うから。ちゃんと俺の気持ちをナツに伝えるから。どうかそれまで待ってほしい」
頭を下げたハルくんは、申し訳なさそうだった。お母さんたちにすぐ会わせてあげられなくてごめんねって、きっとそう思っている。
こういう彼の優しいところが、本当に好きなんだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】少年の懺悔、少女の願い
干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。
そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい――
なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。
後悔しても、もう遅いのだ。
※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。
※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

【完結】愛とは呼ばせない
野村にれ
恋愛
リール王太子殿下とサリー・ペルガメント侯爵令嬢は六歳の時からの婚約者である。
二人はお互いを励まし、未来に向かっていた。
しかし、王太子殿下は最近ある子爵令嬢に御執心で、サリーを蔑ろにしていた。
サリーは幾度となく、王太子殿下に問うも、答えは得られなかった。
二人は身分差はあるものの、子爵令嬢は男装をしても似合いそうな顔立ちで、長身で美しく、
まるで対の様だと言われるようになっていた。二人を見つめるファンもいるほどである。
サリーは婚約解消なのだろうと受け止め、承知するつもりであった。
しかし、そうはならなかった。

交錯する群像劇
妖狐🦊🐯
BL
今宵もどこかのお屋敷では人と人による駆け引きが行われている
無垢と無知の織りなす非情な企み
女同士の見えない主従関係
男同士の禁断の関係
解決してはまた現れて
伸びすぎたそれぞれの糸はやがて複雑に絡み合い
引き合っては千切れ、時には強く結ばれた関係となる
そんな数々のキャラクターから織りなす群像劇を
とくとご覧あれ
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる