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中学三年生、春の頃7
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「これでよかったのかなあ……」
翌日、自宅へ向かう高速道路。後部座席でひとり、思い詰める。
「中学三年生の男子にあげる誕生日プレゼントがただのキーホルダーだなんて……これじゃあただのお土産に見えちゃう……?」
一心不乱にカスタマイズした星形のキーホルダーをくるくるまわして見直して、もれていくのは溜め息ばかり。
「でももう、違ったものを買いには戻れないし……」
前方の運転席と助手席に座る両親にバレぬよう、カサッと静かに手紙を開いた。
『ハルくん。わたしはハルくんが好きです。ハルくんはわたしをどう思っていますか』
一晩中考えたにもかかわらず、どうにもまとまらなかった愛の告白文。
「なんか、始まりと終わりが同じ文になっちゃったなあ」
誤字や脱字がないかを確認してはまた畳み、キーホルダーのラッピング袋へ戻す作業はとめどなく、何十回だって繰り返された。
「はあっ。もうっ」
わたしがイライラし始めたのは、そんなネガティブな自分にもそうだけれど、のろのろ進んではすぐ止まる車中の退屈さ。
「まだ着かないの?」
「まだまだけっこうかかりそうねえ」
「えー。明日から学校なのに」
「いつもはこんなに混まないのにねえ。今日にかぎって事故かしら」
そんな会話を助手席のお母さんとして、シートの背もたれにバンッと思いきり背を放る。
フロントガラスやサイドミラーを覗けば、どちらも赤いランプがたくさん見えた。
翌日、自宅へ向かう高速道路。後部座席でひとり、思い詰める。
「中学三年生の男子にあげる誕生日プレゼントがただのキーホルダーだなんて……これじゃあただのお土産に見えちゃう……?」
一心不乱にカスタマイズした星形のキーホルダーをくるくるまわして見直して、もれていくのは溜め息ばかり。
「でももう、違ったものを買いには戻れないし……」
前方の運転席と助手席に座る両親にバレぬよう、カサッと静かに手紙を開いた。
『ハルくん。わたしはハルくんが好きです。ハルくんはわたしをどう思っていますか』
一晩中考えたにもかかわらず、どうにもまとまらなかった愛の告白文。
「なんか、始まりと終わりが同じ文になっちゃったなあ」
誤字や脱字がないかを確認してはまた畳み、キーホルダーのラッピング袋へ戻す作業はとめどなく、何十回だって繰り返された。
「はあっ。もうっ」
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