79 / 120
いま43
しおりを挟む
「ちょ、ナツ!」
階段の踊り場まで駆け上がり、そこでその封筒を開く。中には封筒と同じ色をした便せんが一枚。春に咲く、桜が描かれているもの。
「返して!」
わたしがそれを読もうとすると、必死なハルくんに掴まれた両手首。
「まじでそれ、だめだから返してっ」
人の手紙を盗んで見るならばハルくんが正しいと思うけれど、今回は違う。
なぜならこの手紙は、わたしがハルくんを想って書いたものだから。
「ど、どうしてハルくんがこれを持ってるの!?」
書いたけど、渡していない。だからそう聞いた。
「わたし、ハルくんにこの手紙あげてないっ!」
内容は、確認しなくても覚えている。この手紙を書いている時の、あのふわふわした感覚も。
強い瞳でハルくんを見ると、手首にかけられていたハルくんの圧力が弱まった。
「ど、どうしてって、キーホルダーと一緒に入ってたから……」
「キーホルダー?キーホルダーって星形の?」
「そ、そう」
「そんなのおかしいよっ。それだってわたしまだ、ハルくんにあげてないもんっ。一体誰からもらったの?」
今から二ヶ月前の四月、千葉で選んだハルくんへのプレゼントと、そこに添えた手紙。絶対に渡そうと心に決めていたけれど、わたしにはそれができなかった。
ビーチ沿いの雑貨屋さん。『世界でひとつだけのオリジナルキーホルダー』と書かれた吊り看板の下、あんなに一生懸命作ったのに。
ゆるまったハルくんの手からすり抜けた手で、今度はわたしが彼の手をとった。
「ねえハルくん答えて。どうしてわたしが渡していないものを、ハルくんが持っているのか」
階段の踊り場まで駆け上がり、そこでその封筒を開く。中には封筒と同じ色をした便せんが一枚。春に咲く、桜が描かれているもの。
「返して!」
わたしがそれを読もうとすると、必死なハルくんに掴まれた両手首。
「まじでそれ、だめだから返してっ」
人の手紙を盗んで見るならばハルくんが正しいと思うけれど、今回は違う。
なぜならこの手紙は、わたしがハルくんを想って書いたものだから。
「ど、どうしてハルくんがこれを持ってるの!?」
書いたけど、渡していない。だからそう聞いた。
「わたし、ハルくんにこの手紙あげてないっ!」
内容は、確認しなくても覚えている。この手紙を書いている時の、あのふわふわした感覚も。
強い瞳でハルくんを見ると、手首にかけられていたハルくんの圧力が弱まった。
「ど、どうしてって、キーホルダーと一緒に入ってたから……」
「キーホルダー?キーホルダーって星形の?」
「そ、そう」
「そんなのおかしいよっ。それだってわたしまだ、ハルくんにあげてないもんっ。一体誰からもらったの?」
今から二ヶ月前の四月、千葉で選んだハルくんへのプレゼントと、そこに添えた手紙。絶対に渡そうと心に決めていたけれど、わたしにはそれができなかった。
ビーチ沿いの雑貨屋さん。『世界でひとつだけのオリジナルキーホルダー』と書かれた吊り看板の下、あんなに一生懸命作ったのに。
ゆるまったハルくんの手からすり抜けた手で、今度はわたしが彼の手をとった。
「ねえハルくん答えて。どうしてわたしが渡していないものを、ハルくんが持っているのか」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
そんなに嫌いなら、私は消えることを選びます。
秋月一花
恋愛
「お前はいつものろまで、クズで、私の引き立て役なのよ、お姉様」
私を蔑む視線を向けて、双子の妹がそう言った。
「本当、お前と違ってジュリーは賢くて、裁縫も刺繍も天才的だよ」
愛しそうな表情を浮かべて、妹を抱きしめるお父様。
「――あなたは、この家に要らないのよ」
扇子で私の頬を叩くお母様。
……そんなに私のことが嫌いなら、消えることを選びます。
消えた先で、私は『愛』を知ることが出来た。
空に想いを乗せて
美和優希
恋愛
過去の出来事から真面目に生きている岸本花梨は、ひょんなことからクラスの人気者の柳澤奏真の秘密を知ってしまう。
秘密を共有したことから距離が縮まり、やがて二人は付き合い始める。
しかし酷く悲しい現実が、二人の前に立ちはだかり──。
初回公開・完結*2016.03.18(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2019.11.07
加筆修正*2019.12.12
*表紙イラストは、ななぎ様に描いていただいたイラストに背景、文字入れをして使わせていただいてます。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

影の王宮
朱里 麗華(reika2854)
恋愛
王立学園の卒業式で公爵令嬢のシェリルは、王太子であり婚約者であるギデオンに婚約破棄を言い渡される。
ギデオンには学園で知り合った恋人の男爵令嬢ミーシャがいるのだ。
幼い頃からギデオンを想っていたシェリルだったが、ギデオンの覚悟を知って身を引こうと考える。
両親の愛情を受けられずに育ったギデオンは、人一倍愛情を求めているのだ。
だけどミーシャはシェリルが思っていたような人物ではないようで……。
タグにも入れましたが、主人公カップル(本当に主人公かも怪しい)は元サヤです。
すっごく暗い話になりそうなので、プロローグに救いを入れました。
一章からの話でなぜそうなったのか過程を書いていきます。
メインになるのは親世代かと。
※子どもに関するセンシティブな内容が含まれます。
苦手な方はご自衛ください。
※タイトルが途中で変わる可能性があります<(_ _)>

交錯する群像劇
妖狐🦊🐯
BL
今宵もどこかのお屋敷では人と人による駆け引きが行われている
無垢と無知の織りなす非情な企み
女同士の見えない主従関係
男同士の禁断の関係
解決してはまた現れて
伸びすぎたそれぞれの糸はやがて複雑に絡み合い
引き合っては千切れ、時には強く結ばれた関係となる
そんな数々のキャラクターから織りなす群像劇を
とくとご覧あれ

子供の言い分 大人の領分
ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。
「はーい、全員揃ってるかなー」
王道婚約破棄VSダウナー系教師。
いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる