ハルのてのひら、ナツのそら。

華子

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 ぐしゃっと歪んだハルくんの顔。そんな風に、自分を責めないでほしいと思った。

「違うよ、ハルくんのせいじゃないっ。わたしがわがままなのっ。未練を晴らしに幽霊になってるくせに、このままハルくんの側にいたいとか、でもやっぱり親にも会いたいとか思っちゃってる、わたしが勝手すぎるのっ」

 まるで出口のないトンネルにでも迷いこんだ気分になった。ああでもないこうでもないと考えたって、答えなんか見つけられない。

 話の途中、ハルくんがぱっとわたしの頬から手を離したのは、通りの向こうから歩いてきた人たちがいたから。
 ふたりの小さな子供を連れた四人家族。彼らがわたしたちの真横を通り過ぎ、数メートル遠ざかるのを待ってから、ハルくんの口が再びひらく。

「あと一ヶ月だけ、一緒に過ごせないかな……?」

 一ヶ月。それはどこから出てきた数字なのかと思ったら。

「一ヶ月後の七夕は、ナツの誕生日でしょ?毎年その日は家族で祝ってるって前に教えてくれたよね。だから、七月六日の夜までには絶対に俺、その二文字を言うから。ちゃんと俺の気持ちをナツに伝えるから。どうかそれまで待ってほしい」

 頭を下げたハルくんは、申し訳なさそうだった。お母さんたちにすぐ会わせてあげられなくてごめんねって、きっとそう思っている。
 こういう彼の優しいところが、本当に好きなんだ。
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